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弦を指板に接触させないで弾く奏法 | ヴァイオリン掲示板

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弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月07日 01:57
投稿者:スガラボット(ID:UFGWUJA)
別スレッド「重音3度のイントネーション」で3度の重音を演奏するときの奏法として「指を指板まで押さえない」ように左手指が弦を押さえる力を緩めて弾いてみてはどうでしょう、とコメントさせていただきました。

この発言に対して早速この掲示板で実力者としての誉れ高いpochiさんから「この奏法には疑問を持っている」との発言を頂きました。また、catgutさんからは2002年5月号のストリング誌のインタビュー記事にヴァイオリニスト朝枝信彦氏の「私は指板に弦を付けない」奏法が紹介されていることをお知らせいただきました。catgutさんありがとうございます。私はたまたまこの記事を読んではおりませんでしたが、今回のご紹介を受けて早速バックナンバーを取り寄せて確認させていただきました。朝枝氏の言葉に合わせてこのスレッドのタイトルを「指を…」ではなく「弦を…」に替えさせていただきましたが、これから何度かに渡ってこの「弦を指板に接触させないで弾く」奏法について議論を展開させていただきたいと思います。

まず何はともあれ、この「弦を指板に接触させない」、「指板に弦を付けない」或いは同じことですが「左指で弦を指板まで押さえない」で弾くとどんな音がするのか、以下に述べる方法で皆さんに試していただきたいと思います。

1. 例として、Vn或いはVaでD線の1stポジションで3の指を押さえ、G音をヴィブラートをかけて、フォルテのなるべくたっぷりした良く響く音が出るように弾いてみてください。
2. 次に左指は同じ3の指で、G線のC音と先程弾いたD線のG音を5度の重音を弾く時のように、G線とD線の間の隙間に指を置いて、実際に弾くのは5度の重音ではなく、先程と同じD線のG音だけを短音で、同じようにヴィブラートをかけてたっぷりしたフォルテで弾いてください。 左手の薬指はG線とD線の隙間に置きますが、実際に弾くのはD線だけなのでG線を押さえる意識は持たなくても結構です。この時、指が弦と弦の隙間にある分だけ、先程D線だけを単独で押さえて弾いたときよりD線に接触する部分が指の腹側よりになっていることと思います。この時もD線と接触する指の部分が少し指の腹側になっただけですから、1.の時と同じしっかりしたG音が鳴ったことと思います。
3. 2.の状態から、左指を少しG線側に起こしていくと、指がG線とD線との隙間にだんだん立っていくことにより、指の腹がD線を押さえる力が少しずつ弱くなっていき、遂には薬指の腹だけD線に接触しているものの、D線自体は指板から離れた状態になるポイントがあります。この時も右手のボウイングはフォルテでたっぷりした音を弾いていた状態のままにしてください。ほら左手指に弦の振動を直接感じることが出来ますね?

どうでしょうか。同じように左手の薬指は弦と弦の間を押さえていて、2.は普通にD線を指板に付けた奏法の音、3.はD線が指の腹の部分のみに接触していて指板には接触していない奏法の音となります。 たっぷりしたテヌートの四分音符で4拍づつ、2.と3.の奏法で交互に弾き比べてみてください。 この時2.と3.では楽器から出る音の響きに差があることが実感できたのではないかと思います。

3.の音は明らかに2.の音とはその倍音成分が異なっています。楽器やボウイングがしっかりしていると、3.の音も決してヘナヘナ音やひっくり返った音ではなく、倍音成分がたっぷりした朗々とした音が出ていることがお分かりになりますね。 この3.の音は2.のキチッと弦を指板まで押さえた音に比べて、太く柔らかく遠くまで浸透する音、そして他の楽器の音とより響和し合う(ハモりやすい)音なのです。

楽器の能力や調整が十分でなかったり、右手のボウイングがしっかりしていないと、3.の「弦を指板に接し良くさせない」状態の音が貧弱になってしまうことがあるかも知れません。しかし既にある程度の水準の演奏をされる人なら、弦と弦の間を押さえるという手段をとることによって、しっかり左手指は指板の位置を確保しながら、弦のみは指板と接触させることなく、たっぷりしたフォルテを弾くことが可能なのです。そしてこの弾き方ではより自然で豊かなヴィブラートをかけることが出来ます。 左手指を指板まで押さえることなく中空で踊っているような弾き方だけが「弦を指板に接触させないで弾く」唯一の奏法ではありません。勿論この様に中空で弾くことが音楽的により適している場合もありますが。(以下次回に続く)
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Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月09日 12:55
投稿者:みっち(ID:EROFcCc)
スレ主様

