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皇太子殿下のヴァイオリンは政吉自作 | ヴァイオリン掲示板

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楽器・付属品 39 Comments
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皇太子殿下のヴァイオリンは政吉自作

投稿日時:2013年06月21日 15:02
投稿者:catgut(ID:iJMDRYA)
ttp://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013062102000235.html

 皇太子さまが故高松宮宣仁(のぶひと)親王(一九〇五~八七年)から贈られ、愛用されているバイオリンが「日本のバイオリン王」と呼ばれた鈴木政吉(一八五九~一九四四年)の逸品であることが分かった。

ということで明日目白の学習院で無料のレクチャーコンサートがあるそうです。
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Re: 皇太子殿下のヴァイオリンは政吉自作

投稿日時:2013年07月12日 17:33
投稿者:たく(ID:KJAXQgI)
面白い楽器ですね。びっくりしました。

以下のサイトでは白黒で解りずらいのですが、catgutさんご紹介の写真はかなり鮮明ですね。裏板や横板見ることができれば、色んな発見ができそうです。1887年製となっていますので、政吉28歳の時の作品なのでしょう。

www.suzukiviolin.co.jp/about/story1.html
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Re: 皇太子殿下のヴァイオリンは政吉自作

投稿日時:2013年07月12日 21:16
投稿者:いろんな(ID:IDSEGBY)
人が作ってるよ
ttp://www.manfio.com/index_files/Page304.htm
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Re: 皇太子殿下のヴァイオリンは政吉自作

投稿日時:2013年07月13日 00:31
投稿者:catgut(ID:GRWAJEA)
いろんな さん 情報ありがとうございます。
作者はmaestronetの常連のブラジル在住の方ですね。皇太子殿下のヴィオラと愛子さまのヴァイオリンは石井高さんも作られたと聞いています。


鈴木政吉の息子の鈴木喜久雄が「日本製ヴァイオリン第一号由来」という記事を書いています。この記事には事実と違うと思われる内容も含まれるのですが、以下引用します。

「ヴァイオリンの材質に何の木が使われているのか判らなかった。樹木について
は相当の知識を持っている父は、塗料の塗られていない胴の裏を拡大鏡で調べ、杉材らしいと想像したが、さて、胴の表板と裏板を結びつけている細い一本の棒柱である魂柱がどんな役目をするのか、また、表板の中央に、二本平行して切り抜かれてあるf字孔が単なる飾りであるのかどうか全く見当がつかなかった。

こうした数々の疑問を抱きながら、父は早速、ヴァイオリン作りをはじめた。用材は杉を選んだ。はっきり杉だという自信はなかったが、杉の板目を使い三味線作りの道具を使って一ヶ月近くもかかって仕上げた。」

(政吉はこのとき魂柱を接着してしまっており、また指板と表板が接触するよう
 に作ってしまった)

「父が作ったこのヴァイオリン第一号は今日まで六十七年の間、いまだに音の
出ないまま私の家の家宝として保存されている」ということです。

まだ2台目は橡(とち)の木を使って作ったが「甘利先生のヴァイオリンの音と比べるとひどく音色が悪」かったそうです。3台目以降は木材などいろいろと分かってきてかなり良くなったということです。

大野木論文を見直したところ、鈴木喜久雄が東京で自分の住居でバイオリン製作を行い、その後疎開地として木曽福島を選んだことが木曽福島の工場が独立していくきっかけとなったようです。最初から喜久雄が主体となって木曽福島に工場が作られたわけですね。


たくさん、情報ありがとうございます。
鈴木バイオリンのWebの年表を見ていたら、間違いを見つけました。
ttp://www.suzukiviolin.co.jp/about/library.html

>1936(昭和11年) 戦火が激しくなり岐阜県恵那郡に本社を移転する

とありますが、大野木論文(ソースは鈴木梅雄)によると1945年です。
1936年にはまだ本土に戦火はありませんね。
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Re: 皇太子殿下のヴァイオリンは政吉自作

