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ヴィブラートを確認できるフリーソフト | ヴァイオリン掲示板

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ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月10日 09:49
投稿者:catgut(ID:QXJBQTg)
ヴァイオリンのヴィブラートを確認できるフリーソフトがあり
ましたのでご紹介します。wav形式のデータを用意するだけで、
自動的にヴィブラートがどのようにかかっているか分析してく
れます。その名も"tartini" です。
Windows/Mac OSX/Linux用があります。

ttp://miracle.otago.ac.nz/postgrads/tartini/

なお、あまり深いフォルダや日本語のファイル名は認識しない
場合があるようです(Windowsの場合)。この場合はデータをc:
ドライブ直下に1バイト系のファイル名に変更して置くと
認識するようです(下部にファイル読み込み中のプログレス
バーが表示されます)。
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Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月13日 20:54
投稿者:yas(ID:IjIkIQU)
多分、多くのソリストも下にかけることを意識しているのではないでしょうか?人間の手の構造から考えても、その方が楽ですから。しかし機械ではなく生身の人間のこと、本来の音より上に動くこともあるでしょう。ヴィブラートの幅を大きくすればなおさらです。その結果として上下に掛かっている、と考えるのは不自然でしょうか?

それにしても、音を揺らしてもある一つの音程に聞こえる人間の耳はどうなっているのでしょうね?音響学というよりは認知学の範疇に入る研究のような気もします。
[30728]

Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月13日 22:41
投稿者:catgut(ID:QVkIZAI)
yasさま、

まったくご指摘の通りだと思います。少なくとも戦後に教育を受けたヴァイ
オリニストの多くは、「下にかける」という意識でヴィブラート動作を行っ
ていると思います。ところがスペクトラムアナライザで確認するとヴィブ
ラートは基準音の上下にかかっているという事実があります。これが不思議なところです。

参考までにtartini以外で測定した巨匠のヴィブラート測定データもありましたのでご紹介します。千葉工業大学情報科学部情報ネットワーク学科による測定です。グリュミオー、オイストラフ、パールマン、スターンそれぞれが同じ曲を演奏するCDを用意し同じ音にかかったヴィブラートを測定しています。

COMPARISON OF VIOLIN VIBRATOS AMONG FOUR VIRTUOSI
ttp://alt.szk.net.it-chiba.ac.jp/image/ISMA(SuzukiHideo).pdf

測定曲、測定音は以下の通り。
(1) Lalo: cis1 in the 8th bar of the first movement,
Symphonie Espagnole Op.21 (1874).
(2) Mozart: cis3 in the 40th bar of the first movement,
Violin concerto, No.5 K.219 "Turkish" (1775).
(3) Tchaikovsky: b in the 23rd bar and a1 in the 27th bar
of the first movement, Concerto for Violin and Orchestra Op.35 (1878).

(3)のa1音のヴィブラートの幅は以下の通り(最終ページのグラフから読み取り)。
グリュミオー 437Hz-455Hz
オイストラフ 425Hz-455Hz
パールマン 438Hz-455Hz
スターン 440Hz-452Hz
[30739]

Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月14日 23:13
投稿者:catgut(ID:QVkIZAI)
Gotchiさま、

>ところで、みなさんビブラートの掛け始めは当然下方向からですよね

tartiniの表示では有名ヴァイオリニストでも下から上に向けてかけ始めて
いるケースが見られます。

カール・フレッシュは「ヴァイオリン演奏の技法」上巻P42にこう書いています。「(ヴィブラートのために)前膊は更に二つの方法で活動する。即ち、顔の方向に(位置の変更の際のように)あるいは肘関節における軽い回転をもって。」

「顔の方向に」ということなので最初は下から上にかけると考えていたので
はないかと思われます。前述の通りフレッシュは「ヴィブラートは上下に
かける」と考えているので矛盾しません。
[30773]

Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月19日 15:34
投稿者:catgut(ID:EmaUA5E)
カール・フレッシュが「ヴィブラートを基準音の上下にかける」と確信していたことが明らかな記述がありました。

ヴァイオリン演奏の技法(下巻 P227)名曲の解釈と教授法
「ヴィブラートは正しい音高の周りに均等にかけられているか。上の方ないしは下の方に、より多く片寄っているのではないか。そして、恐らくこれが音程の正しくない原因ではないだろうか。」

本書は1928年の改訂版であるため、少なくとも1928年頃まではヴァイオリンの正規教育では「ヴィブラートは基準音の上下にかける」という考えが主流であったと断言できると思います。実際に1920年代までに教育を受けたソリストの大多数はヴィブラートを実際に基準音の上下にかけています。

なぜ1930年代以降に「ヴィブラートを基準音の下にかける」という考え方が
広まったのか不思議です。
[30775]

Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月19日 17:58
投稿者:catgut(ID:EmaUA5E)
私は「ヴィブラートを下にかける」奏法の普及はガラミアンの影響が大きいのではないかと想像します。ガラミアンのように影響力の大きい人が科学的(実際は誤り)・具体的に書いているので、正しいと信じられたのではないでしょうか。

ttp://www.cello.org/Newsletter/marapr05.htm
From Principles of Violin Playing & Teaching by Ivan Galamian (Prentice-Hall 1962)

"It is important that the vibrato always goes to the flatted side of the pitch. The ear catches far more readily the highest pitch sounded, and a vibrato that goes as much above the pitch as below makes the general intonation sound too sharp. The finger should fall in tune on the string. The vibrato should slightly lower the pitch by swinging first backward, and then should re-establish the correct pitch by its forward swing.

