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20世紀前半の奏法と現在の奏法の違いについて | ヴァイオリン掲示板

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20世紀前半の奏法と現在の奏法の違いについて

投稿日時:2009年09月26日 23:23
投稿者:catgut(ID:QhNBB4k)
20世紀前半の奏法といっても非常に漠然とした話ですが、レオポルド・アウアーやカール・フレッシュの弟子、指導書の影響力が大きかった20世紀前半の奏法と、ジュリアード出身者のソリストが増えた20世紀後半以降のヴァイオリン奏法では傾向の違いがあるように思われます。このスレッドでは、両者にどのような違いがあるか、あるとすればその原因がどこにあるかといった点について議論させて頂きたいと思います。
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【ご参考】
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Re: 20世紀前半の奏法と現在の奏法の違いについて

投稿日時:2009年10月07日 00:14
投稿者:カルボナーレ(ID:J0RRIjk)
catgutさん

>ヘンデルは手が小さいので、あえて小さめの
1699年製ストラディヴァリを使用しているそうです。

これは音量と関係ありませんね。
その理由は、パワーがある楽器の代表格であるグァルネリ デル ジェスの多くは小さめだからです。グァルネリ デル ジェスの展覧会の際の写真集に、それぞれのサイズが載っていますが、ボディー長352mm程度のものも結構混じっており、現在の標準と呼ばれている355mmに達するものは、あまりありません。

そのストラディヴァリが、3/4だったり7/8(レディーサイズ)で、ボディー長350mmをはるかに下回るものであれば、パワー不足の可能性もありますが、実際はどうなのでしょうか。
[41499]

Re: 20世紀前半の奏法と現在の奏法の違いについて

投稿日時:2009年10月10日 23:54
投稿者:新顔の通りすがり(ID:KDcxOUA)
==>カルボナーレさん
catgut氏がご教示くださったインタビューの一部分
--引用開始---
Miss Haendel's violin is a Stradivarius of 1699, which she has been playing for about thirty-five years. Finding a suitable violin had previously been a problem for her as she has unusually tiny hands. 'Most good instruments are built rather heavily; I was very lucky to find this one. It has a very beautiful sound and is a lovely-looking instrument. A lot of people think it is one of the best. It doesn't have an extremely loud sound - but then I never thought that the violin should be like an explosion!'
--引用終了--
拙訳:
ヘンデル嬢のヴァイオリンは1699年製ストラディヴァリウスである。これを彼女は約35年間演奏して来た。これを手に入れる前には、並外れて小さい手が原因で、適したヴァイオリンを見つけることが彼女にとっては難問であった。
「殆どの良い楽器は{どちらかと言うと大柄な作り}=built rather heavilyなのよ。これを見つけられて幸運だったわ。とても美しい音だし愛らしい外観よ。たくさんの人々がこれを最上の楽器のひとつだと考えているわ。極端に大きな音が出はしないけれど、ヴァイオリンという楽器は爆発の類であるべきだとは決して思わないわよ。」

別に『イダ・ヘンデルは音量が最高の価値とは考えていなかった』
とは読めません。
演奏家はストラッドまたはデル・ジェズを持ちたいので彼女も探していたが、出会う良い楽器は彼女には大概大きすぎた。という事実を述べたまでです。

まぁ、当該インタビューをcatgut氏の立場で読んでみると、後段に
--引用開始---
She feels that some female soloists may be less successful because they are trying to produce a masculine sound. 'I am not trying to sound like a man. I am trying to sound as the composer intended the music to sound. A lot of women are so aggressive that they surpass the men and beat the violin black and blue. That's not right. You have to make music, not to pretend to be masculine. Just do justice to the music, think in terms of the composition - not what you are but what the composer is. Composers are able to bring you to tears because they had the heart to do so - they are often so lyrical and so feminine!'
---引用終了---
とあるくだりを重視したのかも知れません。しかしこれとても訳してみると。

拙訳:
彼女は、一部の女流独奏家が男性的な音を作り出そうと試みることで成功を損ねてようだ、と感じている。
「私は男みたいな音を出そうとしてはいません。私が出そうとしている音は、作曲者がその音楽に意図したとおりの音です。沢山の女達が男達を凌ぐほどに攻撃的になり、ヴァイオリンに青黒い痣をこさえるほど打ち付ける弾き方をしている。それは間違っているわ。音楽を作らなくてはならず、男である振りをしてはなりません。音楽に対して正しいことをし、作曲の観点から考えなさい。―――自分が何であるかをでなく、作曲家が何であるかをです。
作曲家たちはあなたを落涙させることだって出来るけれど、それは彼等がそうする心を持っているからなのよ。―――作曲家たちはしばしばとても叙情的で、とても女性的にだってなるのよ!」

