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ヴァイオリンの塗装について その2 | ヴァイオリン掲示板

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楽器・付属品 151 Comments
[36739]

ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月27日 19:00
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
前スレッドが長くなりましたので新しいスレッドを作成しました。

私はヴァイオリンの塗装は保存と美観のために存在し、基本的
に音を良くすることはないと考えています。20世紀後半以降の
欧米のアカデミックな文献の大半はこの立場を取り、欧米のプ
ロの製作者は音を良くするという立場と音を良くしないという
立場に分かれているのが現状です。

以下のコメントで私がニスが音を良くすることはないと考える理由
を説明します。
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1 / 16 ページ [ 151コメント ]
[36740]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月27日 19:27
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
まず、数人混乱されている方がいるようなので、便宜的に「音色」と「音質」
を以下のように定義します。

「音色の違い」は楽器固有の音(キャラクタ)。
「音質の違い」は楽器固有の音(キャラクタ)は全く変らず質だけの違い。
同じCDの演奏を良いスピーカーと100円ショップのスピーカーで聞く
イメージ。

「ヴァイオリンの音色は人間の好みによって左右されるので客観的に良い
音色を定義することはできない」という考え方は基本的に正しいと思います。しかし「ニスによる音の変化」はこの考え方とはまったく関係ありません。なぜならニスによる音の変化は「音色」の違いではなく「音質の違い」だからです。

・ニスはヴァイオリンの音のキャラクタを変えない
ニスを塗るとヴァイオリンにどのような音の変化が起きるかを擬似的に試す
簡単な方法があります。右手でヴァイオリンを挟んで、表板の指板と駒の中間あたりを指で押さえ、開放弦を弾いてみてください。強く押さえて弾けばニスで表板の振動を強く阻害する、ニスを厚く塗った状態に相当します。
少しずつ表板を押さえる力を変えて弾いてみてください。
 
ニスによる音の変化とはこういうことです。決してその楽器が本来持つ音のキャラクタ(音色)を変えることはありません。世の中に表板を押さえた音のほうが「良い音」と考える人がどれだけいるのでしょうか?

「ニスで音のキャラクタが変わる」という思い込みこそニス神話に囚われて
いるのです。 

・少なくない数のプロの製作家が「ニスが音色を良くする」と認めていない。
2挺のヴァイオリンをプロの製作家自身が弾き比べて音色の違いが区別できないということはまったくあり得ないことです。ところが白木のヴァイオリンにニスを塗った場合、音の改善を認めないプロの製作家が少なからず存在することは明らかです。
つまり白木とニスを塗った場合の「音の差」は「少なくない数のプロの製作家でも感知できない程度にしか音色の差がない(無論横で聞いて分かるわけがない)」か、「明らかに劣って聞こえる」かのどちらかということです。
[36741]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月27日 19:40
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
前のスレッドで言及されている論文は以下のことだと思います。
ttp://ci.nii.ac.jp/naid/110003106070/
楽器響板用木材の音響特性に及ぼすニス塗装の影響
小野晃明

この論文をベースに「科学朝日」1994年2月号に以下の記事が掲載
されているようです。

突き止めた!楽器とニスの「秘密の関係」 木目の方向とヤング率がカギ

この記事にニスの音響的正当性を求めたい一部の方が飛びついたの
でしょう。しかし、上記urlの抄録の最後には以下のように書いてあります。

The varnishing is beneficial acoustically in the former but harmful in the latter regardless of varnish thickness.
ニスは前者の場合は音響的に効果があるが、後者の場合はニスの厚みにかかわらず害がある。

ここで「前者」とはヤング率の低い楽器用として劣ったシトカスプルースの
ことで、「後者」とはヤング率の高い楽器用として優れたシトカスプルースのことです(ニスを塗ると内部摩擦が増えてかえって高周波を弱めてしまう)。

立派な理論的裏付けがあるかと思えば、実態はこんなものです。
[36746]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月27日 23:24
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
[36740]
[36740]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月27日 19:27
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
まず、数人混乱されている方がいるようなので、便宜的に「音色」と「音質」
を以下のように定義します。