「ヴィブラートは基準音より常に低い方にかけることが重要です。人間の耳
 は最も高い音を捉えやすいので、基準音を越えたヴィブラートでは全体的
 な音程が高くなりすぎます。指は正しい旋律上に下ろさなければなりま
せん。ヴィブラートは最初に(手を)後方に揺らしてわずかに音程を下げ、
その後前方に揺らして正しい音程に戻します」
[30778]

Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月19日 21:54
投稿者:チェロ弾き(ID:hZJZR4A)
ヴィブラートについて、とても興味を持っております。

tartiniを早速ダウンロードして立ち上げてみましたが、添付のexsample.wavをオープンしようとすると、「問題が発生したため、tartini.exeを終了します。ご不便をおかけして申し訳ありません。」というエラーが発生し、ソフトが終了してしまいます。何か対策は無いのでしょうか?

OSはWindowsXP(SP2)です。
尚、最初はディスクトップにZIPを展開していたせいか、オープンしても何の変化もありませんでした。で、catgutさんのおっしゃるように、Cの直下に展開したのですが、今度は上のようなエラーが出てしまいました。
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Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月19日 23:38
投稿者:catgut(ID:EmaUA5E)
浪速人さま、

例えば以下はMITメディアラボのメンバによる調査結果です。
"well-known concert violist"がこの調査に協力しているとのことです。
具体的な名前はあえて伏せられているようですが、恐らく日本でもよく
知られている方でしょう。

ttp://www.wellesley.edu/Physics/brown/pubs/vibPerF100P1728-P1735.pdf
Pitch center of stringed instrument vibrato tones

結果は以下の通りです。詳細は論文をお読みください。
The sounds without vibrato were then resampled to give frequencies from -15 to +21 cents with respect to the mean of the sound with vibrato.

先に示したヴィブラート研究に関する調査でも、相反する調査結果を出しているFletcherの論文1件以外には「ヴィブラートの上限の音程が聞こえる」という調査結果はなく、逆にそれを否定する調査結果は戦前から多数あります。
ttp://etd.lib.fsu.edu/theses/available/etd-05082006-134732/unrestricted/RBM_manuscript.pdf

もし、Fletcher以外に「ヴィブラートの上限の音程が聞こえる」という実証的な調査報告が存在するのであれば是非ご教示お願いします。
[30782]

Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月20日 01:05
投稿者:セロ轢きのGosh(ID:ECgVaCg)
 面白そうな論文ですね。 週末にでもゆっくり読んでみよう。

 今(楽器を持たずに)思い出せる限りでは、ビブラートを練習し始めでゆっくり(1~2回/秒くらい)かけていた頃は間違いなく基準音から下に向かっていたと思います。 速度を上げていくと何処かに臨界点があって、最高音ではなく振れの中心の音程を感じるようになる、と言うことでしょうか。
 件のソフトが使えるなら試してみたいものですが、今すぐは無理なので、どなたか試してみて頂けないでしょうか?
[30785]

Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月20日 08:23
投稿者:catgut(ID:EmaUA5E)
浪速人さま、

再度強調しますが、ガラミアン門下のパールマンやディレイ門下のサラ・
チャンらは実際にヴィブラートを基準音の上下にかけています。
ヴィブラートの範囲は深いものでは半音(100セント)近くにもなるため
tartiniで確認すれば明らかです。これは戦後に教育を受けた大半のソリストも同様です。tartiniは拡張子がwav形式のファイル(日本語ファイル名は不可)を読み込ませるだけで自動的にヴィブラート範囲を表示しますのでご自身でご確認ください。

なおtartiniの開発にはディレイらの指導を受けたオタゴ大学のヴァイオリン
教師も参加していることも再度強調しておきます。

ホールで実際に弦楽器を演奏してtartiniを検証している様子
ttp://www.jyphoto.net/dalbum/index.php?folder=/phil-photos/5_-_Tartini_workshop/
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Re: ヴィブラートを確認できるフリーソフト

投稿日時:2006年12月20日 09:22
投稿者:catgut(ID:EmaUA5E)
私が「科学的に誤り」と指摘したのは「人間の耳は最も高い音を捉えやすい」"The ear catches far more readily the highest pitch sounded"という部分です。ヴィブラートについてこの説を支持しているのは私の知る限りガラミアンの著書より後に書かれたFletcherの論文以外存在しません。ところがFletcherはそれ以前に「ヴィブラートの下限を音程として認識する」という矛盾した結果も出しています。つまり「人間の耳がヴィブラート範囲の上限を音程として認識する」という説はアカデミックな世界では認められていないのです。
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