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ストラディヴァリの板の厚みについて | ヴァイオリン掲示板

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雑談・その他 30 Comments
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ストラディヴァリの板の厚みについて

投稿日時:2012年07月30日 07:49
投稿者:サブリナ(ID:NCkGaZU)
やはりスレ違いぽいので、改めて立てさせていただきました。
以下、転載です。


板の厚みが薄い厚いの話について、よく聞く話といくつかの資料では、ストラディヴァリの板は現代の製作者が基準と考えている厚みよりも薄いそうですが、現代の新作で同じような厚みにしてはいけない理由は何でしょうか?
人によっては、ストラディヴァリはもともと板が厚かったのを、後世の職人が修理の際に削ったので薄くなったという事を言いますが、何故薄く削ったのでしょう?
また、強度についても、経年で板が丈夫になったので削る事ができた という話を聞いた事もありますが、では、どのタイミングで丈夫になったと、何をもって判断して削ったのでしょう?

もしご存知の方がいらっしゃったら教えていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。
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【ご参考】
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Re: ストラディヴァリの板の厚みについて

投稿日時:2012年08月03日 00:07
投稿者:catgut(ID:MxhxmTY)
有名ですがヒノキの経年変化のデータです。

ttp://habita-kakogawa.com/house200.html
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Re: ストラディヴァリの板の厚みについて

投稿日時:2012年08月03日 08:30
投稿者:たく(ID:MZmFRSY)
いま私が認識している範囲ですが、木材の含水率が概ね15%に落ち着いた段階(切りだしてから、10年・20年単位)での強度と、300年経た木材の強度は、驚くほど違うことはないのではないかと思っています。

また強度といっても、「曲げモーメント」「せん断力」「圧縮力」「引っ張り力」に分類してのべないと明確ではありません。細かく言いますと、「曲げ引張」「曲げ圧縮」という概念もあります。さらに、物体は使用すると疲労し「疲労破壊」が生じます。強度が単に強くても、過酷な条件で荷重や振動をあたえると、破壊の速度がとても速くなります。また、「脆性」ということも念頭に入れておかないといけません。

どのような荷重に対して、こうだから「300年前の楽器は薄く製作できる」という論法でないと、なかなか理解することができません。現実、ストラドやガルネリの楽器を壊して、強度試験をした研究成果はあるのでしょうか。また、比較をしないといけないので、300年前の強度試験結果はあるのでしょうか。つまり誰も明確なデータがないまま議論をするようなこのになってしまいます。

セルロース化で強度が増す現象があるそうですが、その変化のデータが300年間分あるのでしょうか。古ければ古いほど益々セルロース化するのでしょうか。
ひっとしたら、結合水は30%の段階から15%(均衡含水率)の段階になれば概ね完了するのではないのでしょうか。このあたりを明確にしておかないと、議論は進みません。

私が所有している含水率(横軸)と強度(立軸)のグラフでは、自由水が抜けるまで(30%の含水率)は、強度が一定です。それから細胞壁の結合水が抜けて、含水率0%(人工的に処理して)まではほぼ直線で強度が向上し、含水率0%では、曲げ強度では、1100kg/cm2、含水率30%で430kg/cm2となっています。また、そうしますと、(1100-430)/(30-0)=22.3kg/cm2/%(含水率) となります。これは、含水率が1%変化すると曲げ強度は、22.3kg/m2 変化するということです。
また、誤差はありますが、グラフから読み取ると、均衡含水率15%の時の曲げ強度は概ね630kg/m2になっています。含水率30%の強度を基準に計算しますと、430+(30-15)×22.3≒765kg/m2になりますが、完全な直線でないので、グラフの読み取りでは強度630kg/m2程度です。

そうしますと、例えば2%程度含水率が少なくなって13%の場合、630+2×22.3=674.66kg/m2 となります。その強度比は、曲げ強度のみ判断すると、674.6/630=1.07倍です。

どうも、ビックリするほど強度が向上するようには、私には思えないのですが。

間違った考えかもしれませんので、詳しい方がいらっしゃったらお教えください。

ひっとしてら、板を薄くしても、組合わせたあと(表板・裏板・横板・ネックを)バランスがとれるような細工を施しているのではないかな??

