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弓の良い素材について | ヴァイオリン掲示板

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楽器・付属品 91 Comments
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弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月10日 19:56
投稿者:catgut(ID:EnASmVI)
一般に弓の材料としてフェルナンブコ(ブラジルボク)が優れているとされて
いますが、フェルナンブコの実態はあまり知られていません。また、トゥルテの時代のフェルナンブコのほうが20世紀のフェルナンブコより良質だったのではないかという説があるようです。このあたりについて検証してみたいと思います。
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Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月10日 20:03
投稿者:catgut(ID:EnASmVI)
フェルナンブコが激減したのは、19世紀や20世紀のことではなく、染料として大量に伐採された18世紀までのことだそうです。つまりトゥルテがフェルナンブコで弓を製作を始めた頃には、すでにフェルナンブコは「希少」となっていたわけです。

ttp://www.giannaviolins.com/bow/Brazil/pernambuco.html
Excessive harvesting destroying perhaps 50 million trees during the
16th and 17th centuries depleted the supply, leading to a collapse of
the industry in the 18th century.

トゥルテの時代には染料用として適当に細く切られて輸送されたフェルナンブコから弓に適した部分を探して使用しており、良い部分を確保するのは困難だったそうです(Fetisによる)。

20世紀末にはブラジル政府が国内的に伐採の規制を行い、ブラジルの大手弓メーカーはフェルナンブコの自家栽培が必要になったようで、大手の
弓メーカー(ARCOS,HORST JOHN,Marco Raposo,Water Violetなど)は
すべて広大なフェルナンブコの植林場を所有しています。
[42404]

Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月10日 20:26
投稿者:catgut(ID:EnASmVI)
ARCOSの創立者であるFloriano SchaefferとCelso de Melloへのインタビュー記事がありました。面白いことに、ARCOSでは栽培したフェルナンブコの最良の部分を海外の弓製作者に売り、残りの木で低価格な弓を製作しているということです。
(Schaeffer sells his best wood to bowmakers abroad, and makes lower
cost bows with the rest. )

最近のフランスやドイツの弓は「養殖フェルナンブコ」も使っているのかもしれません。

ttp://www.loe.org/shows/shows.htm?programID=03-P13-00021

また、平地での栽培よりも「森」での栽培のほうが有利(森のほうが木が
真っ直ぐ上に伸びやすいなど)なので、ARCOSでは森に植林しているということです。トゥルテの時代にはまだそれほど「森」の開発が進んでおらず、比較的伐採しやすい平地に近い場所でフェルナンブコを採取していたのではないでしょうか。

20世紀末になってフェルナンブコの枯渇が深刻になってきたのは事実だ
と思いますが、トゥルテの時代と20世紀中旬頃までを比較した場合、20
世紀中旬に弓用を主眼として伐採されたフェルナンブコのほうが質が悪いというのはありそうもないことです。

19世紀の弓と20世紀の弓に全般的な違いがあるとすれば以下の2点でしょう。
・経年変化の影響
・スティックの重量の違い

私は経年変化の影響はあったとしても少ないと思います。スティックの重要の違いの影響が大きいのではないでしょうか。
19世紀の軽い弓にカーボンを使って似せたのがARCUS、フェルナンブコを使って再現を試みたのが杉藤のセンシティブシリーズではないかと思います。
[42405]

Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月10日 20:58
投稿者:南社(ID:KGQ2lSM)
catgutさん
アフリカンブラックウッド ってどうなんですか?
某ネットショップに以下のように紹介されていますが...
----------------------
アフリカンブラックウッドは腰が強く優れた操作性と音を引き出す性能が良くペルナンブーコには無い特徴を持っています。***工房が弓に適する材料として開発し販売しており他ではお求めになれません。弓の吸い付きが大変良くクリアで粒立ちの良い音質で、1000万円の弓より良いと絶賛のプロの方もいらっしゃいます。
[42406]

Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月10日 22:48
投稿者:通りすがり(ID:FINJlSk)
>20世紀中旬に弓用を主眼として伐採されたフェルナンブコのほうが質が悪いというのはありそうもないことです。