「音色の違い」は楽器固有の音(キャラクタ)。
「音質の違い」は楽器固有の音(キャラクタ)は全く変らず質だけの違い。
同じCDの演奏を良いスピーカーと100円ショップのスピーカーで聞く
イメージ。

「ヴァイオリンの音色は人間の好みによって左右されるので客観的に良い
音色を定義することはできない」という考え方は基本的に正しいと思います。しかし「ニスによる音の変化」はこの考え方とはまったく関係ありません。なぜならニスによる音の変化は「音色」の違いではなく「音質の違い」だからです。

・ニスはヴァイオリンの音のキャラクタを変えない
ニスを塗るとヴァイオリンにどのような音の変化が起きるかを擬似的に試す
簡単な方法があります。右手でヴァイオリンを挟んで、表板の指板と駒の中間あたりを指で押さえ、開放弦を弾いてみてください。強く押さえて弾けばニスで表板の振動を強く阻害する、ニスを厚く塗った状態に相当します。
少しずつ表板を押さえる力を変えて弾いてみてください。
 
ニスによる音の変化とはこういうことです。決してその楽器が本来持つ音のキャラクタ(音色)を変えることはありません。世の中に表板を押さえた音のほうが「良い音」と考える人がどれだけいるのでしょうか?

「ニスで音のキャラクタが変わる」という思い込みこそニス神話に囚われて
いるのです。 

・少なくない数のプロの製作家が「ニスが音色を良くする」と認めていない。
2挺のヴァイオリンをプロの製作家自身が弾き比べて音色の違いが区別できないということはまったくあり得ないことです。ところが白木のヴァイオリンにニスを塗った場合、音の改善を認めないプロの製作家が少なからず存在することは明らかです。
つまり白木とニスを塗った場合の「音の差」は「少なくない数のプロの製作家でも感知できない程度にしか音色の差がない(無論横で聞いて分かるわけがない)」か、「明らかに劣って聞こえる」かのどちらかということです。
の「右手」は「左手」の間違いです。
また前スレッドの[36617]
[36617]

Re: ヴァイオリンの塗装について

投稿日時:2008年02月18日 20:28
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
参考までに、18世紀半ばに書かれたレオポルド・モーツァルトの「バイオリン奏法」には楽器についてもいろいろと書かれています。しかし、モーツァルトはニスについてはその外見で価値を判断する人を批判していたり、ニスの丈夫さについては言及していますがニスが音を改善するといった話は見当たりません。

以下のtextで全文が読めます。

ttp://www.archive.org/details/treatiseonthefun007087mbp

varnishで検索すると2ヶ所ヒットします。

(He) will also inevitably judge a violin by its polish and the
colour of its varnish, without examining carefully its principal parts.
(トボケた人は)慎重に重要なパーツを調べないで、ヴァイオリンの輝きと
ニスの色でヴァイオリンの良し悪しを判断します。

How the pores of the wood can best be closed and whether with
this object in view the inside should not be lightly varnished; and
what sort of varnish would be the most serviceable ?
(どのように目止めするのが良いか少なくとも内部には目止めすべきで
ないでないと続けて)どのような種類のニスが最も丈夫でしょうか?

whether with this object in view the inside should not be lightly varnished;
は「目止めすべきでない」と書いてしまいましたが、読み直すと
「目止めすべきかどうか」でした。失礼しました。


前スレッドで説明した通りですが「ニスが積極的に音色を改善しない」と
考えられる根拠は数多くあります。

・ストラディヴァリ自身がニスで音色を改善しようとした形跡が全くない
保存にも美観にも影響がない指板の裏の表板部分のニスの手を抜いて
いる。ストラディヴァリらクレモナの名工は基本的に調合済みのニスを買っ
て来て塗ったと推定されている。当時の記録でもニスで音色を良くすると
いう考え方はまったくなく、1750年代に書かれたレオポルド・モーツァルト
の「ヴァイオリン奏法」でもニスの丈夫さについては書かれているが音との
関係は全く書かれていない。