板を現在の製作家より薄くしているといっても、厚い部分もあるので、このことでしっかり補強されているのではないのかな??

どの部分を振動させ、どの部分を固定させ、豊かな響きを得るように強度的にもバランスのとれた楽器ということではないのかな??

板厚が何ミリだからでなく、アーチの形状・板厚の分布・組み合わせたあとの処理など、色々な技術があるように思います。

てなことを考えています。
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Re: ストラディヴァリの板の厚みについて

投稿日時:2012年08月03日 11:56
投稿者:catgut(ID:MxhxmTY)
小原二郎氏はこう書かれています。

ttp://www.wood.co.jp/kohara/nihonjintokinobunka/6-9.htm
 木材が古くなるにつれて次第に弱くなっていくことは、以上の説明で 理解できる。だがいったん強くなるのはなぜであろうか。それは崩壊と 同時に結晶化がおこるからである。ただし結晶化はあるところで飽和状 態になって、それ以上は増加しない。その様子は図4(一七三ぺージ) に示す通りである。木の細胞膜は長い糸状のセルロース分子が並んでで きたものであるが、部分的に結晶領域と非結晶領域とに分かれている。 古くなると結晶領域が増大し、それにともなって材質は硬くなっていく。 一方でセルロースの糸は少しずつ切れていく。つまり木は古くなるにつ れて一方で強くなる因子が作用するが、他方では弱くなる因子も作用す る。二つの因子の相互作用によって強さはいったん上昇したのちに下降 する、というように考えれば分かりやすい。
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Re: ストラディヴァリの板の厚みについて

投稿日時:2012年08月03日 17:08
投稿者:サブリナ(ID:NCkGaZU)
つまり、ストラディヴァリが製作した当時は楽器にかかるテンションが低かったので薄くても大丈夫だったものが、だんだんとテンションが上がっていくに合わせて、材料自体がセルロースの結晶化によって強度が上がったため、バロック当時の厚みでも大丈夫だった、という話には、客観的データの裏付けがない、という事でしょうか。

そもそもが、材料の特性とアーチによって、板単体の強度(強度強度と書いていますけど、どうも的を射ない言葉だなと感じてはいますが)は決まる話だと思うのですけれど、どれくらいが薄くて、どれくらいが弱いのか、その基準はやはり、製作者の勘みたいなものなんでしょうか・・・。

木材が古くなるにつれて弱くなる件に関しては、これもピークがいつなのかという部分で樹種によって違いがあると思いますし、一概には言えないですよね。
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Re: ストラディヴァリの板の厚みについて

投稿日時:2012年08月03日 20:40
投稿者:Xin(ID:IGGGaBI)
弦の張力の影響を大きくうける表板の部位は主に駒の直下です。
駒は2本足で表板に立っていて高音側の圧力は魂柱で受けます。
低音側の圧力はバスバーで受けます。
バロックバイオリンからの改造で、ネックとバスパーの交換されています。
魂柱の当たるところはパッチを当てるので対応できます。
一番大きな応力が加わる駒の直下が補強されていれば表板の強度アップは考慮しなくてもいいのではないでしょうか。
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Re: ストラディヴァリの板の厚みについて

投稿日時:2012年08月03日 21:26
投稿者:catgut(ID:MxhxmTY)
音の影響について定量的なことはなんとも言えませんが、経年数十年程度のスプルースと200年程度以上のスプルースが物理的に違うことは間違いないと思います。

300年にもなると木材自体が痩せたり、部分的に削れたり、修復職人によって削られたりしている可能性があるので、オリジナルの厚みを推定するのは結構難しいのではないでしょうか。

確かヒルの本にストラディヴァリの作品で表板がどこもすべて2mmというプレス楽器のようなものが載っていたと思います。これも音はいいのでしょうね。
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Re: ストラディヴァリの板の厚みについて

投稿日時:2012年08月03日 22:38
投稿者:Xin(ID:IGGGaBI)
決められた目標厚みまで削るのではなく、板をタッピングしながらその音程がどうなのかを聞き取りながら削っていくのではないかとおもいます。