⇒ここ、重要。真偽の吟味必要です。

>19世紀の弓と20世紀の弓に全般的な違いがあるとすれば以下の2点でしょう。
・経年変化の影響
・スティックの重量の違い

>私は経年変化の影響はあったとしても少ないと思います。スティックの重要の違いの影響が大きいのではないでしょうか。
19世紀の軽い弓にカーボンを使って似せたのがARCUS、フェルナンブコを使って再現を試みたのが杉藤のセンシティブシリーズではないかと思います。

⇒重要なポイントです。トルテと同等の弓は作成可能とお考えなのですね。
[42407]

Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月11日 01:02
投稿者:catgut(ID:EnASmVI)
南社さま、
フェルナンブコの代替植物というのはそれ自体極めて面白いテーマで、
トゥルテが知らなかったであろう植物が現在は多数知られているのですから、フェルナンブコに匹敵する弓の素材となる木は存在すると思います。
フェルナンブコの代替になりうる植物の物理的性質を調査した研究もあります。

ただ、マーケティング的にフェルナンブコ以外の木で弓を作っても高く売れないので、現状モダン弓としては低価格な弓でのみ使われていると思います。

私が見かけたものではIPEという公園のデッキなどでも使われる木を使った弓があります。
ttp://www.jonpaulstrings.com/Performing.aspx#jpheader

また杉藤楽弓社ではエントリー弓の材質がマサランデュバであることを公表しています。
ttp://www.sugito-bow.co.jp/bow_knowledge.htm

アフリカンブラックウッドは、木管楽器でグラナディラとして知られる木と同一のようです。私は使ったことはありませんが、フェルナンブコの代替になる可能性は十分ありそうです。ただ、材質だけが良くても良い弓とは限らないですね。私は同じグレードのカーボン弓でさえ個体差があるように、微妙な差が音色に大きく影響すると思います。

通りすがりさま、以前紹介したサントリーコレクションの3本のF.Tourteのヴァイオリン弓でさえも、1本は「スティックのスプリングはやや弱めで、良くしなり、材質は柔らかい。この弓の場合、現代のホールでの演奏を実現させるのは難しい」、別の1本は「音量が小さい」と評価されています。経年変化もあるのかもしれませんが、Tourteが素晴らしい木ばかりを使えたわけではないでしょう。

ttp://www.daion.ac.jp/museum/kankohbutsu/pdf/23/doc002.pdf
[42408]

Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月11日 08:43
投稿者:通りすがり(ID:FINJlSk)
>Tourteが素晴らしい木ばかりを使えたわけではないでしょう。

だれがトルテの駄作の話をしましたか。
議論の骨子を曲げないように。

[42407]
[42407]

Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月11日 01:02
投稿者:catgut(ID:EnASmVI)
南社さま、
フェルナンブコの代替植物というのはそれ自体極めて面白いテーマで、
トゥルテが知らなかったであろう植物が現在は多数知られているのですから、フェルナンブコに匹敵する弓の素材となる木は存在すると思います。
フェルナンブコの代替になりうる植物の物理的性質を調査した研究もあります。

ただ、マーケティング的にフェルナンブコ以外の木で弓を作っても高く売れないので、現状モダン弓としては低価格な弓でのみ使われていると思います。

私が見かけたものではIPEという公園のデッキなどでも使われる木を使った弓があります。
ttp://www.jonpaulstrings.com/Performing.aspx#jpheader

また杉藤楽弓社ではエントリー弓の材質がマサランデュバであることを公表しています。
ttp://www.sugito-bow.co.jp/bow_knowledge.htm

アフリカンブラックウッドは、木管楽器でグラナディラとして知られる木と同一のようです。私は使ったことはありませんが、フェルナンブコの代替になる可能性は十分ありそうです。ただ、材質だけが良くても良い弓とは限らないですね。私は同じグレードのカーボン弓でさえ個体差があるように、微妙な差が音色に大きく影響すると思います。