イダ・ヘンデルの音量論議ではなく、音楽哲学を知るよすがです。
youtubeでイダヘンのロンド・カプリチオーソ見られますが弓を平行に近くパンパンに張っていますね。
ttp://www.youtube.com/watch?v=mdnqt4yAznk
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Re: 20世紀前半の奏法と現在の奏法の違いについて

投稿日時:2009年10月11日 00:20
投稿者:catgut(ID:EUiWmHM)
イダ・ヘンデルは、「あなたの奏法は今の人とは違いますね」と言われる
のが嫌いで、「私は昔も個性的だったわよ」と言っています。とはいえ、
実演を聴かせて頂いたいまでは、ヘンデルの奏法は現代の圧力を多用
する奏法とは明らかに違うことが分かりました。ヘンデルのように右手の
人差し指と中指をぴったりくっつけていると、指で弓に圧力をかけること
はできず、腕の重みも使うものの、弦の指板寄りを多用して、弓の速度
で音量と音色をコントロールすることになります。駒寄りを圧力でコントロ
ールしようとすると、大きな音量は出るものの、音色のコントロールの
幅がどうしても小さくなります。

ヘンデル流に言うなら、現在の奏法は作曲者の意図に関わらず荒っぽ
い男性的な奏法が幅をきかせているようなものかもしれません。ジャニ
ーヌ・ヤンセンのチャイコフスキーコンチェルトはほとんどロックミュージッ
クに近い感じがします。

大阪音楽大学が所有するサントリーコレクションの名弓のうち、トルテ
の52.5gの弓を松田淳一は最上と評価していますが、この弓自体が優
れているのは当然として、トルテがわずか52.5gの弓を作ったのは奏法
の違いもあったのでしょう。ミルシテインが実際に弓がすっぽ抜けるく
らい基本的に軽く弓を持っていたということやプレーンガットを愛用した
ことを考えると、圧力をあまり使わなかった20世紀前半と、圧力を多用
するようになった20世紀後半以降という分類は全体的な傾向としては
間違いなく存在すると考えられます。
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Re: 20世紀前半の奏法と現在の奏法の違いについて

投稿日時:2009年10月11日 14:18
投稿者:カルボナーレ(ID:J0RRIjk)
>ヘンデルの奏法は現代の圧力を多用する奏法とは明らかに違うことが分かりました。

[41501]
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Re: 20世紀前半の奏法と現在の奏法の違いについて

投稿日時:2009年10月11日 00:20
投稿者:catgut(ID:EUiWmHM)
イダ・ヘンデルは、「あなたの奏法は今の人とは違いますね」と言われる
のが嫌いで、「私は昔も個性的だったわよ」と言っています。とはいえ、
実演を聴かせて頂いたいまでは、ヘンデルの奏法は現代の圧力を多用
する奏法とは明らかに違うことが分かりました。ヘンデルのように右手の
人差し指と中指をぴったりくっつけていると、指で弓に圧力をかけること
はできず、腕の重みも使うものの、弦の指板寄りを多用して、弓の速度
で音量と音色をコントロールすることになります。駒寄りを圧力でコントロ
ールしようとすると、大きな音量は出るものの、音色のコントロールの
幅がどうしても小さくなります。

ヘンデル流に言うなら、現在の奏法は作曲者の意図に関わらず荒っぽ
い男性的な奏法が幅をきかせているようなものかもしれません。ジャニ
ーヌ・ヤンセンのチャイコフスキーコンチェルトはほとんどロックミュージッ
クに近い感じがします。

大阪音楽大学が所有するサントリーコレクションの名弓のうち、トルテ
の52.5gの弓を松田淳一は最上と評価していますが、この弓自体が優
れているのは当然として、トルテがわずか52.5gの弓を作ったのは奏法
の違いもあったのでしょう。ミルシテインが実際に弓がすっぽ抜けるく
らい基本的に軽く弓を持っていたということやプレーンガットを愛用した
ことを考えると、圧力をあまり使わなかった20世紀前半と、圧力を多用
するようになった20世紀後半以降という分類は全体的な傾向としては
間違いなく存在すると考えられます。
のcatgutさんの発言ですが、不思議な内容ですね。これも狭い視野での思い込みの結果なのでしょうか。”現代の圧力を多用する奏法”というのが、今の演奏者はすべての曲に対して一律に使っていると思われているのでしょうか。
単に、引き出し(使える武器)が増え、演奏の幅が広がっているというようになぜとらえられないのでしょうね。これも”1か0か”思考の弊害でしょう。