つまり、木材の強度が重要なのではなく、弾性係数や比重が重要なのではないかと考えます。

硬い材料、比重が重い材料では仕上がり厚さが薄くなります。

タッピングトーンをM2とM5の二つのモードで目標音程にすれば板厚分布も決定できます。
ヨーロッパスプルースでタッピングトーンをストラドを目標に削ると、ほぼ平均的なストラディバリウスの厚さ(2.5mm)と重さになります。
アラスカスプルースでは目標音程まで削ると、薄すぎました。
板厚を厚くすると(3.5mm)かなり弾きにくくなります。
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Re: ストラディヴァリの板の厚みについて

投稿日時:2012年08月04日 20:29
投稿者:サブリナ(ID:NCkGaZU)
タップトーンで厚みを決める場合、その目標とする値が製作者によって違うという事でしょうか。参考に考えているのはおそらくハッチンスの研究の成果だと思うのですが、あれもオールドの名器を参考にしたのではなかったでしょうか?
名器のデータを参考に、経年変化とバロックorモダンの差を考慮に入れた上で、目安となる値を決めているといったところでしょうか・・・。
このへんはやっぱり勘・・・ですかね。
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Re: ストラディヴァリの板の厚みについて

投稿日時:2012年08月09日 11:53
投稿者:Xin(ID:IGGGaBI)
表板の板厚をタッピングトーンで調整する方法は多くの製作者が採用しているようですが、この方法には問題点があります。
接着前のタッピングトーンが同じ板でも、接着後には同じでない場合があります。

接着されていない板は接着されて箱になっている板と振動の条件がまったく違います。
 接着前; 板の縁が自由に振動できる。厚いとタップ音程が低い
 接着後; 板の縁が振動の節になる、厚いと音程が高い。
接着後の箱にしてからの大雑把な発音の想定はできますが、想定に対して差が大きくなるのは周縁の厚さ(拘束条件)です。
バイオリンの表板で一番薄い部分は板の縁の象嵌(パーフリング)の溝の底です。
この部分は側板と表板の接着代(ライニング)の内周とぎりぎり一致する位置になります(制作方法によって異なる)。
そのわりには象嵌は単なる意匠としかみられていないことがあります。
表板を振動版と見たときに、周辺のパーフリング部は
・溝と側板の位置関係(箱にしてから溝加工、板単体で溝加工によって位置のばらつきに差がでる)
・溝の幅
・溝の底の残り深さ、底のコーナーR(柔軟性、剛性に影響)
・パーフリングの材質(硬い黒檀、柔らかい紙;振動のしやすさ、制振)
・パーフリングと溝の勘合強さ(拘束条件)
・膠の塗布条件(位置によって、木口か板目か正目か)
は音に関係してきます。
この象嵌部分は楽器を観察すると、製作者によって工夫がみられます。ギターなどでは箱にしてから表面を削る製作者もいます。バイオリンでも箱にしてから板厚を測定する測定器も販売されています。

パーフリングの加工工程は楽器の対称性、外観の出来栄えに影響します。
ストラディバリウスがパーフリングの溝を加工した製作工程の順番は推定されているようです。
スピーカーの振動版などは生産数量や設計数が多く、周辺のエッジは構造、材質、処理について多くの研究がなされていますが、バイオリンについての研究はどうなのでしょうか。

catgutは研究報告書など、ご存知でしょうか。
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Re: ストラディヴァリの板の厚みについて

投稿日時:2012年08月14日 00:26
投稿者:catgut(ID:EYdhQZE)
神社などに使われていた古い木を使ったこんな実験がありました。300年も経った木材の物理特性は数十年程度のものとは結構違うようです。

ttp://r-cube.ritsumei.ac.jp/bitstream/10367/2178/1/dmuch2_20.pdf
伝統木造建築物に用いられた古材の強度劣化および劣化非破壊検査法

他の実験結果の紹介:

また、255 年経過したケヤキの構造材は、新材に比べヤング係数が約15~20%程度低下するが、約300年経過したアカマツのヤング係数は新材に比べ上昇しているという実験結果もある2)~4)。

この実験での結果:

1) 縦圧縮試験の結果、縦圧縮強さは、木材工業ハンドブックの値と比較して、ケヤキ古材の値は29%、ヒノキ古材の値は28%大きい値であった。
2) 曲げ試験の結果、曲げヤング係数、曲げ強さともに、ハンドブックの値と比較して、ケヤキ古材の値は小さくなったが、ヒノキ古材の値は変わらなかった。
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