ご自身が最初に「既にある程度の水準の演奏をされる人なら、」とお書きになっているように、この奏法は基本を習得した上級者が自身の裁量で敢えて使うテクニックのひとつなのだと思います。一つのテクニックとして紹介するのは良いと思いますが、あまり広くお勧めするのはどうかなと思います。その点でpochi さんが仰る「ヴィブラートと同じく、奏法のパーソナリティーに属する事」に大賛成です。

それから、[35426]
[35426]

Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月08日 18:23
投稿者:スガラボット(ID:l1cQQwA)
弦を指板に接触させないで弾く奏法(3)

ところで、pochiさんのようなベテランでも「また、弦を指盤に接触させないでその楽器の最大音量を出すことは出来ません。」と言われています。しかしこれこそが「弦を指板に接触させないで弾く」奏法に対する最大の誤解と偏見だと思います。もしそうだとしたら朝枝氏が「--- 普通に弾くときもですか?」の質問に対して「そう。」とお答えになるでしょうか。 このpochiさんの命題は「一点ニ(D)の音を弾くとき『G線をサードポジションの2の指で弾く』と『D線を開放弦で弾く』とき程の音量を出すことは出来ません。」と言う命題と同程度の真実でしかありません。(pochiさん、この発言が失礼だったらお許し下さい。他意はありません)

確かに左手指が指板に接触せずに中空で踊っている奏法ではこれは正しい命題かも知れません。しかし僕が最初の発言で皆さんに試して下さいと書いた方法は、前回のチェロ奏法の説明と同じで、「指先は指板に接触しており、弦には指の腹部分のみが接触してヴィブラートをかけている状態」の筈ですから、『指のポジションは指板でしっかり確保され、「弦は指板には接触していないものの指板で確保された指先と指の皮一枚程の間隙で連結して」いるため、相当安定な状態で弦振動の支点が確保できていることによって、右手の同じボウイングに対して音量の減少はほとんど無い』という状況が実現されていた筈です。

でも音量は同等でも、出てくる「響き」はjackさんの発言のように随分違って聞こえたことと思います。その響きの違いの感じは、同じ音を弾くとき開放弦で弾く音と別の弦を指で押さえて弾く音の違いに似ているような気がしませんか? そうです。この時楽器から出てくる倍音構成の差と同様な差が「弦を指板に接触させない」ときと「弦を指板まで押さえた」ときに現れるのです。響きや音色を言葉で表現するのは難しいですが、仮に開放弦の音を明瞭で「硬い」音と表現するなら、「弦を指板に接触させない」音は深く「柔らかい」音、そして「弦を指板に付けて」弾く音はその中間とは言えないでしょうか。

この「弦を指板に接触させない」で弾くときの響きは、その倍音としてあまり高次の倍音成分が少ないのではないかと推察しています。この事実を確認するため、機会があれば一度FFTなどの科学的な手法で測定して見るべきですね。ある研究によるとシルバートーンを出すオールドの名器が出す響きは、「弾いている基音に対して5~8倍の倍音成分が強いことが特徴である」と聞いたことがあります。一般的に高次の奇数倍音はその次数が高くなるほど基本に対して不響和な性質が強くなり、その成分が多い程音色は硬く感じます。化学的には、弦の振動において駒という支点は変わりませんが、もう一方の支点が開放弦の「上ナット(木)」~「指板(木)と指の腹」~「指の腹(皮と肉)だけ」と変化するにつれて支点としての材質が柔らかくなっていき、弓との摩擦が引きおこす弦の強制振動において「皮と肉」による支点の接触部分がダンパー(制震材)として作用する程度が増すことによって、高次の振動成分が減少するのではないかと思います。