・現在実際に高い評価を得ているストラディヴァリ(楽器)のニスはストラ
ディヴァリ自身が製作した時とは全く違った状態になっている。
大半のオリジナルニスが剥げてニスが薄くなったり修理技術者の手で
カバーニスがかけられている。もし現在残っている下地が「音色の良さ」の
理由だとすると、ストラディヴァリ自身が製作した時点では余計な「上塗
りニス」が存在して最高の音色にしなかったということになる。

・現在のプロ製作者の多くが製作の参考としているヴァイオリン製作者・
音響学者のハッチンスの論文でもニスは音色を改善しないと判断している。
[36748]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月28日 08:02
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
前スレッドの[36695]
[36695]

Re: ヴァイオリンの塗装について

投稿日時:2008年02月25日 01:27
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
通りすがりさま、

通りすがりさまの定義を楽しみにしていましたが、音響学者は白木の
楽器が「良い音」であろうと「悪い音」であろうと、塗装が音質・音量を
改善しない(そのままかマイナス)と主張しているのですから、この場合
「良い音」の定義など必要ないのです。
例えばヴァイオリンにラードを塗る場合、この影響を考える際にいちいち
ヴァイオリンの「良い音」の定義など必要でしょうか?

もう1点、時々誤解されていることがある音色と音量の関係について
コメントしておきます。
弦楽器の場合、音量が変化すると音色も変化します。つまりE線開放弦
をppで弾いた場合とffで弾いた場合、周波数のスペクトルは変化します。
同じ音色でピアノからフォルテまで変化するわけではありません。

このためニスを塗って振動が抑制された楽器の周波数のスペクトルが
白木の場合と少し変わっていても、それは白木の状態と振動特性が
変わったからだとは限りません。白木でも同程度の振動であれば同様
なスペクトルになるかもしれないからです。

かえって混乱するかもしれませんが、塗装前と塗装後では調整・測定条
件が異なる可能性があるという事実を踏まえた上で、以下のブログで公
開されている塗装後と塗装前の音階の音源を聞いてみると面白いと思います。

ttp://adultviolin.blog55.fc2.com/blog-entry-94.html
で紹介した実際に白木のヴァイオリンとニスを塗っ
たヴァイオリンを聞き比べた方も、ブログでこう書かれています。「不思議な
ことに、周波数特性がこんなに違うのに、音のキャラクターとしては良く似
ているように聴こえる。」

私自身も実際に白木のヴァイオリンを弾いて、まさに普通のヴァイオリン
そのものの音であることを確認していなければ「白木でもニスを塗った
ヴァイオリンと音のキャラクタが変わらない」ということを信じられなかった
と思います。こちらで誤解されている方がいらっしゃるのは無理はありません。

厚いニスによって手でヴァイオリンの表板を押えたような音になるということも信じにくかもしれませんが、経験者は以下のように書いています。

ttp://www.chaconne.info/03_kanazawa/index_20071219.htm
楽器を叩いてみると塗られたままの箇所と剥がした箇所とでは音程、音質
が全く違ってきます。塗られたままの所は石を叩いているような硬質な音がし、剥がした所は軽やかな響きのある音がします。また、剥がしたニス自体を触ってみてもやはり硬さを感じ、砂のようなじゃりじゃりした感触です。このような作業をしていくと、いかにカバーニスと呼ばれる保護という名目で塗られたニスが楽器の音に悪影響を与えているかをひしひしと感じます。
[36753]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月28日 14:06
投稿者:一奏者(ID:OBSCWHQ)
catgutさま

論文の紹介ありがとうございます。私が読んだのは、まさにこの小野氏の論文です。
思い出せなかったのですっきりしました。


論文の結論としては、ヤング率の低い板にはニスが音響的に有利な面もあるということですね。

それなら、板厚をニスの分だけあえて薄くして、そこをニスでコーティングしてやれば、同じ厚みの白木の楽器よりヤング率の高い、よく鳴る楽器になるように思うのですが、いかがでしょうか。
(もちろんそこそこニスのヤング率の高くなければ効果はないでしょうが)

