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ヴァイオリン弦の巻き方について | ヴァイオリン掲示板

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雑談・その他 4 Comments
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ヴァイオリン弦の巻き方について

投稿日時:2008年01月01日 03:05
投稿者:ブルーベリー(ID:MlBRJJg)
正しい(適切な)ヴァイオリン弦の巻き方について、改めて考えてみるためのスレッドです。例えばA線を張り替える場合、次の2種類の方法があります。

①ペグ穴にA線を通す→右側に1周させた後、左側に1周させる。→弦を交差させて右側に持っていき、そのまま右側に巻きつけていく。
②ペグ穴にA線を通す→そのまま右側に巻きつけていく

自分は①の方法で巻いています。①の方法は、弦を一度交差させることによって弦が緩んだり抜けたりするのを防止する効果が期待できます。

一方で、②の巻き方のほうが理想的であるという説(考え方)もあります。ペグに巻きつける弦はなるべく短い方が音の点でも調弦の点でも、よりダイレクトな感覚が得られるので良い、という考え方です。よって②の方法を採用する場合は、弦の先端を2センチ程度カットしてから、弦をペグに巻いていきます。
また、①の弦を交差させる方法は、交差させる際に弦がひねり曲げられるのでコア(芯)に余計な負担がかかるので良く無い、という考え方から②を採用するという人もいるようです。

さて、みなさんは、ヴァイオリン弦を張る際にどのようにしてらっしゃいますでしょうか?
【ご参考】
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Re: ヴァイオリン弦の巻き方について

投稿日時:2008年01月03日 15:32
投稿者:鏡餅(ID:JngICDU)
世界的な鑑定家・弦楽器商のチャールズ・ベア(ビア)によるヴァイオリンのメンテナンス・ビデオでは、①の方法を薦めています。
私もそうですが、私の周りのヴァイオリン奏者は、②の方法で巻いている人が多いです。①の方法は慣れればなんでもないのかも知れませんが、ちょっと手間がかかりますよね。
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Re: ヴァイオリン弦の巻き方について

投稿日時:2008年01月05日 14:40
投稿者:セロ轢きのGosh(ID:GFgECRA)
 仮説が検証されないままに流布されて、何時の間にやら「仮説であること」が忘れられたもの、そういうのを「迷信」と言います。

さて、本題ですが:
 ペグに弦を巻きつけたとき(ナット側から始めて、理想的に・必要最小限の力で巻いた場合)の張力分布を大雑把にモデル化すると
    t = T × exp{-μθ}
ただし
  t  : 張力
  T : 始端部(ナット側)の張力
  μ : 摩擦係数
  θ : 巻きつけ角度(一周巻けば2π)
になると思います。
 摩擦係数のデータは手許にありませんが、一寸控えめに0.5と仮定すると、
  一周巻いたところで t = 0.043 T
  二周         t = 0.002 T
  三周         t = 0.0001 T。

 バイオリン弦の張力(T)は高々数kgfですから、ペグに三周巻きつけた端を押さえる力は1グラム(概ね1円玉一個分)もないです。 弦の端をペグの穴に一寸引っ掛けておけば事足りる程度ですね。 普通はペグの穴の側から始めて、多少なりとも手で張っぱりながら巻いていくでしょうから、実際はもう少し強い張力がかかっていると思いますが、それでも、10kgと比べたらまるでオーダーが違うでしょう。 ですから、交差部が痛むというのは杞憂でしょう。

 ということで、①か②で悩む意味はあまり無いと思われます。 まぁ、害がないと判ったなら、気休めに交差させておくのも悪くはないですね。(小生は「面倒だから」やってませんが)

やっつけ計算なのでミスがあるかも知れません。どなたか検算してみてください。(というか、この程度は先刻ご承知の方も多いのでは? 弦メーカーの技術の方なんか、笑いを噛み殺しながら見ているかも)


> ペグに巻きつける弦はなるべく短い方が・・・・ダイレクトな感覚が・・・
これは理解不可能です。 上記のように、三周程度巻けばあとはいくら増やしても本質的(工学的)には変わらないと思えるのですが、プロや上級者は気にするのでしょうか。 「ダイレクトな感覚が得られる」ことの理論的な根拠、あるいは(比べたら確かに違う、という)経験的な根拠をお持ちの方はいらっしゃいますか?
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Re: ヴァイオリン弦の巻き方について

投稿日時:2008年01月05日 17:23
投稿者:ブルーベリー(ID:MlBRJJg)
鏡餅様、セロ轢きのGosh様、お返事ありがとうございます。
鏡餅様がおっしゃっているチャールズ・ビアさんのビデオは私も持っています。そう言えば、たしかにビアさんは実演しながら交差させる弦の巻き方を推奨されてましたね。
セロ轢きのGosh様の理論的な(理系的な)説明は、とても勉強になりました。
>ペグに三周巻きつけた端を押さえる力は1グラム(概ね1円玉一個分)もないです。 
この理論からすると、弦が緩んだり抜けたりするのを防止するために、弦の巻き始めに1回交差させるという方法はあまり意味が無い、ということになりますね。

ちなみに自分は①の交差させる方法で、裸のガット弦(TORO社の最高級シープガット弦)を巻いてますが、今度②の方法で巻いて違いを確かめてみようと思います。

>ペグに巻きつける弦はなるべく短い方が音の点でも調弦の点でも、よりダイレクトな感覚が得られるので良い、
という考え方は、以前ある弦楽器店のサイトに書いてあったのを見たことがあります。断定的な書き方だったので強く印象に残っています。理論的に正しいのかどうかはわかりません。
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Re: ヴァイオリン弦の巻き方について

投稿日時:2008年01月08日 22:16
投稿者:ブルーベリー(ID:MlBRJJg)
その後、ヴァイオリンに詳しい知人から、ヴァイオリン弦の巻き方の「模範例」として下記の画像を示されました。
ttp://www.sarasate.net/schade/schade05.html
弦をペグボックスの内壁に向かって巻くようにするものの、弦が内壁には触れず、内壁と弦が1mm程度離れているようにするのがベストとのことです。こういう巻き方をすると弦の力がペグを押し込む方向に働くので、非常に乾燥した場所にヴァイオリンを持っていったときに起こりがちな「急なペグの緩み」を予防する効果があるとのことです。(E・G線ではペグボックスの形状上できませんが)この画像のようにA・D線が逆八の字に見えるような弦の巻き方をすると、特に冬の乾燥期に生じがちなペグの緩みを防止する効果が期待できるようです。
弦の巻き始めに弦を交差させるかどうかは好みの問題なのでどちらでも良いとのことです。交差させる方法だと弦の巻き始めの弦の緩みが防止されるが、3~4回ペグに巻きつけたらどちらにしても弦が緩んでくることは無いので、弦を交差させるのは気休め程度の効果とのことです。セロ轢きのGosh様が説明してくださった理論と同じですね。

余談ですが、それにしてもこのヨアヒム・シャーデのヴァイオリンは素晴らしいですね。シャーデというとストラドコピイストというイメージが強いですが、デルジェスのコピーもあるんですね。
ttp://www.sarasate.net/schade/index2.html
材料、つくり、ニスどれをとっても第一級の現代の名器だと思います。