閑話休題。
今、僕はこの「弦を指板に接触させない」奏法で室内楽(SQ)を弾いていますが、この奏法で弾くようになってから、演奏中もあとから録音を聞いた時も、Vaのパートが ①聴こえやすく、②ハモりやすくなってきたような気がします。まあひとり自己満足の要素もあるかも知れませんが、当事者として少し心安らかになってきたことだけは確かで良かったと思っています。この話を信じる・信じないはこれを読んだ貴方のご判断ですが、今まであまり採り上げられなかったトピックスだと思いましたのでここで紹介させて頂きました。ご質問、異論、反論等ございましたら投稿して下さい。出来る範囲でお応えしたいと思います。
4段のように、分からないことを無理に書かなくても良いと思います。分かる人にはボロが見えてしまいますし、分からない人に鵜呑みにされても困りますので。FFTの解析もそう簡単ではありません。「理屈はわからないが雑見が消えて柔らかく深みのある音に聞こえる」などと主観的に書かれたほうが余程好感が持てます。

ちなみに私は指板に触れずに弾くことがあります。意識的に、しかも限られたところだけです。
弦の押え方の基本は「必要以上に強く押えない」だと思います。実際に押える力は弦によって異なるし奏法にも拠ります。指を降ろすスピードもいろいろあります。サラサーテも左手ピチカートの時は強めに押えていたと思います。
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Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月09日 14:08
投稿者:チャングム・けんじ(ID:JAMDEVk)
以前“バイオリンは楽器7割、腕3割の世界”という投稿でベテランの方々から厳しいコメントを頂きましたが、今回もまたそうなるのでは・・・とビクビクしながら投稿しています。

このスレッドを拝見して 
限られた経験則から 楽器に能力が有り、しかも完璧に調整された状態でないと“弦を指板に接触させないで弾く奏法”は難しい と理解しました。そしてこの奏法は特にG線でそれが顕著に現れる と感じています。

ベテランの方々のコメントをお願いします。


楽器の能力や調整が十分でなかったり・・・・・音が貧弱になってしまうことがあるかも知れません。35410] スガラボット氏

名器と云われるものも、触った事やコンサートで使ったこともあります。確かに、オールドの名器は、左手の指を押える力が少なくてすみますね。 [35430]
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Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月09日 00:55
投稿者:pochi(ID:OVMFIBc)
奏法から、
小指の力不足の場合、その楽器の最大音量で「強い音」を出せないから、薬指でアシストします。仮に、弦が浮いていても、「強い音」が出せるのなら、薬指のアシストは必要ありません。

ピアノの話、
レガート奏法の場合、ピアノ弾きは鍵盤を底迄叩いていませんね。速いトリルで底迄叩くなんて、不可能ですね。全部底迄叩けと指導して、後年、決定的な批判(非難)を受けた指導者として、井口夫妻がいます。しかし、ショパンのバラード1番の冒頭では、親指に人差し指のアシストをして、底迄叩きます。この部分で底迄叩かないのは、間違った演奏だと思います。

指盤を見て、
指盤を見れば、どの辺りまで弦が指盤に接触して居るのか、解りますね。私の場合、先程指盤を見てみると、接触して居るのは、解放絃の7度上迄です。もし、全部接触しないで弾くのが正しいのなら、定期的に指盤を削る必要も有りません。指盤が硬い素材である必要もないでしょうね。指盤を黒檀ではなく桐で作れば、全く接触せずに弾く事になるでしょう。

私なりの結論、
「左手指の押え方は、音量・音色と関係する」
「必ずしも弦が指盤に接触する必要はない」
位なら納得です。

名器と云われるものも、触った事やコンサートで使ったこともあります。確かに、オールドの名器は、左手の指を押える力が少なくてすみますね。
pochi氏


Ultimate Late-Starter/チャングム・けんじ
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Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月09日 17:50
投稿者:スガラボット(ID:l1cQQwA)
弦を指板に接触させないで弾く奏法(4)

