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ヴァイオリンの音の仕組みについて | ヴァイオリン掲示板

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楽器・付属品 120 Comments
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ヴァイオリンの音の仕組みについて

投稿日時:2007年06月10日 00:56
投稿者:catgut(ID:KVYiWHM)
ヴァイオリンの音について、イメージ的にはなんとなく理解できるけれど、
よく分からないものがあります。それらについて仕組みを強引に考察してみました。補足や疑問がありましたらコメントをお願いします。

・こもった音
一般に「こもった音」とは高周波成分が少ない音です。ステレオのイコライザーなどで高音を出なくすると「こもった音」になります。
ヴァイオリンで「こもった音」にする簡単な方法は魂柱をきつく立てることです。こうすると表板が振動しにくくなり、高音が出ずに「こもった音」になります。通販品や安価な楽器は魂柱が倒れないようにきつく立ててあるため、「こもった音」になりがちです。表板が厚いプレス製造の楽器などでも同様の傾向があります。

・新作の音とモダン・オールドの音の違い
新作の多くは「硬い音」と言われ、モダン・オールド楽器の多くは「柔らかい音」と言われます。一般に「硬い音」とは高周波成分が多い音です。経年変化により木の性質が変わります。
実測結果によると、確かに新作では高周波成分が多く、オールド楽器では一定レベル以上の高周波成分は急激に減少する傾向があるそうです。オールド楽器のフォルマントは人間の声によく似ているそうです(もともと人間の声に似た楽器が尊重されて残ったのかもしれませんが)。

仕組みは私にはよく分かりませんが、新しい表板は高周波振動をしやすく、古い表板はよりまったりと振動するようです。

・枯れた音、鼻声、シルバートーン
モダン・オールド楽器の音を形容するのに「枯れた音」「鼻声」「シルバートーン」といった言葉がよく使われます。「枯れた音」とは木の経年変化によりレスポンスが早く、粒立ちの良いはっきりした音の意味で使われることが多いようです。「鼻声」は説明不要と思いますが、結果的により人間くさい音になるとも考えられます。特定の周波数の出方が強いか、「うなり」のような特殊な振動があるのかもしれません。「シルバートーン」はもっとも良く分かりませんが、やはり「うなり」のような振動に関係するような気がします。

新作楽器でも、使用する木材を選んだり削り方などの工夫でモダン・オールド楽器にある程度近い音が出せるようです。
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Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて

投稿日時:2007年07月26日 23:34
投稿者:catgut(ID:F0NIVYA)
失礼しました。セルロースの結晶化が正しいです。

以前、経年変化による「セルロースの結晶化」が学術的に正しいか
念のため確認したことがあります。
道立林業試験場の渡辺啓吾氏が「スプルースと弦楽器」という記事を
書かれていたので読んでみました。以下のように書かれています。
「セルロースの結晶化により材質が硬くなる」ことは木材の専門家
も認めていました。

ーーーーー
私が木材の老化の研究をしていたころ、私の研究室で50年、100年、
200年のヒノキの人工古材をつくり(木材の老化現象は、熱処理によって
再現し得る)、それを使って前記の名人(引用者注:ヒノキのバイオリンを
作ったさる著名な製作者)がバイオリンを製作するテストをしてみたことがある。

そのとき名人の話によると、老化200年のものが一番音が良かったとの
ことであった。そしてトウヒ(スプルース)の音色にもっとも近かったそうで
ある。なるほどヒノキはトウヒよりも弾性係数が小さいが、老化によって
増大するので、音色が硬くなってトウヒに近づくことは理屈に合っている。一般にバイオリンが古くなると音が冴えてくるといわれているが、その原
因は老化によってセルローズの結晶化がすすむので、材質が硬くなると
いうことから説明できる。しかしそれは200年くらいまでの話で、その峠を
越すとだんだん悪くなっていくはずである。
(北方林業、1975/4)
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Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて

投稿日時:2007年07月27日 01:45
投稿者:catgut(ID:F0NIVYA)
ヴィヨームが行ったような木材の「熱処理」は短期的には効果があるようですね。そういえばナジバリーヴァイオリンも化学処理だけではなく熱も加えていたと思います。

ttp://www.nagyvaryviolins.com/
ナジバリーヴァイオリンとストラディヴァリウスの聞き比べができます。

また、経年変化で「セルロースの結晶化」が進み過ぎると硬くなりすぎて
かえって音が悪くなるという指摘は興味深いです。古ければ古いほどいい
というものでもないようです。
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Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて

投稿日時:2007年07月27日 18:46
投稿者:父娘でVn始めました(ID:NIAnl3c)
>ところで、結晶化って具体的にはどうなるんでしょうか(Web検索したけど、見つかりませんでした)。

どうなるんでしょう。私も関心があります。
ちなみに下記のリンクに文献が掲載されていました。
ttp://www.sasakivn.com/werkstatt/report/holzchemi.htm
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Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて

投稿日時:2007年07月27日 20:36
投稿者:catgut(ID:F0NIVYA)
「セルロースの結晶化」について渡辺啓吾氏の記事から紹介した部分の
著者である小原二郎氏(農学博士)による解説が以下に掲載されていました。

9.木の強さの経年変化
ttp://www.wood.co.jp/kohara/nihonjintokinobunka/6-9.htm
10.枯らしの効果
ttp://www.wood.co.jp/kohara/nihonjintokinobunka/6-10.htm
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Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて

投稿日時:2007年07月27日 23:01
投稿者:catgut(ID:F0NIVYA)
小原二郎氏によるヒノキのバイオリンの話。
著名な製作者とは峯沢峯三氏ということです。
勘違いしていましたが、古くなりすぎると硬くなりすぎるのではなく、
再び柔らかくなってしまうのですね。図があります。
アマティなどの大半は古くなり過ぎてしまったのでしょうか。

ttp://uwamuki.com/kinobunka/j/tokushu/kohara/2nd/index.html
[34384]

Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて

投稿日時:2007年08月05日 03:23
投稿者:catgut(ID:VUc4F1A)
日経サイエンス「楽器の科学」に収録されているハッチンスの著名な論文
「バイオリンの音響学」を読みました。なるほどヴァイオリン製作者には具体的に参考になる情報が多く含まれています。

「表板のモード2番の振動数が、裏板のそれに近く、両者の差が振動数の1.4%(バイオリンやビオラの板に対して約5ヘルツ)以内なら、滑らかで演奏しやすい性質が出る」などという話があり、振動数を変えるための具体的な板の削り方などもかかれていました。

ただ、クラドニ法で少し気になるのは、魂柱とバスバーなしで表板と裏板の振動を測定していることです。鈴木鎮一は魂柱位置を境として表板の上部と下部で別の振動をしているという仮説を立てています。魂柱位置を境に、表板の上部と下部に別のスピーカーがあるというイメージです。だからこそ魂柱位置は重要というわけです。魂柱位置と圧力で表板の振動が大きく変わってしまうのは明らかですが、せめて標準的な位置・標準的な圧力で魂柱相当の圧力をかけた状態でクラドニ法で測定してみると、新しい発見があるのではないでしょうか(すでにやっている人がいるかもしれませんが)。
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Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて

投稿日時:2007年08月05日 03:24
投稿者:catgut(ID:VUc4F1A)
経験上「ツボが広い楽器」と「ツボが狭い楽器」があると思います。

「一定の範囲で弦を押えれば中心から少し外れても他の弦がそれなり
に共鳴する楽器」と「ごく狭い点を押えないと他の弦が共鳴しない
楽器」の違いではないかと思います。この現象が純粋に楽器の振動特性
によるのか、弦のテンションの影響が強いのかは分かりませんが、楽器
自体の振動特性も関係しているように思われます。

もしそうだとすると、どちらが良い楽器かは考え方次第だと思います。
・学習用には正確なポイントを押える練習のためツボの狭い楽器が良い
・個人で趣味で弾く人は少し外してもそれなりに共鳴するツボが広い楽器が良い
など。
[34386]

Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて

投稿日時:2007年08月05日 05:28
投稿者:pochi(ID:SBdYcmA)
>「ツボが広い楽器」と「ツボが狭い楽器」

音によって、ツボの広さは違うはずです。解放絃に対してオクターブの音は、ツボが狭いはずです。長短3度は、広めの筈です。

ツボがしっかりしている楽器とツボがしっかりしていない楽器があると思います。
音程の悪い人が永らく弾いていた楽器は、ツボがしっかりしていないような気がします。
その様な人の楽器でも、一週間ほど弾き込めば、ツボがしっかりして来るように思います。
サイレントヴァイオリンには、ツボがありませんね。

仮に、ツボが狭すぎると、音程の幅を使えないので、移調が出来なくなってしまいます。
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Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて

投稿日時:2007年08月05日 22:31
投稿者:父娘でVn始めました(ID:NIAnl3c)
長短三度の壷が狭いと、それはそれは弾き難いのでしょうね。わが家では篠崎1の中ほど、E線の練習に入りました。下手くそながら壷のお話を日々の稽古で実感しております。

ピアノは今日調律調整。ハンマーの動きも微修正してもらってご機嫌です。今日は代理の調律師さんだったので(この人もベテランで腕はよい)、音造りの個人差がはっきり分かってなかなかです。ちょっとかっちりした音程というか。華やかさよりも楷書的ないい感じの硬さが出た感じに仕上がりました。441プラスちょい、という感じかな。
[34600]

Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて

投稿日時:2007年08月25日 06:48
投稿者:catgut(ID:iINSAUA)
ストラディヴァリ研究書はヒル兄弟の
Antonio Stradivari His Life and Work (1644-1737)
が空前絶後だと思いますがいわゆる「ロング・ストラド」は音が出し
にくい(less ease of production)けれど豊かで深みがありパワーに余裕
があると書かれていました。
ttp://www.cello.org/heaven/hill/five.htm

He commenced the production of the "Long Strad," a type of violin
remarkably individual in tone and design, though both are reminiscent
of Brescian principles. There is the fuller, deeper quality, and greater
reserve of power, less ease of production, and, owing to the longer
stop, an increased difficulty for the performer.

原書がここからオンラインで読めます。
ttp://www.cello.org/heaven/hill/

ただ、よく言われる通り本書での「オイルニス」に対する過大評価は目に余るものがあります。ヒルによると、ヴァイオリンは以下の順で大事なのだそうです。

ttp://www.cello.org/heaven/hill/six.htm
Hence we are disposed to classify the relative importance of material, dimensions
and construction, and varnish, as follows:
1st, varnish;
2nd, construction and dimensions;
3rd, material.

ニス以外についての記述が信憑性が高いだけに、ニスが作り方、寸法や材質(木)よりも大事だと信じた人が多くいたのでしょう。ヒルが本気で書いたのか、商売上の都合なのか分かりませんがヒルも罪なことを
したものです。
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