そこまで分析できているかどうかはともかく、経験的にそのような微調整で音作りをしている職人さんもいるのではないかと思います。


とここまで書いてから、佐々木さんのページで似たような主張を紹介されていることに気付きました・・・
私が書いても今更ですよね。
[36754]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月28日 14:29
投稿者:(ID:EVVGc2g)
前スレから興味深く読ませて頂いていました。
catgatさん、ちょっと教えてください。

[36748]
[36748]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月28日 08:02
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
前スレッドの[36695]
[36695]

Re: ヴァイオリンの塗装について

投稿日時:2008年02月25日 01:27
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
通りすがりさま、

通りすがりさまの定義を楽しみにしていましたが、音響学者は白木の
楽器が「良い音」であろうと「悪い音」であろうと、塗装が音質・音量を
改善しない(そのままかマイナス)と主張しているのですから、この場合
「良い音」の定義など必要ないのです。
例えばヴァイオリンにラードを塗る場合、この影響を考える際にいちいち
ヴァイオリンの「良い音」の定義など必要でしょうか?

もう1点、時々誤解されていることがある音色と音量の関係について
コメントしておきます。
弦楽器の場合、音量が変化すると音色も変化します。つまりE線開放弦
をppで弾いた場合とffで弾いた場合、周波数のスペクトルは変化します。
同じ音色でピアノからフォルテまで変化するわけではありません。

このためニスを塗って振動が抑制された楽器の周波数のスペクトルが
白木の場合と少し変わっていても、それは白木の状態と振動特性が
変わったからだとは限りません。白木でも同程度の振動であれば同様
なスペクトルになるかもしれないからです。

かえって混乱するかもしれませんが、塗装前と塗装後では調整・測定条
件が異なる可能性があるという事実を踏まえた上で、以下のブログで公
開されている塗装後と塗装前の音階の音源を聞いてみると面白いと思います。

ttp://adultviolin.blog55.fc2.com/blog-entry-94.html
で紹介した実際に白木のヴァイオリンとニスを塗っ
たヴァイオリンを聞き比べた方も、ブログでこう書かれています。「不思議な
ことに、周波数特性がこんなに違うのに、音のキャラクターとしては良く似
ているように聴こえる。」

私自身も実際に白木のヴァイオリンを弾いて、まさに普通のヴァイオリン
そのものの音であることを確認していなければ「白木でもニスを塗った
ヴァイオリンと音のキャラクタが変わらない」ということを信じられなかった
と思います。こちらで誤解されている方がいらっしゃるのは無理はありません。

厚いニスによって手でヴァイオリンの表板を押えたような音になるということも信じにくかもしれませんが、経験者は以下のように書いています。

ttp://www.chaconne.info/03_kanazawa/index_20071219.htm
楽器を叩いてみると塗られたままの箇所と剥がした箇所とでは音程、音質
が全く違ってきます。塗られたままの所は石を叩いているような硬質な音がし、剥がした所は軽やかな響きのある音がします。また、剥がしたニス自体を触ってみてもやはり硬さを感じ、砂のようなじゃりじゃりした感触です。このような作業をしていくと、いかにカバーニスと呼ばれる保護という名目で塗られたニスが楽器の音に悪影響を与えているかをひしひしと感じます。
で書かれている「前スレッドの[36695]
[36695]

Re: ヴァイオリンの塗装について

投稿日時:2008年02月25日 01:27
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
通りすがりさま、

通りすがりさまの定義を楽しみにしていましたが、音響学者は白木の
楽器が「良い音」であろうと「悪い音」であろうと、塗装が音質・音量を
改善しない(そのままかマイナス)と主張しているのですから、この場合
「良い音」の定義など必要ないのです。
例えばヴァイオリンにラードを塗る場合、この影響を考える際にいちいち
ヴァイオリンの「良い音」の定義など必要でしょうか?