投稿日時:2013年07月13日 23:54
投稿者:catgut(ID:GRWAJEA)
ちなみに政吉第一号ヴァイオリンについて鈴木鎮一はこう述べています。

-----
今この楽器を手にして眺むれば実に可笑しなところが多い。例えば扁平に近い指盤(ママ)は、ヴァイオリンの表板に密着してしまって居り、六枚の楓材より成るべき胴を廻る横の板(胴とも称す)は長き一枚の板を曲げてヴァイオリンの形となし、用材は全部、栓の木であり、又駒のすぐ右下にあるべき魂柱は、よく探せば遥か上の方指盤の真下に太き八角の棒となりて上下の甲に膠付けとしてある。(略)

第三番目製作のヴァイオリンが今猶お名古屋に保存されているけれども第一番目と比較すれば非常なる進歩をして居り音も最初のヴァイオリンの倍位の音量がある。
(文芸春秋 音楽講座 室内楽 日本ヴァイオリン史 1932年発行)
-----

鈴木喜久雄は使用した木を「杉」と書いていますが、「栓」のほうが正しいように思えます。

木材図鑑 栓
ttp://www.fuchu.or.jp/~kagu/mokuzai/sen.htm


工場製の鈴木ヴァイオリンの評価はいろいろな意味で難しいと思いますが、
明治末期から大正中期までは経営も安定し、良い職人が多かったからか、
個人的にはかなり良いものがあると思います。
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Re: 皇太子殿下のヴァイオリンは政吉自作

投稿日時:2013年07月16日 23:38
投稿者:catgut(ID:GRWAJEA)
鈴木鎮一がドイツで入手したグァルネリについては、徳川義親が以下のように書いていました。

「(グァルネリの)バイオリンは鳴らなかったが、隅がはがれていたので内部の構造が見えた。調べてみると板の厚さが鈴木製バイオリンの二倍もあってひどく重い。それをまねて、寸分違わないバイオリンをつくったが、やはり鳴らない。板の厚さが薄ければすぐに鳴る。鳴るがうすっぺらな音しかでず、遠音がきかない。政吉さんはこの鳴らぬガルネリウスが、どうして鳴るのだろうかと研究をはじめ、
苦心惨憺、十年もたって、ついに見事に鳴るようにした。どうして鳴るのかは絶対秘密で、ぼくも知らない。だがその方法で琴、三味線をつくると、新品でも、何年も使ったと同じ深い音色がでる。」


陳昌鉉「海峡を渡るバイオリン」で木曽鈴木バイオリンがやや厳しく描かれていたので少し調べて見ました。「海峡を渡るバイオリン」には、陳さんが木曽鈴木バイオリンに就職したいと訴えたのに、当社は真面目にバイオリンを作りたい人には向いていないと言われて断られたという話があります。

1966年の雑誌記事には、このように書かれていました。

「その一つの知恵は、農家の余剰労働力を使っていることである。当社の従業員は百三十名で、六十%が女性だ。このあたりは谷間で耕地がない。生活が成り立たないので専業農家はない。そこで農家の長男や主婦、親元から離れない娘などを多く雇用しているわけである。(中略)

木曽谷に、いかに耕地が少なくとも農繁期はある。そのときてきめんに影響をこうむるのは鈴木バイオリン社(引用注:木曽鈴木)である。このときは生産量を下げざるを得なくなるのだ。それに、いかに生産意欲があるとはいえ、農家の主婦や長男に、ギターの技術開発をしろといっても無理だろう。」

確かに本格的なヴァイオリン製作を志す青年には向いていない会社だったようです。
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Re: 皇太子殿下のヴァイオリンは政吉自作

