ニコロ・パガニーニ / Niccolò Paganini | ヴァイオリン演奏家ライブラリ

パガニーニはイタリアの生んだ超人的なヴァイオリニストで、生前から既に伝説的な存在になっていた。彼はほとんど独学でヴァイオリンを学んだといい伝えられている。当時既存のヴァイオリン曲に飽き足らなかった彼は、自分で演奏するための作品を生涯におよそ80ほど残したらしいが、彼の存命中に出版されたのはその中のわずか5作品にすぎず、死後9作品が出版されたが、他は未だに出版されていない。

彼は当時「悪魔に魂を売った男」などという噂がまことしやかに囁やかれるほどに演奏技術に卓越していた。また、弟子を一切とらず、自分の作品の技術を盗まれないよう、自分だけにわかる特殊な方法で譜面を書いたりしていたようだ。

現在でも彼の作品を見れば、半端な腕前でなかったことは容易に想像できる。曲芸とも言えるような、ヴァイオリンの演奏技術の極限を要求する難曲ばかりである。パガニーニは顎当てを用いなかった最後の名演奏家と言われているが、顎当てなしでいったいどうやってあのようなすさまじい曲を弾くのか、ヴァイオリニストにとっては想像すらできないだろう。

パガニーニの曲の難しさは万人の共通認識で、例えば演奏家がデビューCDでパガニーニの曲を選択する場合は、特にテクニックを前面に出したいと解釈される。五嶋みどりのデビューCDもカプリース全曲であった。また、かのハイフェッツはパガニーニの協奏曲だけは録音しなかった。その理由について、「私は難しい曲は録音しない」とコメントしたという。