pochiさんから、「小指の力不足の場合、その楽器の最大音量で「強い音」を出せないから、薬指でアシストします。」とのコメントを頂きました。これはその通りですね。でも次の「仮に、弦が浮いていても、「強い音」が出せるのなら、薬指のアシストは必要ありません。」という表現は、僕の説明をまだ多少誤解されているような気がします。この表現の「仮に、弦が浮いていても…」を「仮に、指が浮いていても…」とすれば、これもその通りだと思います。前回にも書いたように強い音を出すには「指先は指板に付けてポジションをしっかり確保した上で…」弦のみ(指板から皮一枚くらいの近傍で)指板には接触させない」で弾くことによって (弦の振動の節となる指との支点は指板に確保された指先と殆ど同じくらい) 安定した弦の保持を確保するのです。小指が力不足で指板まで押さえられないような状況では音量も確保できないため薬指でアシストしながら弦を浮かせることも出来ます 。

gigaさんのコメントで「弦は押さえるものじゃない・・」という表現はこれも前述のカトー・ハヴァシュ女史の本に「下向きの圧力が指から指板へとかからないように…」という表現で何回か出てきます。この表現の前に、指は後ろにあるスクロールから斜め方向に、横にスライドするような感覚で接触すると説明しています。またこれはハンガリーのロマ(ジプシーバイオリン弾き)の特徴であるとも言っています。ジプシーバイオリンのあのズリ上げるような独特のフィンガリングによるシフト音が昔の巨匠の演奏によく見られるのもこうした繋がりがあるのではないでしょうか。

「弦を指板に接触させない」で弾くと楽器の響き(倍音成分)の響和性が良くなって、深みのある柔らかい音になることは既に述べましたが、実はフレーズを弾く時の音楽的な効果がもう一つあるのです。このテーマの日本における元祖とも言える朝枝氏の記事を少し引用してみます。

「軽く押さえることによって、弦全体が振動するんです。…(その)振動を指先で感じる… …僕は音程をこの指の感覚といっしょにとっていくんです。……太い音というのは、いわばベルカントです。ベルカントの歌手のように朗々と弾く。例えば、弓を返しても音が切れずに、音楽が浪々と鳴る奏法というのはこういうことなんです。つまり、弓を返すときというのは、振り子の運動のように、ちょっと一瞬当然とまりますよね。そのときにキチッと左指を押さえていたら、音もとまってしまうんです。でも、今言ったように、指板にくっつけないようにして押さえれば、それだけ倍音が豊かになるから、音がつながるんです。…」と。

あともう一つ。これは僕の感じなんですけど、バイオリンやビオラを演奏するとき、弾きはじめの音を弓の「プツン」という感覚を感じながら弾くとアーティキュレーションがハッキリして粒立ちの良い演奏になりますよね。でもそのときに発生しがちな「ガリッ」というノイズが嫌なため「プツン」なしで弾く奏者が結構多いのが実情だと思います。こういう奏法では俗に言う子音がハッキリしない演奏になって、パッセージが静寂の中からフェードインするようなとき以外は、表現力が乏しい音楽になってしまいます。ところが「弦を指板に接触させない」で弾くと、音の出だしのときも前の弓の返しのときと同じように、「プツン」を弓と左手指の両方で感じながら「ガリッ」というノイズを発生させることなく演奏できる効果があります。それも右手の弓だけでノイズを発生させないように気遣うよりもずっと簡単に出来るのです。

この様に、これまで奏法的に随分気を遣いながら演奏していた精神的な負担が減って、その分自分が表現したい音楽に集中できるメリットは、「響き」の改善にも増して音楽を活き々々したものに出来るような気がします。

以上「弦を指板に付けない」奏法について色々論じてきましたが、この様に単純で効果の上がるちょっとした技術がレッスンで教えられることはほとんどないようです。確かにこの主張はこれまで刷り込まれてきた皆さん(と先生)の常識に反したものかも知れません。音大で「もっと左指を柔らかく押さえて」とは学んでも「弦を指板に付けないで」と学んだ話は聞いたことがありません。あとチャングム・けんじさんの「楽器に能力が有り、しかも完璧に調整された状態でないと…難しい」という側面があるのも事実です。みっちさんご指摘のように上級者向けテクニックの一つという位置付けが正しいようにも思います。

そういう訳でスレッドを読んだ皆さんの反応は、半数以上が「そんな戯言信じられない~。」、その次が「まあ、そういうこともあるかも知れないけど、適用範囲は限られるよね~。」そしてほんの少数の方が「ひょっとして効果があるなら試してみようかな~。」というあたりでしょうか。pochiさんやみっちさんが言われるように「ヴィブラートと同じく、奏法のパーソナリティーに属する事」と片付けておくのが良さそうだということはよく分かりました。