投稿日時:2013年07月24日 09:18
投稿者:catgut(ID:I3EwGWk)
戦前の鈴木のラベルについての考察が以下にありました。マンドリンが対象ですがヴァイオリンも準じているのではないかと思います。

ttp://www5.plala.or.jp/mandolin-cafe/20-masakichi.html
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Re: 皇太子殿下のヴァイオリンは政吉自作

投稿日時:2013年07月24日 09:35
投稿者:catgut(ID:ZJhxhVA)
ソースは明示されていませんが昭和5年にプレス加工機導入と書かれているのが興味深いです。
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Re: 皇太子殿下のヴァイオリンは政吉自作

投稿日時:2013年07月25日 19:46
投稿者:catgut(ID:GEE1CCI)
国会図書館の近代デジタルライブラリーを眺めていたら
素晴らしい資料がありました。

ttp://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/842427

木材の工芸的利用という本ですが、この中に鈴木政吉自身の署名で1910年3月にヴァイオリンの製作についてかなり詳細に書かれた資料があり、ネット上で無料で読むことができます。ヴァイオリン関係はコマ番号では241から248までです。

鈴木政吉の署名によるものは、

ヴァイオリン製造に関する方法成績(名古屋鈴木工場) 鈴木政吉

で、これは名古屋で開催された「第十回関西府県連合共進会出品解説書」ということです。この資料が従来他の書籍で紹介されていなかったのが不思議なくらいです。

この資料の中には興味深い記述がたくさんあります。スクロール製作機械の概要や細かい寸法なども記されています。当時すでに日本でスチールE線が知られていたことも分かります。


なお、ラベルの表記がNIPPONからJAPANに変わったのは、アメリカのマッキンリー関税が原因で、一般には1921年を境にしているということです。

ttp://canada58.exblog.jp/13548224
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Re: 皇太子殿下のヴァイオリンは政吉自作

投稿日時:2013年07月26日 12:52
投稿者:ポッケ(ID:KTkTVjE)
ぼくも、1回、鈴木政吉の楽器を、ひょんなきっかけで借り受けたことがありますが、パリの万国博のラベルが貼ってありました。音は弱く、パワー不足で、使えるかと言われれば返答に困りますが、それなりに歴史は感じました。

で、ぼくのお宝のひとつは、木曽鈴木バイオリンの2分の1の1970年製で、子供用にしては極上です。絶対売りません。こりゃすばらしいです。
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Re: 皇太子殿下のヴァイオリンは政吉自作

投稿日時:2013年07月27日 00:23
投稿者:catgut(ID:NyQgSCE)
「木材の工芸的利用」から一部抜粋します。
前半の解説部分と後半の鈴木政吉署名部分に分かれるのですが、解説部分の筆者もヴァイオリン製作に詳しすぎて鈴木政吉が書いたのではないかと思われる節もあります。鈴木の弓は薬品で曲げていたんですね。

・解説部分

渦巻を付する器械(之は螺旋によりて上下する台上に棹を載せ台が固定しある鉋に対して「エクセントリック」の回転をなす様に仕組みたるものなり)

(表板の)年輪の幅は一斉にして、1.5mm乃至2mmなるを最も可とす。之より狭きときは音粘り広きときは響かず。

f字透は之を付する為表甲と裏甲とに於て半音の差を生ずるにより沈音竿(バスバー)を腹板に附して表裏甲を同一の音調になすなりという。

弓 堅木にして弾力あるを可とす。鈴木工場にては紫檀を用う。
紫檀を反曲せしむるには或る薬品三種を附して型に入れ乾燥室に入れて乾かし次で尚曲の不完全なるものは火力にて矯め各部の弾力の一様を計るなり。弓の要点は弦に触れて各部一様の力あるを要す。若し力異なるときは音色を秀美ならしむる能わず。

・鈴木政吉署名部分

(f字孔)
過大にして其間隔相近きものは極めて粗にして鋭き音を発し其過小にして距離遠きものは極めて鈍くして「ビオラ」に似たる音を発するに至る
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