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ヴィブラートのかけ方について その5 | ヴァイオリン掲示板

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ヴィブラートのかけ方について その5

投稿日時:2007年05月05日 03:01
投稿者:catgut(ID:IRcYhDk)
以前のスレッド(ヴィブラートのかけ方 その4)が非常に長くなりました
ので、新しいスレッドを作成しました。

本スレッドの趣旨は、客観的事実として弦楽器のヴィブラートは基本的に
は基準音(=聞かせたい音程)の上下にかかる前提で、その例外を含めてよいヴィブラートのかけ方について検討・議論・情報交換を行うことです。

ヴィブラートがほぼ基準音の上下にかかることについては前スレッドまでに
合意を得たと考えていますので、再度繰り返したくはありませんが、まだ
一般に浸透していないと思われるため念のため根拠を以下に示します。

・ヴィブラートの起源から
ヴィブラートの起源は歌(声)のヴィブラートの真似であるため上下にかける。

・人間の音程認識から
人間の耳はヴィブラート範囲のおよそ中間の音程を認識する。ほぼすべての実証的調査でおよそ中間の音程を認識するという結果となっている。

・ヴィブラートの演奏習慣から
レオポルド・モーツァルトやカール・フレッシュの著書など、多数の文献
で「基準音の上下にかける」または「上に向けてかける」と書かれている。
これはヴィオラ・ダ・ガンバなどのフレット付きの楽器では上に向けてし
かかけられなかったこと、バロックヴァイオリンの持ち方(左手で楽器を支
える)では下に向けてかけるのは困難だったことなどによると考えられる。

・実際の演奏者の意識から
現在海外・国内ともに「基準音の上下にかける」と考えている方が多数いる。雑誌「ストリング」2007年5月号掲載「革命的音楽論」では、著者の玉木宏樹さまが「ヴィブラートは基準音の上下にかける」という前提でヴィブラートについて解説されています。

「基準音の下にかける」「下に向けてかける」と主張したのはイヴァン・
ガラミアンのみであり、他に(ガラミアンの主張と独立に)「基準音の
下にかける」「下に向けてかけ始める」と主張した文献は現時点までに見つかっていません。
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【ご参考】
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Re: ヴィブラートのかけ方について その5

投稿日時:2007年05月22日 13:13
投稿者:CABIN(ID:OVU5FkM)
ご無沙汰してます。
リンク先(Y社でないほう)のアニメーションは面白いですね。
こちらは動きませんが,「楽器の物理学 N,H. フレッチャー (著), T.D. ロッシング (著)」
もお求めになってご覧になると良いかもしれません。
内容は数式の比重が多いのと,日本語が少し読みにくいのですが,参考先の論文名などもかなり書き込んであります。
catgutさんがお持ちになるような図書だと思います。
Amazonで検索すると,内容が少し見れます。
まあ,物理学のことであって,なのですが....
[33657]

Re: ヴィブラートのかけ方について その5

投稿日時:2007年05月22日 15:11
投稿者:catgut(ID:NYSQKWc)
CABINさま、
文献のご紹介ありがとうございます。入手して読んでみたいと思います。
弦がヘルムホルツ運動をしていることは知っていましたが、うかつにも
スティックスリップ現象に由来することを理解していませんでした。

G線開放弦より低い音を出す方法も、ヘルムホルツ運動によるものですね。

ヘルムホルツ振動でG線開放弦より低い音を出す件についてのブログ
ttp://blog.hooktail.org/?eid=148248

上記ブログでリンクしているヘルムホルツ振動のアニメーション入り解説
ttp://www.phys.unsw.edu.au/jw/Bows.html

木村まりさんによるG線開放弦より低い音を出す方法の解説
ttp://homepages.nyu.edu/%7Emk4/ASVA.html

G線開放弦より低い音を出せる仕組み(AFL)を扱った論文
ttp://www.diva-portal.org/diva/getDocument?urn_nbn_se_kth_diva-3361-2__fulltext.pdf
[33672]

Re: ヴィブラートのかけ方について その5

投稿日時:2007年05月23日 19:22
投稿者:アマチュアチェロ弾き(ID:MFdyYyU)
catgutさん

>このあたりはどんな仕組みになっているのでしょう?

