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弓の良い素材について | ヴァイオリン掲示板

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楽器・付属品 91 Comments
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弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月10日 19:56
投稿者:catgut(ID:EnASmVI)
一般に弓の材料としてフェルナンブコ(ブラジルボク)が優れているとされて
いますが、フェルナンブコの実態はあまり知られていません。また、トゥルテの時代のフェルナンブコのほうが20世紀のフェルナンブコより良質だったのではないかという説があるようです。このあたりについて検証してみたいと思います。
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Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月11日 21:19
投稿者:コゲ(ID:N5eRRzY)
トルテの時代までには、どれだけ伐採が進んでいたのでしょう。

染料に使うには色の濃い古い木の方が高品質と見なされていたでしょうから、
平地の方でそういった木は早々に採り尽くされ、
トルテの時代にはもう奥地の方で伐採する様になっていたのかもしれない。

トルテ以後もその延長で奥地で古い木を伐採していたが、
後年そういった木はほぼ採り尽くされた事、
染料としての需要が無くなった一方で弓の量産も広まった事から、
改めてそれまで選択肢に入ってこなかった平地に生えた木や、
若い木までも伐採する様になったのかもしれない。

それさえもほぼ採り尽くされ、慌て始めたのが今の状況と。

あくまでも想像の域を出ませんが。
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Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月11日 23:14
投稿者:catgut(ID:EnASmVI)
フェルナンブコ(ブラジルウッド)の貿易量の変化については以下の通りだそうです。

ttp://bell.lib.umn.edu/Products/BrazilW.html

The trans-Atlantic trade in brazilwood climaxed before 1600 and was followed by a sharp decline due to over-harvesting and the decimation of the native population by disease and mistreatment.(略)
Exports of brazilwood in the seventeenth century averaged only 100
tons annually, even less in the eighteenth century

大意:
ブラジルウッドの大西洋間貿易は、1600年以前に頂点に達し、その後乱獲などにより下降した。17世紀には平均して年間100トンほどが輸出されるだけになり、18世紀にはさらに減少した。

1991年頃に杉藤が50トンのフェルナンブコを輸入し、それと同じくらいのフェルナンブコをドイツの弓産業で消費したということですから、トゥルテの時代には大半が染料としてして使用されたにもかかわらず、「1991年のドイツ弓と杉藤弓の製作で使用されるくらい」のフェルナンブコしかヨーロッ
パ全体では輸入されていなかったことになります。

それにしても、タネを植えて12年目のフェルナンブコを切って数年乾燥させて作ったであろうHorst Johnの弓でも、ヒラリー・ハーンが時々使う程の弓になるのですね。
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Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月12日 00:13
投稿者:catgut(ID:EnASmVI)
日本語のソースも欲しいという方のために、wikipediaの「ブラジルの歴史」の記述も紹介しておきます。

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パウ・ブラジルの時代

1503年にヨーロッパで需要のあったパウ・ブラジル (ブラジルの木=フェルナンブコ)が王室専売とされ、新キリスト教徒(改宗ユダヤ人)のフェルナン・デ・ノローニャに専売権が与えられた。この時には商館を建設し、貴金属を求めて、内陸部への「奥地探検」(エントラーダ)を行っていた。

ブラジルには既にインディオと呼ばれることになる多くの人々(先住民)が居住しており、現在ブラジル人であるとされるこれらの人々の歴史はポルトガル人の到来以前から始まっていたが、ブラジルの歴史はポルトガル人の到来によって大きく変わった。歴史上はじめて「ブラジル人」と呼ばれることになったのは、このパウ・ブラジルの貿易に関わる商人達だったのである。

このように、当初ポルトガル人はインディオとのパウ・ブラジルの交易のみを行っていたため、入植も交易拠点となるフェイトリアの建設が主だったが、16世紀前半には早くも沿岸部のパウ・ブラジルが枯渇した。
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トゥルテの時代には優れたフェルナンブコが入手出来たが、20世紀(末期を除いて)には優れたフェルナンブコは入手困難だったいう考えは明らかにおかしいと考えられます。
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Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月12日 00:57
投稿者:コゲ(ID:kTSDRCA)
wikiの「16世紀前半には早くも沿岸部の…」の部分は、
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Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月11日 09:24
投稿者:catgut(ID:EnASmVI)
フェルナンブコについて、「楽器の辞典 弓」に杉藤武司氏が興味深い情報を書かれていますので紹介します。ここでは「ペルナンブコが一人前の原木に育つには100年もかかる」といった、事実と異なる内容も含まれています。

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(ペルナンブコは)直径が30cm前後のものが最も良く、太い木があったとしても必ず芯割れが多く、弓の製作には適さないというやっかいな材料なのです。

ペルナンブコは、(1991年の)10年ほど前までは海寄りの地域に生えていましたが、現在では、ほとんど伐り尽してしまったので、たいへん不便な山奥まで行かない限り、集荷業者に会えないのです。

