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ヴィブラートを確認できるフリーソフト | ヴァイオリン掲示板

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ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月10日 09:49
投稿者:catgut(ID:QXJBQTg)
ヴァイオリンのヴィブラートを確認できるフリーソフトがあり
ましたのでご紹介します。wav形式のデータを用意するだけで、
自動的にヴィブラートがどのようにかかっているか分析してく
れます。その名も"tartini" です。
Windows/Mac OSX/Linux用があります。

ttp://miracle.otago.ac.nz/postgrads/tartini/

なお、あまり深いフォルダや日本語のファイル名は認識しない
場合があるようです(Windowsの場合)。この場合はデータをc:
ドライブ直下に1バイト系のファイル名に変更して置くと
認識するようです(下部にファイル読み込み中のプログレス
バーが表示されます)。
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Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月10日 10:18
投稿者:catgut(ID:QXJBQTg)
tartiniはニュージーランドの名門オタゴ大学でプロジェクトを
組んで開発されているということです。プロジェクトメンバに
はドロシー・ディレイらに学んだ音楽学部のヴァイオリン講師
も参加しています。

tartiniの仕組みを解説した論文
ttp://www.music.mcgill.ca/~ich/research/misc/papers/cr1172.pdf

なお、周波数グラフにG,D,A,Eなどの基準線が表示されますが、
A=440Hz固定で表示しているようです。既存のCDなどでヴィブラート
のかかり方を確認する場合は、ソリストがピッチを高めにしている
可能性がある協奏曲などではなく、ピアノ伴奏曲で確認したほうが
良いと思われます。

実際に手持ちのCD(EMI 名ヴァイオリニストの歴史)から何曲か確認
したところ、大変興味深い結果となりました。ハイフェッツ、グリュ
ミオー、ナージャらはヴィブラートを常に基準音の上下にかけていました。
下にかけていると思われるのは、クライスラーとムター(ただしムターは
ベルリンフィルとの演奏)くらいでした。
お手持ちのCDの巨匠の演奏を確認してみてください。
CDからwav形式ファイルへの変換はiTuneでも可能です。
「編集」-「設定」-「詳細」-「インポート」で設定します。
[30663]

Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月10日 11:02
投稿者:catgut(ID:QXJBQTg)
こちらに「ヴァイオリンのヴィブラートに関する研究のまとめ」とも
言うべき詳細な論文がありました。従来のヴィブラートに関する研究を客
観的に紹介しています。ヴィブラートを「下にかけるか」「上下にかけるか」
の論争についてはP23-P28に記載されています。

ttp://etd.lib.fsu.edu/theses/available/etd-05082006-134732/unrestricted/RBM_manuscript.pdf

アメリカではガラミアンらが「ヴィブラートは基準音の下にかける」と主張
したため多数派ですが、教育者と演奏家(Pedagogues and artists)にも「基準音の上下にかける」と主張する人が少なからずいるそうです。
音響学者による実証研究(Empirical Research on Pitch Center)の大半は、ヴィブラートは上下にかける(ヴィブラート音の音程はヴィブラート幅の中間が聞こえる)という結果が出ているそうです。よく言われる「ヴィブラート音の上限の音程が聞こえる」という実証研究は現実には存在しないようです。
(ヴィブラートの上限の音程が聞こえるという論文はヴィブラートの下限の音程が聞こえるという別の論文を書いているFletcherによる1件のみ)
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Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月11日 09:11
投稿者:catgut(ID:GIQEWGg)
ちなみに「ヴィブラートを下にかける」という主張は、私が調べた範囲では戦後にしか見つかりませんでした。どなたか戦前から「ヴィブラートを下にかける」とした文献・伝聞等をご存知の方はいませんでしょうか?

逆に18世紀中旬に書かれて19世紀まで広く読まれたモーツァルトの父のヴァイオリン指導書や、1920年代までに書かれたカール・フレッシュの「ヴァイオリン演奏の技法」にはヴィブラートは基準音の上下にかけると受け取れる記述があります。

Leopold Mozart「A Treatise on the Fundamental Principles of Violin Playing」より
ttp://www.standingstones.com/stringvib.html
For as, when the remaining trembling sound of a struck string or bell is not pure and continues to sound not on one note only but sways first too high, then too low, just so by the movement of the hand forward and backward must you endeavour to imitate exactly the swaying of these intermediate tones.

