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ヴァイオリンの塗装について その2 | ヴァイオリン掲示板

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楽器・付属品 151 Comments
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ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年02月27日 19:00
投稿者:catgut(ID:FjeUhFc)
前スレッドが長くなりましたので新しいスレッドを作成しました。

私はヴァイオリンの塗装は保存と美観のために存在し、基本的
に音を良くすることはないと考えています。20世紀後半以降の
欧米のアカデミックな文献の大半はこの立場を取り、欧米のプ
ロの製作者は音を良くするという立場と音を良くしないという
立場に分かれているのが現状です。

以下のコメントで私がニスが音を良くすることはないと考える理由
を説明します。
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Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年03月26日 00:46
投稿者:カルボナーレ(ID:KGRRGRY)
以前の質問とかぶるかもしれませんが、まだよくわからないので、catgutさんに質問させていただきます。

catgutさんが必要だと考えられている、”最低限の塗装”の目的は、”楽器の状態保存”なのでしょうか。
これは、はい、か、いいえ のいずれかで答えていただければ結構です。

また、”楽器の状態保存”、という意味がよくわからないのですが、catgutさんが言われる”楽器の状態保存”とは、”できたての白木の状態の音色がベストであるという考えに基づき、その状態をできる限り変化させずに保持すること” を意味するのでしょうか。
[37191]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年03月26日 01:34
投稿者:catgut(ID:OACJhhI)
カルボナーレさま、

もちろん「はい」です。
前に紹介したプロの製作者も書かれている通り、白木の状態で
極力ベストの「音」にして、その状態をできるだけ長く保存するために
「板の振動を妨げない成分のニスを薄めに」塗るわけです。

参考までに「これがヴァイオリンの銘器だ!」音楽之友社には以下の
記述があります。

・ニスの魔力とは、またはニス神話を斬る(p11)

ニスが素晴らしいですね、とはよく言われるのですが、実際には
ほとんどオリジナルのニスがない場合も多いのです。地域の特色
はもちろんニスに出ます。それが銘器の個性を際立たせているの
ですが、ストラディヴァリだけ魔法のニスを使っていたなどというこ
とは、まず考えられません。クレモナの工房ごとにニスの調合は違
うでしょうが、原料に差はないでしょう。師匠、弟子が入り組んで
大量に作っていたので、高級なニスをいちいち選んでいた、とも考
えられないですね。ニスを塗る技術はもちろん関係しますが、ニス
自体にあまりこだわるのはどうでしょうか。クレモナよりヴェネツィア
の方がニスそのものはリッチだったという見方もありますし。
アマティやストラディヴァリは彫りの技術以前、ニス以前に、木を見る
能力があったのですね。ニスそのものにマジックがあったわけではない
のです。
[37193]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年03月26日 08:22
投稿者:カルボナーレ(ID:GHAYZ4E)
catgutさん
まずは、前半の質問への回答ありがとうございます。
前回の質問の後半にも回答をお願いします。その質問が主題であり、その回答の方が重要です。
はい、の場合は、はい だけで結構です。いいえ の場合はご説明ください。質問を転記します。

>また、”楽器の状態保存”、という意味がよくわからないのですが、
>catgutさんが言われる”楽器の状態保存”とは、
>”できたての白木の状態の音色がベストであるという考えに基づき、
>その状態をできる限り変化させずに保持すること” 
>を意味するのでしょうか。
[37198]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年03月26日 23:54
投稿者:catgut(ID:OACJhhI)
カルボナーレさま、もちろん「はい」です。
経年変化で木のヤング率が変わるのは別の話です。

ヒル兄弟は「ニスで音色が変わる」と主張していますが、その根拠は
以下のようなものです。

・ヴィヨームが作ったストラディヴァリとデル・ジェスのコピーは本物同士
 は音色が違うのにコピー同士は音色が似ている。ヴィヨームが同じ
 ニスを使ったからだろう。
・ベルゴンツィはストラディヴァリの弟子だった。このためベルゴンツィ
 の楽器のつくりはストラディヴァリに似ているが、ニスがデル・ジェス
 に似ているので音はデル・ジェスの音に似ている。
(後にヒル兄弟はベルゴンツィはストラディヴァリの弟子でないと見解を変えた)
・J.B.ガダニーニやガリアーノ一族の楽器ははストラディヴァリ
 に似ているがニスが違うので音も違う。
・リュポのストラディヴァリのコピーもニスが違うので音が悪い。
・イギリスのダニエル・パーカーがストラディヴァリのコピーを
 作ったがニスが違うので音が違う。

いまどきコピーモデルなのに音が違うのはニスのせいだと考える
製作者などいるのでしょうか。
[37212]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年03月30日 20:38
投稿者:catgut(ID:OACJhhI)
現在発売中のMOSTRY CLASSIC 5月号で徳永二男氏とヴァイオリン
製作家の佐藤正人氏が「銘器の将来を語る」というテーマで対談され
ています。いきなりニスの話から対談は始まっています。
以下一部引用します。

徳永 
「ストラドの音の秘密はニスにある」という説があるけど、それはどう
なんだろう。当時の製作家は、ニスについての文献をひとつも残し
ていない。ニスは作っていなかったんじゃないかな。