当社は昨年度(1991年頃)は、ペルナンブコの原木を約50トン消費しました。これは全ドイツの弓メーカーたちが使う量より多いそうです。
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上記が事実なら、やはり弓の材料としての枯渇が問題となったのは1980年代頃からで、直径30cm前後のものが良いとすると、30年以上経ったフェルナンブコは割れが増えてかえって扱いにくいということなのでしょう。

そもそも、貴重な木だとするとブラジル以外で栽培されないというのは不思議です。有用な南米原産の植物は大抵世界中で栽培されています。その理由を考えると、フェルナンブコには毒性があるため加工時に注意が必要で、どうしても必要な用途以外では使われないからでしょう。1980年頃まではブラジルだけで十分需要を満たせたので、他で栽培する必要がなかったのでしょう。

家具から見たフェルナンブコ
ttp://www.geocities.jp/quila_studio/material.html
Brazilwood/Braziletto(ブラジルウッド)-Caesalpinia Brasilensis, Echinata-
主に装飾に使用されたが、18世紀以降の家具には、ほとんど見られる事が出来ない。

通りすがりさま、もちろん論理的には可能だと思いますよ。
「ストラディヴァリが使ったのと同じ材料を使って、ストラディヴァリと同じ
ヴァイオリンを作れるか」という質問にはどう答えますか。
の、1991年の10年前まで海寄りの地域で採れていたという話と食い違いますな。
弓材としてのペルナンブコの歴史をどこまで反映しているのか甚だ疑問です。
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Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月12日 05:52
投稿者:きうち(ID:NGEZaHE)
>>私は経年変化の影響はあったとしても少ないと思います。
>>スティックの重要の違いの影響が大きいのではないでしょうか。

>19世紀の軽い弓にカーボンを使って似せたのがARCUS、
>フェルナンブコを使って再現を試みたのが
>杉藤のセンシティブシリーズではないかと思います。

杉藤浩司さんのセンシティブシリーズは
軽さが特徴ではなく
材料の選定とその材料を弓に仕上げる製作過程に特徴があります。
重さではありません。
そのことは杉藤浩司さんから直接教えていただきました。

CutGutさんのお考えである
杉藤浩司さんの弓が軽いというのは
弦楽器フェアーで超軽量弓を発表していたので
その印象からくるものだと拝察します

確かに軽めの弓も多く作りましたし
過去の名弓には、軽い弓もあった
とおっしゃっていましたが

超軽量弓は、フロッグ部分に半月リングがないなど
一般的な弓とはやや異なります

現在、杉藤浩司さんが製作した
佐藤俊介さんに提供した弓のプロトタイプの弓を所有していますが
やや軽いぐらいで、ごく普通の性能のよい弓です。
この弓も材料の選定方法や製作方法は
センシティブシリーズの制作手法によってつくられています

(その製作方法について、ここで書いてよいのかどうかわかりませんので、遠慮させていただきます。以前弦楽器フェアーの会場で雑談をしていながら、弓の材料や細部に元代の弓と異なるところが多々あり、それを指摘すると杉藤浩司さんが「よくわかりましたね、これ企業秘密なんですよ」とおっしゃったので…まあ、私のようなアマチュアに分かるほどの違いなので公知の事実なのかもしれませんが…)


センシティブシリーズが軽さを追っている弓ではないことだけ
お伝えしたく、書き込みました

ただ、
杉藤浩司さんのお考えの中に
毛の張り方は、極力毛は少ないほうがピュアな音が出ること←必然的に弓が軽くなります。
弓についている金属部品は音響効果を損なう要因になる可能性がある(トルテの時代は金属スライドがフロッグについていない)
というお考えがあったのは事実ですし
これらを取り入れると、弓は必然的に軽くなります
その結果得られるメリットはデメリットより大きいとおっしゃってました。
[42421]

Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月12日 07:46
投稿者:catgut(ID:EnASmVI)
通行人さま、

1992年発行の「楽器の事典 弓」に杉藤武司氏が、
「当社は昨年度は、ペルナンブコの原木を約50トン消費しました。これは全ドイツの弓メーカーたちが使う量より多いそうです。」と書かれています。その年だけ杉藤楽弓社でとりわけ多くのフェルナンブコを使わなければならなかった理由が何かあるのでしょうか?

また、中国製の弓が大量に流入してきた比較的最近でも、杉藤楽弓社では毎年15トンのフェルナンブコを使用しているそうです。過去に数百トンいっきに輸入した年があって、いままで使い続けているのでしょうか?

ttp://www.sugito-bow.co.jp/profile_en.htm
we use about 15 tons of pernambuco wood each year.