でもひょっとしてこの技術こそが、失われつつある「決して文字にされることがなかった、巨匠から限られた弟子にのみ口述で伝承される秘伝」だったのかも知れませんよ。朝枝信彦氏の例もそうですよね(笑)。

PS. みっちさんの「[35426]
[35426]

Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月08日 18:23
投稿者:スガラボット(ID:l1cQQwA)
弦を指板に接触させないで弾く奏法(3)

ところで、pochiさんのようなベテランでも「また、弦を指盤に接触させないでその楽器の最大音量を出すことは出来ません。」と言われています。しかしこれこそが「弦を指板に接触させないで弾く」奏法に対する最大の誤解と偏見だと思います。もしそうだとしたら朝枝氏が「--- 普通に弾くときもですか?」の質問に対して「そう。」とお答えになるでしょうか。 このpochiさんの命題は「一点ニ(D)の音を弾くとき『G線をサードポジションの2の指で弾く』と『D線を開放弦で弾く』とき程の音量を出すことは出来ません。」と言う命題と同程度の真実でしかありません。(pochiさん、この発言が失礼だったらお許し下さい。他意はありません)

確かに左手指が指板に接触せずに中空で踊っている奏法ではこれは正しい命題かも知れません。しかし僕が最初の発言で皆さんに試して下さいと書いた方法は、前回のチェロ奏法の説明と同じで、「指先は指板に接触しており、弦には指の腹部分のみが接触してヴィブラートをかけている状態」の筈ですから、『指のポジションは指板でしっかり確保され、「弦は指板には接触していないものの指板で確保された指先と指の皮一枚程の間隙で連結して」いるため、相当安定な状態で弦振動の支点が確保できていることによって、右手の同じボウイングに対して音量の減少はほとんど無い』という状況が実現されていた筈です。

でも音量は同等でも、出てくる「響き」はjackさんの発言のように随分違って聞こえたことと思います。その響きの違いの感じは、同じ音を弾くとき開放弦で弾く音と別の弦を指で押さえて弾く音の違いに似ているような気がしませんか? そうです。この時楽器から出てくる倍音構成の差と同様な差が「弦を指板に接触させない」ときと「弦を指板まで押さえた」ときに現れるのです。響きや音色を言葉で表現するのは難しいですが、仮に開放弦の音を明瞭で「硬い」音と表現するなら、「弦を指板に接触させない」音は深く「柔らかい」音、そして「弦を指板に付けて」弾く音はその中間とは言えないでしょうか。

この「弦を指板に接触させない」で弾くときの響きは、その倍音としてあまり高次の倍音成分が少ないのではないかと推察しています。この事実を確認するため、機会があれば一度FFTなどの科学的な手法で測定して見るべきですね。ある研究によるとシルバートーンを出すオールドの名器が出す響きは、「弾いている基音に対して5~8倍の倍音成分が強いことが特徴である」と聞いたことがあります。一般的に高次の奇数倍音はその次数が高くなるほど基本に対して不響和な性質が強くなり、その成分が多い程音色は硬く感じます。化学的には、弦の振動において駒という支点は変わりませんが、もう一方の支点が開放弦の「上ナット(木)」~「指板(木)と指の腹」~「指の腹(皮と肉)だけ」と変化するにつれて支点としての材質が柔らかくなっていき、弓との摩擦が引きおこす弦の強制振動において「皮と肉」による支点の接触部分がダンパー(制震材)として作用する程度が増すことによって、高次の振動成分が減少するのではないかと思います。