もう1点、時々誤解されていることがある音色と音量の関係について
コメントしておきます。
弦楽器の場合、音量が変化すると音色も変化します。つまりE線開放弦
をppで弾いた場合とffで弾いた場合、周波数のスペクトルは変化します。
同じ音色でピアノからフォルテまで変化するわけではありません。

このためニスを塗って振動が抑制された楽器の周波数のスペクトルが
白木の場合と少し変わっていても、それは白木の状態と振動特性が
変わったからだとは限りません。白木でも同程度の振動であれば同様
なスペクトルになるかもしれないからです。

かえって混乱するかもしれませんが、塗装前と塗装後では調整・測定条
件が異なる可能性があるという事実を踏まえた上で、以下のブログで公
開されている塗装後と塗装前の音階の音源を聞いてみると面白いと思います。

ttp://adultviolin.blog55.fc2.com/blog-entry-94.html
で紹介した実際に白木のヴァイオリンとニスを塗ったヴァイオリンを聞き比べた方」は、同じ楽器(個体)で、白木の時とニスを塗った後では「音のキャラクターとしては良く似ているように聴こえる。」と書いているんですよね。

catgatさんの[36740]
[36740]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月27日 19:27
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
まず、数人混乱されている方がいるようなので、便宜的に「音色」と「音質」
を以下のように定義します。

「音色の違い」は楽器固有の音(キャラクタ)。
「音質の違い」は楽器固有の音(キャラクタ)は全く変らず質だけの違い。
同じCDの演奏を良いスピーカーと100円ショップのスピーカーで聞く
イメージ。

「ヴァイオリンの音色は人間の好みによって左右されるので客観的に良い
音色を定義することはできない」という考え方は基本的に正しいと思います。しかし「ニスによる音の変化」はこの考え方とはまったく関係ありません。なぜならニスによる音の変化は「音色」の違いではなく「音質の違い」だからです。

・ニスはヴァイオリンの音のキャラクタを変えない
ニスを塗るとヴァイオリンにどのような音の変化が起きるかを擬似的に試す
簡単な方法があります。右手でヴァイオリンを挟んで、表板の指板と駒の中間あたりを指で押さえ、開放弦を弾いてみてください。強く押さえて弾けばニスで表板の振動を強く阻害する、ニスを厚く塗った状態に相当します。
少しずつ表板を押さえる力を変えて弾いてみてください。
 
ニスによる音の変化とはこういうことです。決してその楽器が本来持つ音のキャラクタ(音色)を変えることはありません。世の中に表板を押さえた音のほうが「良い音」と考える人がどれだけいるのでしょうか?

「ニスで音のキャラクタが変わる」という思い込みこそニス神話に囚われて
いるのです。 

・少なくない数のプロの製作家が「ニスが音色を良くする」と認めていない。
2挺のヴァイオリンをプロの製作家自身が弾き比べて音色の違いが区別できないということはまったくあり得ないことです。ところが白木のヴァイオリンにニスを塗った場合、音の改善を認めないプロの製作家が少なからず存在することは明らかです。
つまり白木とニスを塗った場合の「音の差」は「少なくない数のプロの製作家でも感知できない程度にしか音色の差がない(無論横で聞いて分かるわけがない)」か、「明らかに劣って聞こえる」かのどちらかということです。
にある
・ニスはヴァイオリンの音のキャラクタを変えない
というのも、同じ楽器(個体)の音としてキャラクタが変化しないということを言っているんですよね。

つまり、上の2つの記載では、ヴァイオリンという同じ種類の楽器でも個体によって音のキャラクタが異なるという前提の上で、その個体の持つ音のキャラクタということを対象にしているんですよね。

でも、[36748]
[36748]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月28日 08:02
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
前スレッドの[36695]
[36695]

Re: ヴァイオリンの塗装について

投稿日時:2008年02月25日 01:27
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
通りすがりさま、

通りすがりさまの定義を楽しみにしていましたが、音響学者は白木の
楽器が「良い音」であろうと「悪い音」であろうと、塗装が音質・音量を
改善しない(そのままかマイナス)と主張しているのですから、この場合
「良い音」の定義など必要ないのです。
例えばヴァイオリンにラードを塗る場合、この影響を考える際にいちいち
ヴァイオリンの「良い音」の定義など必要でしょうか?