これは、無事解決しましたでしょうか?

少し補足を試みます。
弓の位置と弓が弦を押す力(俗に言う「弓圧」)とがSchelleng diagramの斜線部分(以後、「ヘルムホルツ領域」と呼ぶことにします)の関係にある限り、bridgeと指の距離により一義的に求まる高さの(普通の)音が出ます。
で、ご質問の松脂の粘着力ですが、弓に松脂を塗ると、ヘルムホルツ領域が下側に移動します。これは松脂を塗ることで、より少ない弓圧で演奏できることを意味しています。
また、図から分かるように、ヘルムホルツ領域はbridgeに近い部分では狭く、右に行くにしたがって広くなっています。これは、bridgeの近くでは弓圧のコントロールがシビアであり、離れるにしたがってルーズになることを意味しています。アマチュアではbridgeの近くで弾くのが困難な理由のひとつでしょう。
更に、弓の速度とも密接な関係にあります。弓の速度が速くなるとヘルムホルツ領域は上に移動し、遅くなると下に移動します。例えば遅い弓で弾いていた弓圧をそのままにして、早い弓で弾くと音がかすれてしまいますよね。

このように、弓圧、弓の位置、弓の速度はきわめて密接な関係にあり、Schelleng diagramはそれらを表現するすばらしい方法なのです。でも何故かあまり見かけることはありませんよね!?もったいないことです。(更には、松脂や弦、弓毛の特性も暗に含んでいます)
上手な人は経験的にそれらを把握して、無意識のうちに実践しているのでしょう。

因みにHelmholtz motionのほうは、話のねたとしてはとても面白いのですが、演奏にはあまり役立たないかも(^^;


木村まりさんのサブハーモニクスの件ですが、通常のHelmholtz motionではHelmholtz corner(これで通じますか? kink?)が弓の位置を『通過』するのに対し、弓圧が大きすぎるため弓の位置で『反射』してしまい、bridgeへ伝わる振動の個数が少なくなるため、と理解しています。しかし、やり方がわかっているのに、木村まりさんの名前しか出てこないとは、よっぽど凄いテクニックのようです。
[33673]

Re: ヴィブラートのかけ方について その5

投稿日時:2007年05月23日 23:02
投稿者:catgut(ID:NYSQKWc)
アマチュアチェロ弾きさま、コメントありがとうございます。

実際のヴァイオリン弾きで「美しい音を出す」ことが「弦をヘルムホルツ
運動させる」ことと意識している人はほとんどいないでしょうね。
Schelleng diagramは「運弓の説明方法」として大変優れていると思いますが、確かにヴァイオリンの指導書では見かけません。

弓の性能(毛・松脂も含めた)もスティックスリップ現象をベースに
説明できそうですね。弓毛がばらけた弓では寝ぼけた音がして、弓毛が揃った毛替え後の弓ではシャープな音がするという現象も、スティックスリップが不規則か規則的かの違いなのでしょうか。

サブハーモニクスがあまり使われないのは、演奏の難しさもさることながら
音の美しさの点で問題があるのではないでしょうか。どうしても独奏で低音
が必要ならば5弦ヴァイオリンを使うという手もあります。
[33705]

Re: ヴィブラートのかけ方について その5

投稿日時:2007年05月26日 19:57
投稿者:catgut(ID:lxhXIlA)
ストリング誌2007年6月号の玉木さまの連載でも触れられていますが、
ストリング誌2003年8月号から「美しいヴィブラートに魅せられて」というタイトルの記事を若山智子さんが連載されていました。私はこの記事を最近知りました。若山さんは「ヴィブラートを確認できるフリーソフト [30728]
[30728]

Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月13日 22:41
投稿者:catgut(ID:QVkIZAI)
yasさま、

まったくご指摘の通りだと思います。少なくとも戦後に教育を受けたヴァイ
オリニストの多くは、「下にかける」という意識でヴィブラート動作を行っ
ていると思います。ところがスペクトラムアナライザで確認するとヴィブ
ラートは基準音の上下にかかっているという事実があります。これが不思議なところです。

参考までにtartini以外で測定した巨匠のヴィブラート測定データもありましたのでご紹介します。千葉工業大学情報科学部情報ネットワーク学科による測定です。グリュミオー、オイストラフ、パールマン、スターンそれぞれが同じ曲を演奏するCDを用意し同じ音にかかったヴィブラートを測定しています。