閑話休題。
今、僕はこの「弦を指板に接触させない」奏法で室内楽(SQ)を弾いていますが、この奏法で弾くようになってから、演奏中もあとから録音を聞いた時も、Vaのパートが ①聴こえやすく、②ハモりやすくなってきたような気がします。まあひとり自己満足の要素もあるかも知れませんが、当事者として少し心安らかになってきたことだけは確かで良かったと思っています。この話を信じる・信じないはこれを読んだ貴方のご判断ですが、今まであまり採り上げられなかったトピックスだと思いましたのでここで紹介させて頂きました。ご質問、異論、反論等ございましたら投稿して下さい。出来る範囲でお応えしたいと思います。
4段のように、分からないことを無理に書かなくても良いと思います。」との発言に一言。どの辺に「ボロが見えた」のか判りませんが、僕の本職は電子音響エンジニアでこれまでの30数年の経験を元にこの文章を書いています。オールドの名器は「基音に対して5~8倍の倍音成分が強いことが特徴である」という説は、2005年12月13日に東京オペラシティで開催されたアインシュタイン メモリアル「弦が結ぶ音楽と科学のハーモニー」というフォーラムで「ストラディヴァリウスの秘密」と題したジョセフ・ナジバリ(テキサス農工大学名誉教授)の講演に出席したときに僕が直接聞いた話です。彼はストラディバリの音の秘密を現代に再現させようとしている研究者で、ボラックスという防腐剤が楽器の材料である木材と化学反応したことがクレモナ・オールドの秘密ではないかと言う仮説のもと、ストラドを再現させようとナジバリ・バイオリンを製作している人です。この話は1ヶ月程前NHK/BSのテレビでも放映されました。ボラックスの真偽はさておき、彼がオールド・クレモナで確かめたという倍音の特徴について疑う理由はないと思っています。あと、この掲示板でも良く引用される佐々木明さんが書いておられる程度のFFT解析を行う設備は僕自身が保有しているので、別途機会があればご紹介したいと思います。
[35438]

Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月09日 19:22
投稿者:catgut(ID:IYUjYYQ)
「ヴァイオリン演奏の技法」からフレッシュの表現を引用すると「サラサーテは、大変軽く指を絃にあてたため、指の先で絃を刻むのが全然分からないほどであった。」ということです。(裸)ガット弦がメインで、音量もそれほど要求されなかった時代には、それほど弦を強く押えないことが珍しくなかったのではないかと思います。個人的な印象では弦のテンションだけでなく、楽器によって弦を軽く押えて音になるものとそうでないものがあるように思えます。

また、スチールE線については、大半の人は低いポジションでも実際には弦を指板には接触させていないのではないかと思います。E線を指先で押えた状態から弾きはじめて爪先でE線を指板に押し付けると明らかにE線の音質が変わります。
[35439]

Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月09日 23:07
投稿者:通りすがり(ID:IBIIcHY)
スガラボット様

>フォルテでもしっかりした音を出すため、(弦は指の腹側に当たっていて指板とは接触させないが) 指の先は指板に付け、そこを支点としてヴィブラートをかけると良いとも指摘されています。ただ、この奏法でしっかりしたフォルテが出せることは説明されていますが、その音色についての記述はありませんでした。

興味深い提言ありがとうございます。早速チェロで試してみました。
従来の弦を指板に密着させる方法と、指先を指板にしっかりつけて弦にふれる奏法を比較すると、ご指摘のとおり後者のうほうが音色がやわらかくなりました。弓のほうは同じように弾いて、音量はどちらも同程度出すことができました。
新しい発見がありました。G線で1stポジションのDを出したときのD線の共鳴が異なりました。後者のほうがより強く共鳴していました。
以上ご報告まで。
[35440]

Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月09日 23:40
投稿者:みっち(ID:EROFcCc)
スレ主様

言葉が少々過ぎまして申し訳ありません。ただネットでの発言は様々な立場の方が読んでいるものと思います。音響に携わりかなりのご経験を元にその道のプロとして発言されるのでしたら尚更誤解を与えるような記述は避けるべきだと思います。

例えば、
>この「弦を指板に接触させない」で弾くときの響きは、その倍音としてあまり高次の倍音成分が少ないのではないかと推察・・・中略・・・
>・・・オールドの名器が出す響きは、「弾いている基音に対して5~8倍の倍音成分が強いことが特徴である」・・・略

この二つが、あたかも同じ事象であるような印象を受けます。
この奏法により高次の倍音が少ないと思われることについては測定器をお持ちなら確認も出来るでしょう。ただ「名器が出す響き」との関係を裏付け出来るとお考えですか?

