ヴァイオリン・ウェブ | Violin Web
ヴァイオリン・ウェブ | Violin Web

ヴァイオリンの塗装について その3 | ヴァイオリン掲示板

ヴァイオリン好きのための情報サイト ヴァイオリン・ウェブ
楽器・付属品 216 Comments
[37567]

ヴァイオリンの塗装について その3

投稿日時:2008年06月13日 20:49
投稿者:catgut(ID:MxCCaDI)
私は前スレッド、前々スレッドで、
「ヴァイオリンの音色は材質と形状、および調整によって決まり、
ヴァイオリンの塗装で音色が良くなることは基本的にない」と
客観的な証拠を多数提示して書いています。

どなたも塗装でヴァイオリンの音が良くなるという証拠を提示されて
いません。そして見当違いのコメントがしばしば付けられています。
これはいったいなぜなのでしょうか。ちょっと分析してみたいと思います。
ヴァイオリン掲示板に戻る
1 / 22 ページ [ 216コメント ]
[37568]

Re: ヴァイオリンの塗装について その3

投稿日時:2008年06月13日 20:59
投稿者:catgut(ID:MxCCaDI)
まず、「ヴァイオリンの塗装が音量を落す」という事実について、
「ヴァイオリンの音は大きければいいというものではない」という
見当外れな反応があるように思われます。

もちろん、ヴァイオリンは音が大きければいいというものではありません。
演奏する立場では、ppからffまでのダイナミックレンジが大きいもの
が表現力があるヴァイオリンです。裸ガット弦は絶対音量はナイロン弦より
小さいが、ppがより小さく出せるのでダイナミックレンジが広く表現力があ
ると鈴木秀美氏が書かれていました。

ヴァイオリンの塗装はffからppまでの音量全体を落しますから、
ダイナミックレンジは同じなのに全体音量が減ってしまうわけです。
良いことは何もありません。
[37569]

Re: ヴァイオリンの塗装について その3

投稿日時:2008年06月13日 21:01
投稿者:通りすがり(ID:FINJlSk)
①塗装は不要⇒白木でよい。
②塗装は必要⇒
 ②-1 どのようなニスが良いのか。
 ②-2 塗装方法の問題  

という構造になっていますよね。
②-1、②-2の議論をしているときに、しばしば①が混在することが、
その原因と思われます。
[37570]

Re: ヴァイオリンの塗装について その3

投稿日時:2008年06月13日 21:11
投稿者:catgut(ID:MxCCaDI)
次に「白木のヴァイオリンが欲しいのか?」とコメントが何度かついて
いました。もともと塗装は楽器の保存と美観のために行うものです。
材質と形状を最適にし、音が期待通りであることを確認したら、保存と
美観のために塗装するのは当然です。その際、できるだけ板の振動を
妨げない材質で、保存性と美観を損なわないように塗装するのは当然
です。

確かに優れたヴァイオリン製作家の一部で「ニスが音を良くする」と信じら
れていることは私も知っています。例えば有名な「海峡を渡るバイオリン」の方の作品は私も実際に何挺が弾かせて頂いたことがあり、非常に音色が優れていると思いました。そして「海峡を渡るバイオリン」の中で、過去に音が良くなることを期待してミミズを潰してバイオリンに塗った話を書かれています。これは効果がなかったようですが、ニスで音色が良くなると信じているわけです。
[37571]

Re: ヴァイオリンの塗装について その3

投稿日時:2008年06月13日 21:25
投稿者:catgut(ID:MxCCaDI)
17,18世紀のクレモナのメーカーはニスで音が良くなるとは考えていな
かったようです。

・クレモナの銘器の作者たちは調合済みのニスを買ってきてそのまま塗
ったとヴァイオリンの専門家は推定している。

・当時のヴァイオリンは指板を接着してからニスを塗ったため、指板の
裏側にあたる表板にはニスのムラが見られる。ニスが音に影響があると
考えられたのであればこんなことをするはずがない。

・現在では製作時のニスはほとんど剥げており、当初よりかなりニスが
薄くなった状態か、または製作時のニスとはまったく違うカバーニスが
塗られている。それでも音色は最高の評価を得ている。

ちなみにクレモナのニスの調合レシピは、ヒル兄弟があったらしい
と書いているだけです。1つも確認されていません。また19世紀以前
にニスがヴァイオリンの音を良くすると考えられた資料は1つも見つか
っていません。
[37572]

Re: ヴァイオリンの塗装について その3

投稿日時:2008年06月13日 21:37
投稿者:catgut(ID:MxCCaDI)
音響学者は実証的な実験を行い、ニスの音色の改善効果を否定しています。

J.C.Schellengの”Acoustical effects of violin varnish”では、前文でヒル
兄弟の主張する材質や形状よりニスが音色に影響するという説を取り上げ
て検証しています。そして「ニスはできるだけ薄く塗るべき」という結論を出しています。また前スレッドで紹介したように小野晃明氏の研究では
木目と直角方向のヤング率が低い、通常ヴァイオリンに使用しないような
スプルースでのみニスで周波数特性が変化し、良質なスプルースではニスを塗っても音量が落ちるだけで周波数特性は変化しないことを示しました。