以前からいろいろな方が述べていますし、私も書いている通り、ヴァイオリン演奏は伝統芸能であり、作曲家のいた時代の音楽の特徴、その作曲家の特徴などは、コレルリ時代から脈々と続いてきているその教育体系の中で常に新しいものが付け加わりながら、師匠から弟子に主に口伝で伝わってきています。今ある著名曲であれば、それぞれの曲にふさわしい演奏方法&解釈というもの常識的に確立していて、正統派の継承者の演奏では、それをベースに自分なりの若干の色づけを加えた演奏が行われます。素人でもある程度ヴァイオリンを弾く人間はその常識を理解し、演奏を変えます。
ヘンデルとモーツァルトとベートーベンとチャイコとショスタコを同じ奏法&表現で弾くプロ演奏家がいたとしたら、それは完全なる異端者であり、音楽的な素養、常識、センスのない愚か者ものとして、普通はすぐに消え去ります。
もし、そのようなことを行う一流演奏家をご存知でしたら、聴いてみたいので、ぜひお知らせください。
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Re: 20世紀前半の奏法と現在の奏法の違いについて

投稿日時:2009年10月11日 19:34
投稿者:カルボナーレ(ID:J0RRIjk)
イダ ヘンデル(1928年生まれ?)の映像を探してみました。

シベリウスのコンチェルト(1981年の映像)
ttp://www.youtube.com/watch?v=0_GqikYOS-4
ttp://www.youtube.com/watch?v=bUWLKmvxDC8&feature=related

CARMEN FANTASY(1981年の映像)
ttp://www.youtube.com/watch?v=DIPACyDwC14
ttp://www.youtube.com/watch?v=ooHkANHBjvU&NR=1

ブラームスのコンチェルト(1986の映像)
ttp://www.youtube.com/watch?v=Y8_gmQNpiUA
ttp://www.youtube.com/watch?v=2O8Mn7ap8WA

バッハのシャコンヌ(1991年の映像)
ttp://www.youtube.com/watch?v=LbbCSH05oN8&NR=1
ttp://www.youtube.com/watch?v=LbbCSH05oN8&NR=1

弓を傾けて弾く奏者であるという点では、どちらかと言えばフランコベルギー寄りの奏法です。ハイフェッツの弓を立てる奏法とはまったく異なります。しかし、指弓はあまり使っておらず、結局はフランコベルギーとロシアのMixの持ち方、奏法ということなのでしょう。
弓を傾けて弾く奏者は普通そうするように、弓の毛はかなり強く張っています。あきらかにハイフェッツの映像などに比べると毛の張りは強く、コンチェルトでは棹と平行になるくらい張っているようにさえ見えます。
圧力のかけかたは、見れば誰が見てもすぐにわかるでしょう。音を聴いてもすぐにわかります(音量ではなく音質から)。
駒寄りか、指板寄りかは、これも見ればわかります。
50代の演奏を聴くと、なるほど20世紀を代表するヴァイオリニストであることがよくわかります。

なお、最近の映像が結構たくさんアップされていますが、最盛期とあまりにもギャップがあり、ご本人の名誉のためにもとくには紹介いたしません。興味があるかたは、YouTube等で検索願います。
[41519]

Re: 20世紀前半の奏法と現在の奏法の違いについて

投稿日時:2009年10月11日 21:12
投稿者:catgut(ID:EUiWmHM)
イダ・ヘンデルの実演は、実際に今回聴かれた方はご存知の通りですが、
かつての録音よりかなり劣る曲と、あまり見劣りがしない曲があります。

完全に暗譜で弾ける、演奏回数の多い小曲はあまり技量が落ちてい
ないのです。これは私自身驚きでした。非常に高いレベルの演奏です。
弓速こそ全体的にはそれほど速くありませんが、ポイントとなる場所で
は大きな弓幅で、速い弓で、高次倍音をたっぷり含んだ緊張感のある
音を出していました。

別に私はガラミアンが「圧力を多用する奏法」の創始者だと言ったつも
りは一度もありませんが、弟子の証言からも「耳元でガリガリ聞こえる」
ような弾き方をガラミアンが推奨したのは明らかです。これは私の知る
限りガラミアンが最初です。Yung Chin氏が「弓毛と弦をしっかりと接触
させるアメリカ奏法」の最もよく知られた指導者の一人としてガラミアン
をあげたのは当然でしょう。
[41520]