もう1点、時々誤解されていることがある音色と音量の関係について
コメントしておきます。
弦楽器の場合、音量が変化すると音色も変化します。つまりE線開放弦
をppで弾いた場合とffで弾いた場合、周波数のスペクトルは変化します。
同じ音色でピアノからフォルテまで変化するわけではありません。

このためニスを塗って振動が抑制された楽器の周波数のスペクトルが
白木の場合と少し変わっていても、それは白木の状態と振動特性が
変わったからだとは限りません。白木でも同程度の振動であれば同様
なスペクトルになるかもしれないからです。

かえって混乱するかもしれませんが、塗装前と塗装後では調整・測定条
件が異なる可能性があるという事実を踏まえた上で、以下のブログで公
開されている塗装後と塗装前の音階の音源を聞いてみると面白いと思います。

ttp://adultviolin.blog55.fc2.com/blog-entry-94.html
で紹介した実際に白木のヴァイオリンとニスを塗っ
たヴァイオリンを聞き比べた方も、ブログでこう書かれています。「不思議な
ことに、周波数特性がこんなに違うのに、音のキャラクターとしては良く似
ているように聴こえる。」

私自身も実際に白木のヴァイオリンを弾いて、まさに普通のヴァイオリン
そのものの音であることを確認していなければ「白木でもニスを塗った
ヴァイオリンと音のキャラクタが変わらない」ということを信じられなかった
と思います。こちらで誤解されている方がいらっしゃるのは無理はありません。

厚いニスによって手でヴァイオリンの表板を押えたような音になるということも信じにくかもしれませんが、経験者は以下のように書いています。

ttp://www.chaconne.info/03_kanazawa/index_20071219.htm
楽器を叩いてみると塗られたままの箇所と剥がした箇所とでは音程、音質
が全く違ってきます。塗られたままの所は石を叩いているような硬質な音がし、剥がした所は軽やかな響きのある音がします。また、剥がしたニス自体を触ってみてもやはり硬さを感じ、砂のようなじゃりじゃりした感触です。このような作業をしていくと、いかにカバーニスと呼ばれる保護という名目で塗られたニスが楽器の音に悪影響を与えているかをひしひしと感じます。

「私自身も実際に白木のヴァイオリンを弾いて、まさに普通のヴァイオリンそのものの音であることを確認していなければ「白木でもニスを塗ったヴァイオリンと音のキャラクタが変わらない」ということを信じられなかったと思います。」
という発言の中の「音のキャラクタ」は、「普通のヴァイオリンそのものの音」、つまりヴァイオリンっぽい(あるいはヴァイオリンらしい)音という程度の意味に読めます。
でなければ、「白木のヴァイオリンを弾いて、まさに普通のヴァイオリンそのものの音である」からといって「音のキャラクタが変わらない」という結論にはならないと思います。
だって、「音のキャラクタ」が上の2つの記載と同じ意味で使われているのだとしたら、ある個体の白木のヴァイオリンと別の個体のニスが塗られたヴァイオリンとを比べても、それらの楽器では「音のキャラクタ」が異なっているのが当然なので、ニスを塗ることで「音のキャラクタ」が変わるかどうかなんて分かりませんよね。

すみません、本スレに移って、catgatさんが仰りたかったことはそういうことだったのかと納得しかけたところへ、[36748]
[36748]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月28日 08:02
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
前スレッドの[36695]
[36695]

Re: ヴァイオリンの塗装について

投稿日時:2008年02月25日 01:27
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
通りすがりさま、

通りすがりさまの定義を楽しみにしていましたが、音響学者は白木の
楽器が「良い音」であろうと「悪い音」であろうと、塗装が音質・音量を
改善しない(そのままかマイナス)と主張しているのですから、この場合
「良い音」の定義など必要ないのです。
例えばヴァイオリンにラードを塗る場合、この影響を考える際にいちいち
ヴァイオリンの「良い音」の定義など必要でしょうか?