前々スレッドで紹介したように、ヤマハが行った実験では、常識的な厚みに塗られたオイルニス・アルコールニス・ラッカー塗装・ウレタン塗装などの
ヴァイオリンに強い紫外線を照射すると、塗装の層が物理的に破壊されて
「音が良くなる」という結果が出ています。この研究を行った方の別の古木
化の研究成果が、実際にヤマハから製品化されています。
[37574]

Re: ヴァイオリンの塗装について その3

投稿日時:2008年06月13日 22:15
投稿者:catgut(ID:MxCCaDI)
19世紀に一部の人々が「クレモナの銘器の音が良いのはニスに秘密があるのではないか」と言い出し、当時から賛否の議論があり、「ニスが音を改善する派」はヒル兄弟が主張する「材質や造型よりもニスが音色に影響がある」という現在ではとても信じられない主張を決定的な証拠と信じてしまったと考えられます。

パウル・カウル(Paul Kaul 1875年生まれ)のような一流の製作者が「ワニスが装飾、楽器保守、効果的な気孔ふさぎのためにあり、音色を良くするようないかなる効果も持っていない」と主張しています。もちろん現在でも多くのプロの製作者が同様に主張しています。ヘロン・アレン、マルク・パンシェルル、佐々木庸一などのヴァイオリンについて造詣の深い方々もニスの音色の改善効果を否定しています。

プロの製作家でも「ニスが音色の改善に効果がある」と信じてしまう原因として、「調整」の難しさや「弾き込み」「ニスの乾燥」の問題があると考えられます。オールドの銘器を「近くで聞くと音が荒いが遠くで聞くと音が良く通る」と評価するのに「白木だと音は大きいが音が荒い」という妙な評価が起きてしまいます。ニスが塗られている新作が当初は「音が荒く」段々落ち着いてくるという現象は実際に経験することです。
[37575]

Re: ヴァイオリンの塗装について その3

投稿日時:2008年06月14日 00:37
投稿者:父娘Vn(ID:QGCYVyA)
マエストロc師の一本勝ちですから。逆らっては、いけません。白木のストラドこそ最高!?
[37583]

Re: ヴァイオリンの塗装について その3

投稿日時:2008年06月14日 08:30
投稿者:catgut(ID:MxCCaDI)
父娘Vnさま、前出の石井氏は以下のように書かれているので、もし今後会われる機会あったら石井氏ととっぷりと語り合ってみてください。

ttp://www.geocities.jp/katakoto_02/html/column/maintenance.html

俺の個人的な見解は、ニスは音に影響しなくはないけれど、よくない楽器のニスを塗りなおして素晴らしい音になる、ということもない。という程度に思っています。

(ニスを塗りなおしても)基本的には見た目の問題で、音に影響があるかどうかというのは俺は微妙だと思っているので、見た目がどうしても我慢ならん、というのでなければそれもその楽器の個性とでも思って納得するのがよいような気はします。
[37584]

Re: ヴァイオリンの塗装について その3

投稿日時:2008年06月14日 12:17
投稿者:通りすがり(ID:FINJlSk)
[37583]
[37583]

Re: ヴァイオリンの塗装について その3

投稿日時:2008年06月14日 08:30
投稿者:catgut(ID:MxCCaDI)
父娘Vnさま、前出の石井氏は以下のように書かれているので、もし今後会われる機会あったら石井氏ととっぷりと語り合ってみてください。

ttp://www.geocities.jp/katakoto_02/html/column/maintenance.html

俺の個人的な見解は、ニスは音に影響しなくはないけれど、よくない楽器のニスを塗りなおして素晴らしい音になる、ということもない。という程度に思っています。

(ニスを塗りなおしても)基本的には見た目の問題で、音に影響があるかどうかというのは俺は微妙だと思っているので、見た目がどうしても我慢ならん、というのでなければそれもその楽器の個性とでも思って納得するのがよいような気はします。
のコメントは的外れです。

>ニスは音に影響しなくはないけれど、よくない楽器のニスを塗りなおして素晴らしい音になる、ということもない。という程度に思っています。

その通りでしょう。

②塗装は必要⇒
 ②-1 どのようなニスが良いのか。
 ②-2 塗装方法の問題 

に関し、普通のことをして居ればよいというわけです。


>19世紀に一部の人々が「クレモナの銘器の音が良いのはニスに秘密があるのではないか」と言い出し・・・

ここで引き合いに出されているメーカーは果たして
①白木よりもニスを塗った方が良い(可能性がある)
と考えて議論していたのでしょうか(とてもそうとは思われません)。
むしろ
②自分たちの塗装法・塗料より先達の塗装法・塗料が優れている可能性を探っていたのではないでしょうか?

この点はどうですか?
ヴァイオリン掲示板に戻る
1 / 22 ページ [ 216コメント ]