通りすがりさま、以前紹介したサントリーコレクションの3本のF.Tourteのヴァイオリン弓でさえも、1本は「スティックのスプリングはやや弱めで、良くしなり、材質は柔らかい。この弓の場合、現代のホールでの演奏を実現させるのは難しい」、別の1本は「音量が小さい」と評価されています。経年変化もあるのかもしれませんが、Tourteが素晴らしい木ばかりを使えたわけではないでしょう。

ttp://www.daion.ac.jp/museum/kankohbutsu/pdf/23/doc002.pdf
ではまだはっきりとした意見表明はないようですね。
現在では、かつての名弓に匹敵するものは作成可能か否か!!
[42409]

Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月11日 09:24
投稿者:catgut(ID:EnASmVI)
フェルナンブコについて、「楽器の辞典 弓」に杉藤武司氏が興味深い情報を書かれていますので紹介します。ここでは「ペルナンブコが一人前の原木に育つには100年もかかる」といった、事実と異なる内容も含まれています。

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(ペルナンブコは)直径が30cm前後のものが最も良く、太い木があったとしても必ず芯割れが多く、弓の製作には適さないというやっかいな材料なのです。

ペルナンブコは、(1991年の)10年ほど前までは海寄りの地域に生えていましたが、現在では、ほとんど伐り尽してしまったので、たいへん不便な山奥まで行かない限り、集荷業者に会えないのです。

当社は昨年度(1991年頃)は、ペルナンブコの原木を約50トン消費しました。これは全ドイツの弓メーカーたちが使う量より多いそうです。
-----

上記が事実なら、やはり弓の材料としての枯渇が問題となったのは1980年代頃からで、直径30cm前後のものが良いとすると、30年以上経ったフェルナンブコは割れが増えてかえって扱いにくいということなのでしょう。

そもそも、貴重な木だとするとブラジル以外で栽培されないというのは不思議です。有用な南米原産の植物は大抵世界中で栽培されています。その理由を考えると、フェルナンブコには毒性があるため加工時に注意が必要で、どうしても必要な用途以外では使われないからでしょう。1980年頃まではブラジルだけで十分需要を満たせたので、他で栽培する必要がなかったのでしょう。

家具から見たフェルナンブコ
ttp://www.geocities.jp/quila_studio/material.html
Brazilwood/Braziletto(ブラジルウッド)-Caesalpinia Brasilensis, Echinata-
主に装飾に使用されたが、18世紀以降の家具には、ほとんど見られる事が出来ない。

通りすがりさま、もちろん論理的には可能だと思いますよ。
「ストラディヴァリが使ったのと同じ材料を使って、ストラディヴァリと同じ
ヴァイオリンを作れるか」という質問にはどう答えますか。
[42411]

Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月11日 11:40
投稿者:通りすがり(ID:FINJlSk)
>通りすがりさま、もちろん論理的には可能だと思いますよ。
「ストラディヴァリが使ったのと同じ材料を使って、ストラディヴァリと同じ
ヴァイオリンを作れるか」という質問にはどう答えますか。

質問に対し質問で返さないように。
お答えが中途半端でしたから、

改めて質問です。
理論的に可能として、
再現できているとお考えですか、それとも再現されていないとお考えですか。
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Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月11日 12:49
投稿者:catgut(ID:EnASmVI)
私が弾いた経験のある数本のトゥルテの中に最高の弓があったかどうか分かりませんが、私は最近の弓にもそれに匹敵するものはあると思います。

実際、杉藤の弓をレコーディングに使用した佐藤俊介氏以外にも、比較的最近の弓を使用している一流のソリストは何人かいたと思います。もっとも、これまで論じて来たように20世紀にはより重い弓が求められているのですから、総合的にトゥルテの弓より最近の弓が良いと思う奏者がいてもまったく不思議ではありません。

トゥルテ自身は操作性と音色が良い弓を作ることに注力したと思います。その中で、たまたま現代的な音量に対応できる弓が「最良の弓」として高く評価され、そうでないものが「腰が弱い」とか「音が小さい」とか評価されるようになったのでしょう。

ちなみにヒラリー・ハーンは以下の本によると時々Horst Johnの弓を使っているそうです。
Violin virtuosos String Letter Publishing

なお、フェルナンブコのシーズニングは数年間(several years)ということです。
ttp://www.drbows.com/vnbow.html
The plank is first bandsawn into straight bow blanks, which are then seasoned for several years.
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