もう1点、時々誤解されていることがある音色と音量の関係について
コメントしておきます。
弦楽器の場合、音量が変化すると音色も変化します。つまりE線開放弦
をppで弾いた場合とffで弾いた場合、周波数のスペクトルは変化します。
同じ音色でピアノからフォルテまで変化するわけではありません。

このためニスを塗って振動が抑制された楽器の周波数のスペクトルが
白木の場合と少し変わっていても、それは白木の状態と振動特性が
変わったからだとは限りません。白木でも同程度の振動であれば同様
なスペクトルになるかもしれないからです。

かえって混乱するかもしれませんが、塗装前と塗装後では調整・測定条
件が異なる可能性があるという事実を踏まえた上で、以下のブログで公
開されている塗装後と塗装前の音階の音源を聞いてみると面白いと思います。

ttp://adultviolin.blog55.fc2.com/blog-entry-94.html
で紹介した実際に白木のヴァイオリンとニスを塗っ
たヴァイオリンを聞き比べた方も、ブログでこう書かれています。「不思議な
ことに、周波数特性がこんなに違うのに、音のキャラクターとしては良く似
ているように聴こえる。」

私自身も実際に白木のヴァイオリンを弾いて、まさに普通のヴァイオリン
そのものの音であることを確認していなければ「白木でもニスを塗った
ヴァイオリンと音のキャラクタが変わらない」ということを信じられなかった
と思います。こちらで誤解されている方がいらっしゃるのは無理はありません。

厚いニスによって手でヴァイオリンの表板を押えたような音になるということも信じにくかもしれませんが、経験者は以下のように書いています。

ttp://www.chaconne.info/03_kanazawa/index_20071219.htm
楽器を叩いてみると塗られたままの箇所と剥がした箇所とでは音程、音質
が全く違ってきます。塗られたままの所は石を叩いているような硬質な音がし、剥がした所は軽やかな響きのある音がします。また、剥がしたニス自体を触ってみてもやはり硬さを感じ、砂のようなじゃりじゃりした感触です。このような作業をしていくと、いかにカバーニスと呼ばれる保護という名目で塗られたニスが楽器の音に悪影響を与えているかをひしひしと感じます。
の書き込みがあったので混乱してしまいました。
[36755]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月28日 15:55
投稿者:catgut(ID:QZGUKQU)
Lさま、ご指摘の点はもっともだと思います。

白木のヴァイオリンが「独特の音色」なら、ニスで「普通のヴァイオリンの音色」に変わるということを認めないわけにはいけませんが、少なくともこのようなことはないということが白木の楽器を弾いて確信できたということを
言いたかったのです。

前述の通り、プロの製作者でさえ「白木の音色」と「ニスを塗った後の音色」を区別できない、ないしは「音質」(音色ではなく)が悪くなっていると判断する人が少なくないわけですから、白木の音色とニスを塗った後の音色(キャラクタ)にほとんど差がないことは確実だと思います。

上記に反論する方はニスの材質や塗り方に特別な発見をした製作者だけが白木にニスを塗ることで音色の違ったヴァイオリンを作れるのだ、と主張するかもしれませんが、私はそのような魔法は存在しないと思います。


一奏者さま、抄録だけでは情報が少ないので小野氏の研究をもう少し調
べてみようと思います。ただ良質の楽器には良質の木を使うことのほうが、ニスで音質調整を行おうとすることより有益であることを示唆しているように思えます。
[36757]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月28日 16:40
投稿者:pochi(ID:OVMFIBc)
>>白木の音色とニスを塗った後の音色(キャラクタ)にほとんど差がないことは確実だと思います。

****塗った当初はあります。
[36758]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月28日 17:27
投稿者:一奏者(ID:OBSCWHQ)
catgutさま

>ただ良質の楽器には良質の木を使うことのほうが、ニスで音質調整を行おうとすることより有益であることを示唆しているように思えます。

論文を読んで私も同じ印象を受けました。

ただもう一歩踏み込んで私が言いたかったのは、最良の木を使ったとしても、ニスを考慮して木の厚さを調整するということは十分あり得るのではないかということです。


たとえば全く逆に最低限の強度にまで木を薄くして、残りを厚塗りのニスで補った場合、楽器の鳴りは悪くなるのでしょうか?
白木の楽器に比べて重量や厚みをあまり変えずにヤング率も向上させられたら、結果として音量が増すのではないかと思います。
もちろん楽器は長持ちしないでしょうから白木の楽器同様に実用的ではありませんが、両者を比較することでニスの影響がよく分かるのではないかと思います。

いかがでしょうか。
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1 / 16 ページ [ 151コメント ]