COMPARISON OF VIOLIN VIBRATOS AMONG FOUR VIRTUOSI
ttp://alt.szk.net.it-chiba.ac.jp/image/ISMA(SuzukiHideo).pdf

測定曲、測定音は以下の通り。
(1) Lalo: cis1 in the 8th bar of the first movement,
Symphonie Espagnole Op.21 (1874).
(2) Mozart: cis3 in the 40th bar of the first movement,
Violin concerto, No.5 K.219 "Turkish" (1775).
(3) Tchaikovsky: b in the 23rd bar and a1 in the 27th bar
of the first movement, Concerto for Violin and Orchestra Op.35 (1878).

(3)のa1音のヴィブラートの幅は以下の通り(最終ページのグラフから読み取り)。
グリュミオー 437Hz-455Hz
オイストラフ 425Hz-455Hz
パールマン 438Hz-455Hz
スターン 440Hz-452Hz
」で紹介した巨匠のCDのヴィブラート分析論文の著者の一人です

連載では17世紀・18世紀のヴィブラートに関する文献紹介もあり、現在とは楽器の持ち方が違うのでヴィブラートの多用が難しかったという話もあります。注目すべきは2004年2月号の第7回で、まさにヴィブラートの音程認識を取り上げています。

若山さんはガラミアン説を紹介した上で、「私も学生時代に多くのヴィブラートに関する記述を読み、理由にも納得し、低いほうへのみかかるものだと考えておりました。しかし、事実でしょうか? 現在、テレビはもちろんDVDなど多くの視聴覚資料があり、演奏中の姿を大きくみることができますよね。ヴィブラートのかけ方はどのように見えますか?必ずしも全てが、低いほうへのみ揺れているとは言い切れないと思います。」と疑問を呈しています。

そしてチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の4音の分析結果を提示し「結果を一言でいえば、様々なパターンがみられます」と考察しています。
(引用者注:25小節目の2音で測定できた音に対しては下に揺れる割合が高くなっているが再確認が必要と思われる)
[33732]

Re: ヴィブラートのかけ方について その5

投稿日時:2007年05月30日 00:02
投稿者:catgut(ID:NZlQVVM)
ストリング誌2007年6月号を一通り目を通しましたが、私が気付いた範囲では4名の方がヴィブラートの音程認識についてコメントされていました。
該当部分の内容を簡単に紹介します。詳細はストリング誌でお読みください。

(1)本号の表紙にも登場されている木野雅之インタビュー記事
・ヴィブラートにはいろんなヴィブラートがあっていいと思う。
・「基本的には上のような気もしますけど・・。どちらかというとソリストの人は高め高めに音程をとる傾向があるからそういう考え方をするし、室内楽をやる人は特に低め低めにチェロに合わせてっていうようなことを考えて弾く
人もいるから。その人がその場で何をやっているかによって変える。そういう問題だと思います」

(2)革命的音楽論 玉木宏樹
・指の関節が硬いうちは上にかけるのは難しいかもしれないが、指先が柔軟になってくると上に行くようになる。
・チェロの場合、重力は下に向かうのだから手を音程が高いほうに揺らすのが自然。
・ヴィブラートはもともと独唱者が上下に音を揺らしてメロディを強調するために使用した。

(3)アンサンブルの泉 早川正昭
・開放弦のヴィブラートは主に強弱の変化によるヴィブラート
・音程のヴィブラートは半音より狭いヴィブラートで正弦波の場合、「上下の約三分の二の所、即ち、中央より少し上の高さが全体の音程に感じられるということである。」
・「アンサンブル・トーンのためにはヴィブラートは下向きでかなり控えめな方が合わせやすいし、ソロ・トーンの性格をヴィブラートで補強するためには、上向きにかけることが適しているといえるであろう。」
・「バロック時代の装飾音としてのヴィブラートは、上向きにかけていた。いずれにしても、ヴィブラートの速さと音程の幅が、状況に応じて適切に選ばれることの方が重要である。」