Re: 20世紀前半の奏法と現在の奏法の違いについて

投稿日時:2009年10月11日 21:18
投稿者:カルボナーレ(ID:J0RRIjk)
>弟子の証言からも「耳元でガリガリ聞こえる」ような弾き方をガラミアンが推奨したのは明らかです。

これについては2点質問があります。
1.証言の具体的な内容を、出典を明確にした上で、複数お示しください。
2.catgutさんは、ステージ上で弾いているコンサートソリストの音を1~2m以内の場所で聴いたことはありますか。
[41523]

Re: 20世紀前半の奏法と現在の奏法の違いについて

投稿日時:2009年10月11日 22:09
投稿者:カルボナーレ(ID:J0RRIjk)
[41512]
[41512]

Re: 20世紀前半の奏法と現在の奏法の違いについて

投稿日時:2009年10月11日 14:18
投稿者:カルボナーレ(ID:J0RRIjk)
>ヘンデルの奏法は現代の圧力を多用する奏法とは明らかに違うことが分かりました。

[41501]のcatgutさんの発言ですが、不思議な内容ですね。これも狭い視野での思い込みの結果なのでしょうか。”現代の圧力を多用する奏法”というのが、今の演奏者はすべての曲に対して一律に使っていると思われているのでしょうか。
単に、引き出し(使える武器)が増え、演奏の幅が広がっているというようになぜとらえられないのでしょうね。これも”1か0か”思考の弊害でしょう。

以前からいろいろな方が述べていますし、私も書いている通り、ヴァイオリン演奏は伝統芸能であり、作曲家のいた時代の音楽の特徴、その作曲家の特徴などは、コレルリ時代から脈々と続いてきているその教育体系の中で常に新しいものが付け加わりながら、師匠から弟子に主に口伝で伝わってきています。今ある著名曲であれば、それぞれの曲にふさわしい演奏方法&解釈というもの常識的に確立していて、正統派の継承者の演奏では、それをベースに自分なりの若干の色づけを加えた演奏が行われます。素人でもある程度ヴァイオリンを弾く人間はその常識を理解し、演奏を変えます。
ヘンデルとモーツァルトとベートーベンとチャイコとショスタコを同じ奏法&表現で弾くプロ演奏家がいたとしたら、それは完全なる異端者であり、音楽的な素養、常識、センスのない愚か者ものとして、普通はすぐに消え去ります。
もし、そのようなことを行う一流演奏家をご存知でしたら、聴いてみたいので、ぜひお知らせください。
の私の発言は”ヘンデル”違いのピントはずれのものでしたので、一旦お忘れください。申し訳ありません。

さて、イダ ヘンデルの奏法については、映像で見てわかる通りです。ロシア派とフランコベルギーの良いところを合体しており、弓の張りは中庸で弓を立てるハイフェッツとは異なる方法、すなわち、弓を強く張ることと手首を寝かさずにできるだけ立てる事で、効率的に弦に圧力をかけています(手首を立てるという点については、ハイフェッツと共通点はあります。)。
音質的にも、フォルテの箇所では十分な圧力がかかった音がしています。
駒寄りも、映像でわかる通り当然当たり前のように多用しています。求める音を出すためには、駒寄りを使うことは必須ですし、駒寄り、指板寄りという点では、複数の映像を見る限り、現在の奏者含め他のソリストに比べて、特に指板寄りを弾いているということはありません。
[41524]

Re: 20世紀前半の奏法と現在の奏法の違いについて

投稿日時:2009年10月11日 22:15
投稿者:catgut(ID:EUiWmHM)
カルボナーレさま、

「ハイフェッツって・・・」スレッド[41105]
[41105]

Re: ハイフェッツって・・・

投稿日時:2009年09月13日 23:49
投稿者:catgut(ID:NFB3gAA)
新顔の通りすがり さま、 残念ながら問題はそんなに単純ではないのです。ガラミアンと渡辺茂夫とのボーイングを巡る確執が証明しているでしょう。もちろん「ヴァイオリン演奏の指導と原理」は私も一通り目を通しています。