佐藤 
トンボの羽やプロポリスを調合していた(笑い)、なんていろいろ
言われてるけどね。恐らく当時トルコのニス商人が卸していたニス
に、顔料を溶かしたものをそのまま使っていたんだと思いますよ。

また、徳永氏はこんな話もされています。

徳永
「濡らして、乾かして」を繰り返したり、でかい電子レンジで焼いたり
して、わざと古くした木材を使った楽器を弾いたことがあるけど、
本当にオールド楽器みたいないい音がするんだよね、これが。
でも1年もしたら、だめになっちゃった(笑い)。今の製作家は、もっと
健康な音のする楽器を作ることを考えたほうがいいよ。
[37225]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年04月01日 07:32
投稿者:catgut(ID:OACJhhI)
ニスの「音の改善交換」について半信半疑に思われていた方も、それが
いかに誤ったものかこのスレッドでご理解頂けたと思います。

繰り返すまでもありませんが、「ニスが音を良くする」という「神話」が現代
でも命脈を保っているのはヒル兄弟の影響が大であり、そのヒル兄弟の主
張は、

・ヴァイオリンにとって作りや素材よりもニスのほうが重要
ttp://www.cello.org/heaven/hill/six.htm
Hence we are disposed to classify the relative importance of
material, dimensions and construction, and varnish, as follows:
1st, varnish; 2nd, construction and dimensions; 3rd, material.

とか、
・本物のオールドとそのコピー品では形が似ているのに音が
違うのはニスが違うから
ttp://www.cello.org/heaven/hill/seven.htm

といった馬鹿げたものです。他の記述はまともなのにニスに関して
だけはあまりにも馬鹿げているため、

>「ニスの秘密」の神話は一説によるとイギリスのヒル商会が作り上げた
>神話ではなかろうかと云われている!
ttp://godmuses.hp.infoseek.co.jp/hafuna-48-15.html

とまで言われています。
[37235]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年04月02日 20:36
投稿者:父娘でVn始めました(ID:NyVUcZQ)
ご理解頂けた方、おられますか?
はて。不思議ですねえ。
白木最上論の立場においては、誰も理解出来ないことは不思議でしょうがないことでしょう。
[37238]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年04月02日 23:36
投稿者:catgut(ID:OACJhhI)
父娘でVn始めましたさま、

理解できないとは不思議ですね。
佐藤正人氏はストラディヴァリは調合済みで売られているニスを
楽器に塗っていたであろうと指摘されていますが、これをどう思われ
ますか?ニスが音を良くするならそんなはずはないと思いませんか?


ヒル兄弟と並んで、ストラディヴァリのニス研究ではサッコーニが有名
です。しかしすでに紹介した通り、ニスに関しては必ずしも評価
は良くありません。サッコーニ自身が調合したニスの評価がこうです。

石井高著「秀吉が聴いたヴァイオリン」より

クレモナ市にはサッコーニ先生の遺作のヴァイオリンが寄贈され、
それを機会に先生は名誉市民になった。そのヴァイオリンはストラ
ディヴァリのコピーで、私たちは先生の製作技術の足もとにも及ばな
い。しかしながら、サッコーニ先生の作ったヴァイオリンに塗られた
ニスは「これぞ、ストラディヴァリのニスだ!」とはどうしても思えない
のだ。世話になった先生に対して失礼とは思うが、そのニスの色に
は品がないのだ。ストラディヴァリの色とは違うし、ましてやアマティ
の色とはまったく違うものである。三百年後、四百年後には変化し
ていくのかもしれないが、やはり、彼らのニスとは違う。


maestronetの掲示板では、”The Secrets of Stradivari”はサッコーニが
直接書いたものではなくサッコーニが「こうかもしれない」と言ったのは
「こうである」と決め付けて書いているとか、サッコーニはこの本が出た
後もストラディヴァリのニスに関する考え方を変えているとか、サッコーニ
が分析させたニスの材質に誤りがあるとかいった話が出ています。
[37357]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年04月28日 09:31
投稿者:父娘でVn始めました(ID:F1OEVkM)
ストリング誌のT先生の記事を読んで驚愕。
先生、この掲示板、ご覧なのでしょうか。

「ストラディのニスに秘密はない。」
とのご意見そのものは、まあ、そう目新しいものではないでしょうし、比較的広く理解されているようです。
他方、
「白木のバイオリンの音こそ最上である」
との御見解が、ほとんど支持されないのは、何故でしょうね。
白木最上論の御立場からは、到底理解しがたい混乱であると見做されるでしょう。
[37359]

Re: ヴァイオリンの塗装について その2

投稿日時:2008年04月29日 01:36
投稿者:catgut(ID:FjWQJgA)
父娘でVn始めましたさま、
その記事はストリング誌2008年5月号の連載「革命的音楽論」ですね。
ストラディヴァリはニスでは(音の)本質的な変化は何もないと知っていた
という説が紹介されています。

ストラディヴァリは買ってきた調合済みのニスを塗ったのだろうと話されている佐藤正人氏は、多くのストラディヴァリの調整をされている方です。
ttp://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2003/00787/contents/0012.htm

「音が大きい(大きく聞こえる)が音が悪い」「音が小さい(小さく聞こえる)が音が良い」というヴァイオリンは明らかに存在します。しかしこれはニスを
塗ったから音が良くなったわけではありませんね。音が悪いヴァイオリンはいくらニスを塗っても音は悪いままでしょう。
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