>一般的に高次の奇数倍音はその次数が高くなるほど基本に対して不響和な性質が強くなり、その成分が多い程音色は硬く感じます。

ヴァイオリンの音色が倍音の構成だけで決まるような印象を受けますがそのように理解してよろしいですか?

私が[35434]
[35434]

Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月09日 12:55
投稿者:みっち(ID:EROFcCc)
スレ主様

ご自身が最初に「既にある程度の水準の演奏をされる人なら、」とお書きになっているように、この奏法は基本を習得した上級者が自身の裁量で敢えて使うテクニックのひとつなのだと思います。一つのテクニックとして紹介するのは良いと思いますが、あまり広くお勧めするのはどうかなと思います。その点でpochi さんが仰る「ヴィブラートと同じく、奏法のパーソナリティーに属する事」に大賛成です。

それから、[35426]4段のように、分からないことを無理に書かなくても良いと思います。分かる人にはボロが見えてしまいますし、分からない人に鵜呑みにされても困りますので。FFTの解析もそう簡単ではありません。「理屈はわからないが雑見が消えて柔らかく深みのある音に聞こえる」などと主観的に書かれたほうが余程好感が持てます。

ちなみに私は指板に触れずに弾くことがあります。意識的に、しかも限られたところだけです。
弦の押え方の基本は「必要以上に強く押えない」だと思います。実際に押える力は弦によって異なるし奏法にも拠ります。指を降ろすスピードもいろいろあります。サラサーテも左手ピチカートの時は強めに押えていたと思います。

で「分からないこと」と指摘したかったのはそれ以降の

>化学的には・・・中略・・・、振動成分が減少するのではないかと思います。

の部分でした。
[35444]

Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月10日 11:25
投稿者:スガラボット(ID:QkhEczA)
この話題について提示したかったことは一通りカバーしましたので、あとは皆さまと個別に論議させていただきます。

<catgut>さま、
> スチールE線については、大半の人は低いポジションでも実際には弦を指板には接触させていないのではないかと思います。
そうですね。スティールのE線は細いため、普通に押さえると弦が指に食い込んで、弦は指板からは浮いているのが普通かもしれません。あとこの奏法は昔の裸ガット弦時代には普通のことだったのかも知れませんね。しかし朝枝さんが仰るように「巨匠の昔の伝統だった」この奏法はオドノボゾフやミルシュテインから朝枝信彦に伝承され、現在なおその価値を失ってはおりません。張力が強い現代の楽器で実践するには楽器にもある程度の能力と十分な調整が必要でしょうが、演奏家にとっては表現手法の持ち駒を増やす意味でも会得しておくべき技術ではないでしょうか。

<通りすがり>さま、
早速この奏法をお試し頂いたようで、提唱者として大変嬉しいです。どうもバイオリンではこの奏法による演奏効果は少ないのか、話してもあまり手応えがないことが多いのですが、ビオラやチェロでは効果は大きいと思います。紹介したチェロ奏法の本では、この奏法によって身体の負担が少なくなると言っていますので、良い響きと相まってその分良い音楽が出来るようになればと願っております。

<みっち>さま、
> 分からないことを無理に書かなくても良いと思います。 …「理屈はわからないが雑見が消えて柔らかく深みのある音に聞こえる」などと主観的に書かれたほうが余程好感が持てます。
ご忠告有り難うございます。僕の未熟さ故の欠点出てしまいました。先にも書きましたが、まるきり「分からないこと」でもないため典型的A型の僕はすぐ理屈をこねてしまう癖がなかなか直りませんね。
理屈ついでと言っては何ですが、三つばかり…。
> この…(奏法)で弾くときの響きは…倍音成分が少ないのではないかと推察・・・中略・・・
> …オールドの名器が出す響きは「弾いている基音に対して5~8倍の倍音成分が強いことが特徴である」・・・略
> この二つが、あたかも同じ事象であるような印象を受けます。……ただ「名器が出す響き」との関係を裏付け出来るとお考えですか?
ご指摘のように「同じ事象であるような印象」を与えたとすれば書きすぎでした。ただ「響きとして似たような傾向がある」ことは僕のビオラ弾きとしての経験とエンジニアとしての経験を総合して、正しいことだと思っています。
> ヴァイオリンの音色が倍音の構成だけで決まるような印象を受けますがそのように理解してよろしいですか?
の質問に対して答は"YES"です。より正確には音の波形はその音に含まれる全ての周波数成分の構成で決まります。これを楽器に限定すれば、楽器の音色は基音と基音周波数の整数倍である倍音の構成で決まります。楽器からは基音の倍数以外の周波数成分も出ますが、打楽器など音程を感じさせない場合を除いて、それらは雑音として認識され音色とは異なる要素だと思います。ただし、より広い概念として音色にはヴィブラートなどの時間的変化も含まれると思いますが、ここでの議論にそれは含んでおりません。
> 「分からないこと」と指摘したかったのはそれ以降の「>化学的には・・・中略・・・、振動成分が減少するのではないかと思います。」の部分でした。
度々スミマセン。「化学的には」は「科学的には」の変換ミスです。より正確には「工学的には」と書くべきでした。確かにこれは純粋に振動系に対する工学的な考察なのでこの掲示板に書くべき内容ではありませんでした。もし書くとすれば「弦の振動を支える支点が指板のように硬いものではなく、生身の指という柔らかい材質(?)のため高い周波数の振動成分は吸収される」とでもすべきところでしょう。
[35447]

Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月10日 17:52
投稿者:みっち(ID:g1ZBeJA)
スレ主様(移動用PCからの投稿です)

大変丁寧にお答えいただきありがとうございます。
また、[35434]
[35434]

Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月09日 12:55
投稿者:みっち(ID:EROFcCc)
スレ主様

ご自身が最初に「既にある程度の水準の演奏をされる人なら、」とお書きになっているように、この奏法は基本を習得した上級者が自身の裁量で敢えて使うテクニックのひとつなのだと思います。一つのテクニックとして紹介するのは良いと思いますが、あまり広くお勧めするのはどうかなと思います。その点でpochi さんが仰る「ヴィブラートと同じく、奏法のパーソナリティーに属する事」に大賛成です。

それから、[35426]4段のように、分からないことを無理に書かなくても良いと思います。分かる人にはボロが見えてしまいますし、分からない人に鵜呑みにされても困りますので。FFTの解析もそう簡単ではありません。「理屈はわからないが雑見が消えて柔らかく深みのある音に聞こえる」などと主観的に書かれたほうが余程好感が持てます。

ちなみに私は指板に触れずに弾くことがあります。意識的に、しかも限られたところだけです。
弦の押え方の基本は「必要以上に強く押えない」だと思います。実際に押える力は弦によって異なるし奏法にも拠ります。指を降ろすスピードもいろいろあります。サラサーテも左手ピチカートの時は強めに押えていたと思います。

で失礼な表現を使いましたことをお詫びいたします。
申し訳ありませんでした。
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Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月10日 21:22
投稿者:catgut(ID:IYUjYYQ)
コントラバスですがオイドクサでは以下のように弾くという話があります。

ttp://www4.ocn.ne.jp/~t-344/03bassists/hiro-string.htm
弦は指板に付いている必要はなく若干すき間が開くくらいの方が楽器が響きます.ネックやサドル,渦巻きも振動させる必要がありますがシッカリ握るとこれを止めてしまうんです.指の腹で弦長方向の振動を空中で受け止めてやると音程が作れます.つまりシッカリ押さえなくとも音程はぶら下がりません.


アウアーの「ヴァイオリン奏法」(1921年出版)を見ると「弦に対する指の圧力」というテーマで「指の圧力は広く議論されてきた問題の1つで、その問題に関しては全く正反対のものがある」と書かれています。
私自身は弦を指板まで押えない奏法や、クライスラーの駒寄りを弓を短く使って弾く奏法は試してみる価値があるのではないかと思います。
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Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月11日 15:12
投稿者:catgut(ID:IYUjYYQ)
前記コントラバスのサイトでの考え方が正しいとすれば、

・全体が大きく振動して響くような楽器の場合、弦を強く押えると楽器の振動が妨げられ音に悪影響がある。
・そうでない楽器(分数楽器など)の場合は、強く押えるほうが音がしっかり出る。

という傾向があるのかもしれません。
「良い楽器+肩当なし+弦を軽く押える」が最強ということになります。
ミルシテインなどはこれに該当しそうですね。
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