弦や鐘の音の響きは一定の音程ではなく高い音になったり低い音になったりします。あなたは腕を前後に動かすことで、これらの中間の音の揺れを正確に真似するよう努力しなければなりません。

カール・フレッシュ「ヴァイオリン演奏の技法」日本語版上巻

人間の声のヴィブラートは、音の高さを決定する指の顫動によってヴァイオ
リンに移される。 それは聴覚には本来の音の高さから一定の間隔をおいて上または下へずれたものとして聞こえる(P42)。

(不快なヴィブラートは)ヴィブラートの運動が、正しい音の高さのまわり
に規則的に行われないで、ある一定の方向に特に多く行われる結果、指が実際には上のほうへまたは下の方へ動くということが判明する(P46)。
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Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月12日 03:03
投稿者:catgut(ID:QVVpBIM)
具体的なCDについてtartiniで確認した例を以下に示します。
ヴィブラートの回数・ヴィブラートの幅・ヴィブラートの中心音程などが
明確に分かります。

・基準ピッチが440Hzまたは442Hzのアメリカでの録音であること
・ピアノ伴奏であること
・デジタル録音であること
ことから、手持ちのナージャ・サレルノ・ソネンバーグ「白鳥」収録の
サン・サーンス「白鳥」を測定しました。

念のため実際に演奏されているヴァイオリンの基準ピッチがA=440HzないしA=442Hzであることをスピーカーの再生音をポータブルチューナで確認しました。

ピアノ伴奏:サンドラ・リヴァース
録音:1992年4月 American Academy and Institute of Arts and Letters デジタル録音

測定結果:
2分58秒のA4音(2分57秒8から2分58秒8までの1秒間)
A4音に対して-30から+37セントの範囲でヴィブラートを6回かけている。
(もしA=442Hzの場合は8セントずれるため-38から+29セントの範囲となる)

曲全体で音によって上下に多少の偏りがあるものの、一貫して基準音の上下にヴィブラートがかかっていました。
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Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月12日 10:37
投稿者:ぴよ太(ID:U0gwaRA)
感覚的な話で申し訳ないのですが,
「基準音の上下にかけるか,下にかけるか」という問題は,現実の音程の問題もさることながら,ヴァイオリニストのヴィブラート方向に対する感覚の問題のようにも思われます。
私の先生は,ヴィブラートは「ドアをノックするように,自分より遠くに(=下側に)かけるように」と教えてくれました。音程に関する指示は特にないのですが,人間の腕の筋肉をゴムのように考えて,下方向への動きさえ確保できれば,自動的に腕は戻ってくる,すなわちヴィブラートを「上下上下上下上下・・・」と考えるより,「下下下下・・・」と考えるほうが,労力が2分の1になるので,早く豊かなヴィブラートになると教わりました。私は,目から鱗でしたが,どうでしょうか?
[30698]

Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月12日 18:18
投稿者:catgut(ID:QVVpBIM)
ぴよ太さま、

ぴよ太さまの先生は大変良い先生ですね。
私もガラミアンらが「ヴィブラートを(基準音の)下にかける」と教えたのは、
「教育上の方便」の可能性が捨てきれないと思います。
つまり、物理的には(人間の耳に正しい音程が聞こえるようにするには)
ヴィブラートは基準音の上下にかける必要があるのですが「ヴィブラート
を下にかける」つもりでヴィブラートをかけたほうが彼らの生徒にとって
結果的に良い演奏になったのではないか、ということです。
[30700]

Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月12日 22:33
投稿者:Gotchi(ID:N0cFMHk)
学術的な事は分かりませんが、日本の演歌や民謡歌手は上方向のビブラートを掛けてる様に思います。
細川た○し氏や北島三○氏、八○亜紀氏など挙げたらキリがないかも・・・。
試しに下方向のビブラートで演歌を歌ってみましたが(笑)、なんか演歌じゃなくなっちゃいますね。
上方向や上下のビブラートってそれなりに存在価値がありそうです。

ある種の土臭さを感じるエモーショナルな演奏には、上下の幅の広いビブラートが掛かってるのかも知れません。純粋なクラシックではありえなさそうですが・・・。

ところで、みなさんビブラートの掛け始めは当然下方向からですよね?なんの疑問もなくそう思ってましたがこれってクラシックの決まりごとなんでしょうか?
[30719]

Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月13日 15:08
投稿者:セロ轢きのGosh(ID:ECgVaCg)
 自分で弾くときもですが、聴いてもビブラートは基準音から下に振っているように聞こえますが? そういう風に思い込んでいるだけかも・・・・。
 ただ、基準音の上下に(しかも必ずしも同じ幅ではなく)振っているとしたら、聴く人はどうやって基準音の音高を認識しているのでしょうか。

 話はズレますが、トリルは上に向かってかけるのにやっぱり基準音が聞こえます。 人間の脳というやつはどうも不思議ですね。
[30723]

Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月13日 19:17
投稿者:catgut(ID:QVkIZAI)
セロ轢きのGoshさま、

著名なチェリストのゲルハルト・マンテルによれば、ヴィブラートの動きが対称でない場合、その分中間よりずれて聞こえるということです。

ttp://www.cello.org/Newsletter/Articles/mantel.htm
If the vibrato motion is asymmetrical, the ear still calculates the average pitch of all vibrations and moves the perceived tone a little up or down from the exact middle position of the finger.

音響学者もこのような説を述べているので、音響学者の説をマンテルが受け売りしているのかもしれません。人間の耳は不思議ですね。
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