先ほど「天才を育てる」から引用した通り、明らかにガラミアンは「大音量化」を意識しています。

-----
レコーディングが、聴衆の好みに合わせて音量を調節できるようになった
現代では、聴衆は生演奏においても豊かな音量を求めるようになってくる。
一方、ホールはどんどん大きくなり、演奏家にとっては、ホール全体に響きわたる音を出す能力が重要な課題となってきています。ガラミアン先生の
気がかりは、弦楽器がこういう時代に音響上、どのように生き残れるか、
ということでした。
-----

そしてガラミアンの代表的な生徒がズーカーマンです。

ストリング誌1999年5月号にヴァイオリニスト杉浦美知氏のインタビューが
掲載されています。ガラミアンの最晩年に師事されたということです。
杉浦氏によると「ガラミアンの音」は以下の通りです。

-----
ガラミアン奏法の大きな特徴は、やはり音だと思います。駒の側で弾くのですが、しっかりとした、大きい音というよりは、通る音なんです。それは独特な音で、正しくアメリカの音だと思います。側で聞くと音に聞こえないんです。ガリガリガリガリっていう音で。でもホールの一番遠いところに立つと、それがすごく澄んだ音に聞こえるんです。本当に独特の音です。
-----

杉浦氏も指摘している通り、そして大抵の聴衆が気付いている通り一般論として「アメリカ的な音(ガラミアン系の音)」があるのです。ディレイは比較的弟子の個性を尊重したため、ガラミアンほど一面的にボーイングを直した
わけではないようです。「天才を育てる」にも書いてありますが、パールマンは実質的にディレイの弟子です。

杉浦氏は上記に続けて「ハイフェッツもピアニッシモで弾く時は駒寄りでテンションある音を出した」と言われていますが、これは「アメリカの音」とは別の話です。
でガラミアンに師事した杉浦美知
氏のインタビューをすでに紹介しています。

-----
ガラミアン奏法の大きな特徴は、やはり音だと思います。駒の側で
弾くのですが、しっかりとした、大きい音というよりは、通る音なんです。
それは独特な音で、正しくアメリカの音だと思います。側で聞くと音に
聞こえないんです。ガリガリガリガリっていう音で。でもホールの一番
遠いところに立つと、それがすごく澄んだ音に聞こえるんです。本当に
独特の音です。
-----

イダ・ヘンデルの演奏を2,3m程度の位置で聞きましたが、もちろんガリ
ガリといった音は全く聞こえませんでした。これは実演を聞かれたとも
りんさまも同意して頂けると思います。

ハイフェッツの録音もかなりの近接録音が多いですから、ハイフェッツ
が聞いている音と、録音はかなり近いはずです。

電気録音が始まった1930年頃から、1960年頃までがヴァイオリニスト
にとって最も幸せな時期だったのかもしれません。無理に大きな音量
を出す必要がなく、耳元で聞こえる音が最も美しく聞こえるようにすれ
ばよかったのではないでしょうか。音量の不足は録音が補ってくれた
わけです。

実際、ミルシテインはDVD”IN PORTRAIT"の中で、自分が演奏した
シャコンヌについて、カメラが回っているのを知っていて「音量が不足
しているところを補正してくれるよね?」とスタッフに聞いています。
[41526]

Re: 20世紀前半の奏法と現在の奏法の違いについて

投稿日時:2009年10月11日 22:51
投稿者:カルボナーレ(ID:J0RRIjk)
catgutさん
杉浦美知氏の
>それは独特な音で、正しくアメリカの音だと思います。側で聞くと音に聞こえないんです。
というのは、具体的には誰の音のことを言っているのでしょうか。
なおガラミアン自身はソリスト弾きをできる状態ではなく、レッスンの際には、座って、タバコをくわえながら、流し弾きをする程度でした。

上記証言には、ガラミアンが推奨した、言ったという言葉は一つもなく、
>弟子の証言からも「耳元でガリガリ聞こえる」
ような弾き方をガラミアンが推奨したのは明らかです。
という根拠としては、不十分です。
また、「複数の証言を」と書かせていただきましたが、他の証言もよろしく。

また、コンマス席からソリストまでの距離、指揮者からソリストまでの距離、ピアニストにソリストが近づいた時の距離、がかろうじて2mです。あるいはステージ上で音をさらっているときに側に立った時が1~2mです。
2000人近いホールで、ロマン派あるいはそれ以降のコンチェルトを演奏する時、ソリストは普通に凄まじい音を出していますよ。
一方、数百人規模の響きのあるホールで、ピアノ相手にオーソドックスな曲を演奏する場合は、凄まじい音は必要なく、場と音楽にふさわしい音を出します。
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