コゲさま、「16世紀前半の沿岸部」と「1980年頃の海寄りの地域」では全然範囲が違うと思います。1980年頃は16世紀前半よりはるかに内陸側に開発が進んで、道路や鉄道が発達した上での「海寄り」でしょう。

きうちさま、情報ありがとうございます。
私の経験では毛が少ないとレスポンスが良く明るい音になりますね。

トゥルテはもちろんとにかく軽く作ろうとしたわけではなく、現在より音量が要求されなかった時代において操作性と音色を最大化した結果が56g前後の重量だったのだと思います。

きうちさまの個人的見解として、トゥルテと比べて杉藤氏の弓はまだ及ばないとお考えでしょうか?
[42422]

Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月12日 08:34
投稿者:通りすがり(ID:FINJlSk)
>トゥルテはもちろんとにかく軽く作ろうとしたわけではなく、現在より音量が要求されなかった時代において操作性と音色を最大化した結果が56g前後の重量だったのだと思います。

前のスレッドで結局お返事がなかったので、改めて質問します。
・現在でも最前線で使用されている一般的なトルテは音量が出ないのですか。
・軽いトルテと、改変されて重くなったトルテで音量差があるのですか?
・そもそも、弓の重さと音量の直接的な関係は証明されているのですか?
[42429]

Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月12日 22:38
投稿者:catgut(ID:EnASmVI)
以下にコメントしてませんでしたね。
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直径30cm前後=30年以上経ったフェルナンブコ,という解釈の根拠はどこにあるのでしょうか?あなたが引用した原文には、1cm=1年とは書いてありませんが。
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こちらに12年物と27年物のフェルナンブコの木の断面の写真があります。
ttp://tkyabe.com/blog/2007/10/post_214/

この27年物の写真を見ると、すでに直径30cmかそれ以上あるように見えます。もちろん植物は生育環境によってかなり成長速度が変わると思いますが。

それにしてもこの記事は非常に興味深い情報が含まれていますね。

弓職人のヨッヘン・シュミット氏が「一番いいのは、60年や80年前のものです。最近になるほど品質は落ちている」と述べていますが、2005年の記事ですから60年前は1945年頃です。20世紀中旬までのフェルナンブコが質が良かったということになります。私はその後(少なくとも20世紀末までは)は木の質自体が落ちたというよりは戦争が終わって大量に弓が生産されるようになり、弓職人一人あたりが使える最良の部分が少なくなったのではないかと思います。

実際、シュミット氏は今後弓の製作に必要なフェルナンブコの量について「年間250立方メートルほどだろう」と述べています。フェルナンブコの比重は1.1程度ですから、250立方メートルなら227トンです。これほどの量を弓の製作で消費しているわけです。

「カカオ農園にはすでに成木となっているものも何本かあり、売れば立方メートルあたり140~300ユーロになるとなれば、農家にとっては誘惑的である。」とありますので、910kgあたり17080円~36600円程度です。つまり1kgあたり18.7円~40円です。普通弓1本作るのにフェルナンブコは1kg必要と言われます。上記の「立方メートル」が心材だけではなく丸太の値段だとして、心材でも弓に使えない部分が多いことを考慮し、30倍にしても、弓1本当たりのフェルナンブコ原料コストは561円~1200円程度でしかないということになります。実際、日本の銘木店でも、弓1本程度が製作できるサイズのフェルナンブコは(最上の部分ではないとしても)数千円以下で売られています。

最後に、フェルナンブコの利用法として線路の枕木や牧場の柵があったというのも面白いです。

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職人のマルコ・ラポーサは傑作な当座の解決方法を見つけ出した。ペルナンブーコ材は色と音を作り出す目的ばかりに使われてきたわけではない。シロアリにも強いため、以前はしばしば線路の枕木や牧場の柵にも利用されてきた。昨年末から、ラポーサは80本以上の保存状態のよい柵木を買い取ってきた。ひびさえ入っていなければ、その一本一本から10本の弓を作ることができるのだ。
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Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月12日 23:49
投稿者:カルボナーレ(ID:lXYJR3A)
別のスレで、catgutさんも言っていたように、弓は巻き線や弓の毛で数グラム単位で重さが変わりますし、フロッグ交換、アジャスター交換、ヘッドのガードの材質(象牙、プラスティック、金属)などでまた数グラムは変わります。
その結果、メニューインの遺品の2本のトルテのように、棹はトルテだが結果的には重量が65gあるような弓が存在します。
重さにより、音色や音量が変わるとのことですが、上記のメニューインのトルテのケースにおいては、オリジナルが軽かったとしてその状態と、重くなった状態でどのように変わるのですか。

操作性については、重心さえきちんとしていれば、重くなると安定感が増し、ぶれが少なくなるとともに、弓の重さが利用できるので逆に力を無理にかけずに弾けるということは、経験的にわかっているのですが、同じ棹に対して、巻き線やフロッグが変わって重量が変わる事で音色がどのように変わるのかは、直感的にわかりません。
ぜひ、catgutさんに、具体的に教えていただきたい。
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Re: 弓の良い素材について

投稿日時:2010年02月12日 23:55
投稿者:カルボナーレ(ID:lXYJR3A)
HORST JOHN(もとは木材屋からスタートした創業者の名前でしたが、今はペルナンブーコ屋兼弓メーカですね)のホームページを読む限りでは、植林したものを12年で伐採して数年寝かしたものを使っているようには見えません。数十年来の私的なストック、とか、木は古い方がよい、などという表現の方が私には目に入ってきます。
一度素直にじっくりご覧ください。
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