(4)続オーケストラの聴かせどころ 永峰高志
・早川(正昭)先生と同じく、上に3分の1くらいが基本の音程からはみ出すのが、自然に聴こえる。
・「基本になる音程を、少しの間のばして(音の冒頭にノン・ヴィブラートの時間を少し作る)からヴィブラートを始めれば、上にかけようが下にかけようが、聴き取り易いメロディーでしたら、聴衆の記憶力によって音程はキープされます。」
・「高耳(たかみみ)」と「低耳(ひくみみ)」があり、本来のピッチより高めに聴こえてしまう人や低めに聴こえてしまう人がいる。
[33733]

Re: ヴィブラートのかけ方について その5

投稿日時:2007年05月30日 00:14
投稿者:アマチュアチェロ弾き(ID:MFdyYyU)
catgutさん

私もストリング誌を入手し、その4つの記事は確認しました。いずれの記事も少なからず何らかの形でこのスレッドの影響を受けているようです。例によって、それらに対するコメントは差し控えますが、いずれにせよ読者がヴィブラートに関してじっくり考えてみる機会が出来たことは、良いことだと思います。
[33747]

Re: ヴィブラートのかけ方について その5

投稿日時:2007年05月30日 21:38
投稿者:catgut(ID:NZlQVVM)
「ストリング誌」では青木編集長が「生ビール三杯分の勇気」(編集後記)を奮って頑張って頂いているのではないでしょうか。

今日は以下の指導書を立ち読みしてきました。
ガラミアン説の「伝言ゲーム」は社会心理学的にも興味深いのではないででしょうか。

「ヴァイオリン教本 第5巻」
1999年刊(原書は1957年頃)イオネル・ジェアンタ、ジュルジュ・マノリゥ著春秋社
著者はエネスコ門下。「ヴィブラートは上下均等にかける」と明記している。

「バイオリン指導曲集副教材 スズキメロディーによる77のバリエーション」
1998年刊 ウィリアム・スタア(Starr)著 全音楽譜出版
鈴木メソッドの副教材で、比較的最近出版された本。
「1960年 ガラミアンによる」と明記した上で、ヴィブラートを音程の下
に向けてかけるとしている。
[33750]

Re: ヴィブラートのかけ方について その5

投稿日時:2007年06月01日 09:43
投稿者:アマチュアチェロ弾き(ID:MFdyYyU)
何だか最近、ここがつながりにくくなっているのは私だけ?

ちょっと気になるので、独り言を。

ストリング誌6月号の早川先生の記事の中に、『音楽心理学の研究によると、半音より狭いヴィブラートでは、その形が正弦波になっていれば、上下の約三分の二の所、即ち、中央より少し上の高さが全体の音程に感じられるということである。』とありますが、どんな『音楽心理学の研究』なのか、とても興味があります。
[33751]

Re: ヴィブラートのかけ方について その5

投稿日時:2007年06月01日 21:59
投稿者:catgut(ID:ECNHNyQ)
アマチュアチェロ弾きさま、その点は気になりますね。

このスレッドをご覧になっている方はすでにご存知の通り、音響学(音楽心理学)の圧倒的多数の実証的調査で「ヴィブラート範囲音程のほぼ中央」の音程が聞こえるという結果になっています。

また「ヴァイオリン学習者のためのヴィブラートの研究 そのⅢ」(1996年)
でも指摘されている通り、カール・フレッシュ「ヴァイオリン演奏の技法」では、「ヴィブラートは上下均等にかける」と書かれています。
20世紀前半の有名ソリストのほとんどは「上下均等にかける」と意識して、実際そのようにかけていたでしょう。もちろん音響分析ソフトで調べてもほぼ上下均等です。

また、これまで見て来た通り、ガラミアンが「ヴィブラートを上下均等にかける」という指導が主流であることを知らなかった可能性はほとんどありません。知っていたのに1948-1950年頃に最初の草稿が作られたと考えられる「ヴァイオリン奏法と指導の原理」では「下にかける」と書き、それにもかかわらず少なくともピーター・ウンジンがガラミアンに師事していた頃はガラミアンが「ヴィブラートを教えているのを聞いたことがありません」という不可思議な状況だったわけです。

高名な指導者が自分の著書に敢えて虚偽を記載するなどということはあるはずがないと思いますが、実に不可解です。
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